合同会社の資本金には特に制限がありませんが、円滑な事業運営のためにはある程度の資本金を用意することが大切です。しかし「実際のところ資本金っていくら必要なの?」「資本金の決め方がわからない」とお悩みの人も多いでしょう。今回は合同会社の資本金の平均額や資本金の決め方、資本金を設定する上で押さえるべき注意点について解説します。
目次
合同会社の資本金はいくらがいい?平均額と相場を知る
はじめに合同会社の資本金の平均額や、資本金の最低額について解説します。
合同会社の資本金の平均はどれくらい?
法務省の登記統計によると、2024年9月時点における合同会社の設立件数と資本金額はそれぞれ以下の通りです。
- 設立件数:3,047件
- 資本金総額:47億8,590万円
単純計算では、資本金の平均額は以下のようになります。
47億8,590万円 ÷ 3,047件 ≒ 157万円 |
また、資本金階級別の合同会社の設立件数は以下の通りです。
資本金階級
合同会社の設立件数
割合
100万円未満
1,494件
約49%
100万円以上300万円未満
880件
約28.8%
300万円以上500万円未満
243件
約7.9%
500万円以上1,000万円未満
405件
約13.2%
1,000万円以上2,000万円未満
20件
約0.6%
2,000万円以上5,000万円未満
4件
約0.01%
5,000万円以上1億円未満
1件
約0.01%
1億円以上
0件
0%
合計
3,047件
-
上記のデータから、資本金100万円未満の合同会社は全体の約半分を占めることがわかります。資本金300万円未満まで範囲を広げると約80%となります。
なお、株式会社の設立件数と資本金額は以下の通りです。(2024年9月時点)
- 設立件数:6,754件
- 資本金総額:280億6,731万円
株式会社の場合の資本金の平均額は 約415.5万円となっています。
この結果から見ると、株式会社に比べて合同会社の資本金は低めだとわかります。
最低金額1円でも問題ないのか?
現行の法律では資本金の額について特に定めはありません。そのため理論上は資本金1円でも会社の設立は可能です。
ただし、資本金を最低金額1円にするのは現実的とはいえません。理由として以下の2つが挙げられます。
- 資本金は開業資金や当面の運転資金になるため
- 資本金が極端に低いと社会的信用を得にくくなるため
会社設立時の資本金が持つ意味については以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:会社設立の資本金はいくら必要?払込方法や最低金額などを詳しくご紹介
資本金の決め方と考慮すべきポイント
前述のように、資本金を1円に設定するのは現実的とはいえません。極端に低い金額では後に悪影響を及ぼす恐れが大きいためです。
とはいえ、高額であれば良いわけでもなく、適正額に設定することが大切です。合同会社設立時の資本金の決め方と考慮するべきポイントを紹介します。
開業費用と運転資金を基に金額を算出する
資本金を決める上で考慮するべきポイントの1つが開業費用と運転資金です。会社設立時および設立直後は収入がないため、開業資金や当面の運転資金は資本金から支出することになります。
開業にかかる費用の例は以下の通りです。
- 会社設立にかかる法定費用
- 物件の初期費用
- 器具備品などの購入費
合同会社の設立にかかる費用については以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:会社設立の費用はどれくらい?かかる主な費用や株式会社・合同会社との違いなどを解説
運転資金は事業活動をする上で継続的に発生する支出です。仕入代や人件費、水道光熱費などさまざまな費用が該当します。
運転資金は3ヵ月〜6ヵ月分を確保しておくのが目安といわれています。1ヵ月あたりの運転資金の予想額を計算した上で、余裕を持って資本金を用意するのが安心です。
税金面への影響を考慮する
「資本金が高額であれば良いわけでもない」と紹介しました。その理由は、税金の中には資本金を基準に金額が決まるものがあり、資本金額によっては税金が増えてしまう恐れがあるためです。
資本金の額が影響を与える税金を3つ紹介します。
登録免許税
登録免許税は法務局への登記申請時に課される税金です。会社設立時にも登録免許税の納付義務があります。
合同会社の設立時にかかる登録免許税の額は、以下のうちいずれか低い方です。
- 6万円
- 資本金額の1,000分の7
すなわち、登録免許税の最低額は6万円となります。登録免許税を最低額に抑えるためには、資本金額の1,000分の7か6万円を超えないように設定する必要があります。
消費税
事業年度開始の日の資本金が1,000万円未満の場合は消費税が免除されます。
