0120-469-383平日 9:00~18:00 税理士に相談(相談無料)
会社設立の基礎知識

法人の廃業の不備は無申告になる?正しい手続き手順や確定申告について

公開日:

最終更新日:

法人の廃業の不備は無申告になる?正しい手続き手順や確定申告について

経済不況や少子高齢化による後継者不足で、法人の廃業を考える方も少なくありません。しかし、適切な手続きを踏まないと無申告となり、廃業しているにもかかわらずペナルティが課されるリスクが生じます。この記事では、廃業手続きの正しい手順や確定申告の方法について詳しく解説します。

法人格がなくならない限り申告義務が発生し続ける

個人事業主の廃業届に関するイメージ

法人が実質的に事業活動を停止している場合であっても、法的な手続きを経て法人格を消滅させない限り、税務上の申告義務は継続します。これは、法人が活動を停止している、いわゆる休眠状態であっても変わりません。

実質的に廃業状態にあったとしても、法人登記を抹消し清算手続きを完了させるまでは、法人税法上、毎事業年度終了後2ヵ月以内に確定申告を行う義務があるのです。

確定申告では、その年度の収支状況を申告します。例えば不動産を保有しているなどして収益がある場合など、事業を行っていない場合でもその収益に対する税金を計算し、申告しなければなりません。また、事業をしていなくても、固定資産税や事業用資産に関する税金が発生することもあります。

廃業を考えている法人は、ただ単に事業活動を停止するだけではなく、法人税法やその他関連する法律に則った手続きを行うことが重要です。また、廃業に向けて手続きを進める中で、未処理の債務や資産の処分などの処理が必要になる場合があります。これらの処理を適切に行わなければ、税務調査の対象となる可能性もありますので、慎重に進めることが肝心です。

必要な手続きや申告を怠ると、税務上の不備が生じ、無申告加算税や延滞税の対象となるリスクがあります。実質的に廃業していると自認している法人であっても、法的な手続きを適切に行い、税務申告の義務を怠らないよう注意が必要です。

法人の廃業手続き

個人事業主の廃業届に関するイメージ

法人としての事業を終了し、会社を消滅させるためには、法律上で定められた手続きが必要です。廃業の手続きには複数の方法がありますが、ここでは会社に残っている資産をもって債務の完済が可能な場合を想定した、通常清算を前提として解説します。

①株主総会で「解散」することを決議する

解散を決議するためには、まず株主総会を開催し、そこで「解散」を議題として取り上げます。法人の解散は、取引先や従業員に大きな影響を与えるため、通常の議案よりも厳しい要件が求められます。

具体的には、議決権を有する株主の過半数が株主総会に出席し、その出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。例えば、100人の議決権を持つ株主がいる場合、少なくとも51人が出席し、そのうち34人以上が賛成しなければなりません。高いハードルが設けられているのは、法人の解散が事業の終了を意味し、関係者に多大な影響を及ぼすためです。

②解散したことを登記する

法人の解散を株主総会で決議した後は、法務局で解散の登記申請を行います。株主総会は社内のイベントであり、外部からその決議内容を知ることはできません。対外的に「会社が解散した」ことを正式に示すためには、登記が必要です。

解散の登記は、会社法第915条により、解散決議の日から2週間以内に行わなければなりません。

第九百十五条 会社において第九百十一条第三項各号又は前三条各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その本店の所在地において、変更の登記をしなければならない。

引用:会社法第九百十五条(変更の登記)|e-Gov法令検索

登記を行うことで、取引先や関係者に会社の解散を周知し、法的にも解散が認められます。これにより、法人の清算手続きが正式に開始されます。

解散した法人は、清算手続きが完了するまで、基本的に事業活動は行いません。代わりに、清算に向けた活動を行い、「清算中の会社」という位置づけになります。

また、解散の登記と同時に精算人と代表精算人の就任の登記が必要です。一般的には、解散時の代表取締役が代表精算人に就任します。

③会社に残った財産を分配する

法人の解散登記後、すぐに清算結了(法人格の消滅)とはなりません。解散を決議しただけでは、会社にはまだ、現金や貸付金などの資産や、借入金などの負債が残っています。清算に至るためには、会社に残った資産や負債を整理し、財産目録の作成が必要です。債権を回収し、債務を支払い、最終的にすべてを現金化することを「残余財産の確定」といいます。

残余財産を分配する際には「債権者保護手続き」が必要です。債権者保護手続きとは、債権者に対して法人の解散を通知し、「異議があったら一定期間内に述べてください」と伝える手続きです。最低2か月の待機期間を設けることが法律で定められています。そのため、解散から清算までには通常3か月以上かかると想定しておきましょう。残余財産が確定したら、各株主の株式の持分割合をもとに、速やかに株主に分配します。

④「清算結了登記」をして法人格を消滅させる

法人を解散し、清算を終えた後は、法人格を正式に消滅させるために「清算結了登記」を行う必要があります。清算結了の登記を行わないと、法人格が残り続け、法人税が課税され続けるだけでなく、法人財産の処分や名義変更ができません。

また、相続が発生した際には、株式が相続財産となり、残された家族に負担をかけることにつながります。清算結了登記を行うことで、法人格が正式に消滅し、すべての法的手続きが完了します。これにより、法人の廃業手続きが完了し、関係者に対する責任も果たされます。

関連記事:廃業届の書き方・タイミングは?3つの注意点も解説

法人の解散・清算に際して最低でも2回の確定申告が必要

個人事業主の廃業届に関するイメージ

法人の解散、清算を行うときは、最低でも2回の確定申告が必要です。解散日から残余財産確定の日までが1年以上あるときは、それに加えて1年ごとに確定申告しなければなりません。

解散事業年度にかかる確定申告

法人の解散・清算に際して、まず、直前の事業年度末の翌日から法人の解散日、つまり「解散の決議をした日」までの期間を対象とした確定申告が必要です。

例えば、3月決算の法人が2023年9月10日に解散の決議を行った場合、2023年4月1日から2023年9月10日までの期間を対象とした確定申告を行う義務があります。申告期限は、延長の届出を出している場合を除き、解散の決議の日から2か月以内、つまりこの例では2023年11月10日です。

また、解散後も清算中の各事業年度について確定申告が必要です。清算中は、解散日の翌日から次の1年間を対象に「清算事業年度」として申告しなければなりません。各事業年度終了日の翌日から2ヵ月以内(1ヵ月延長の特例あり)に確定申告書を提出し、申告税額を納付する義務があるのです。

例えば、2023年9月11日から2024年9月10日を対象とした清算事業年度の申告は、2024年