法人における基準期間は前々事業年度です。設立1期目・2期目は前々事業年度が存在しないため、原則として消費税の免税事業者になります。
ただし最初に紹介したように、事業年度開始の日の資本金が1,000万円以上の場合は消費税の免除を受けられません。会社設立による消費税の免除を受けるためには、設立時の資本金を1,000万円未満にする必要があります。
関連記事:会社設立で消費税が免除になる?2年間の免除を受ける条件やメリット・デメリットについて解説
法人税
法人税の税率は原則として23.2%です。しかし資本金1億円以下の法人には軽減税率が適用され、年800万円以下の所得部分に適用される税率は15%となります。
また、資本金1億円以下の法人は中小企業者等として、法人税に関するさまざまな優遇措置を受けられます。合同会社で資本金1億円を超えるケースは非常に稀ですが、知識として押さえておくと良いでしょう。
許認可が必要な事業の場合は資本金要件を確認する
設立した会社で許認可が必要な事業を営む場合は、資本金要件について確認しましょう。資本金要件が定められている許認可として以下の例が挙げられます。
- 一般建設業:500万円以上
- 特定建設業:2,000万円以上
- 有料職業紹介:500万円以上(×事業所数)
- 人材派遣業:2,000万円以上(×事業所数)
- 貨物利用運送事業:300万円以上
資本金の額が基準に満たない場合、許認可の申請が却下されてしまいます。増資の必要性が生じて手間がかかるため、設立時の段階で資本金要件を満たす金額を設定しましょう。
融資を検討している場合はある程度の自己資金を用意する
創業時に融資の利用を検討している場合は、ある程度の自己資金を用意しておくのが理想です。自己資金の額が少ないと自己資金が多い場合に比べて、審査に通過しにくい・融資額が低くなる等のリスクがあります。
自己資金なしで融資に申し込むデメリットについては以下の記事で解説しています。
関連記事:自己資金なしでも創業融資を受けることは可能?自己資金なしで起業・創業を成功させるポイントを解説!
なお、資本金と自己資金は別物です。融資の審査においては、お金の出所が証明でき、返済義務がないことが明確な資金のみが自己資金として認められます。
資本金と自己資金の違いは以下の記事をご覧ください。
関連記事:自己資金と資本金の違いとは?自己資金の範囲はどこまで?
合同会社の資本金に関するよくある質問
最後に、合同会社の資本金に関するよくある質問3つを紹介します。
資本金について定款への記載は必要?
資本金に関する事項は定款の絶対的記載事項の1つです。そのため、資本金について定款への記載は必須といえます。
合同会社の場合は以下の事項を記載する必要があります。
- 社員の出資目的
- 出資した形態(現物出資の場合は財産の種類)
- 金額(現物出資の場合は財産価格や評価基準額)
資本金を増やしたい場合はどうすれば良い?
会社設立後に資本金を増やすことも可能です。合同会社が資本金を増やす方法として以下の2つが挙げられます。
- 既存の社員が新たに出資する
- 既存社員以外が出資をする
合同会社では出資者は原則として社員に追加されるため、2.の場合は増資と同時に社員が増えることになります。
なお資本金は登記事項のため、増資によって資本金の額が変わった場合は変更登記が必要です。2.のパターンにより社員が増えた場合は、社員の変更についても登記をする必要があります。
合同会社の増資に際して必要な書類は以下の記事で解説しています。
関連記事:合同会社の資本金の適正金額はいくら?設定の目安とルール
資本金と別に資本準備金の計上はできる?
合同会社には資本準備金が存在しません。そのため、資本金と別に資本準備金を計上することは不可能です。
資本準備金とは、株主による出資金のうち資本金に計上しなかったお金のことです。主に赤字の補てん目的で確保されるもので、資本金の2分の1を超えない額が上限となります。
持分会社である合同会社には株主による出資という概念が存在しないため、資本準備金もありません。出資金はすべて資本金に計上することになります。
合同会社の資本金に関するまとめ
合同会社の資本金の平均は約157万円ですが、そのうち約半数は100万円未満で、300万円未満の会社が80%近くとなります。
資本金の額には特に制限がないため、理論上は資本金1円でも会社設立が可能です。しかし、開業資金や運転資金の確保・社会的信用の得やすさ等を考えると、ある程度の資本金を用意するのが理想といえます。
資本金の適正額は会社によって異なるため一概にはこれが正解とはいえません。会社設立の際は、開業資金や運転資金、税金面への影響、許認可の要件などを考慮して自社に適した額を決めましょう。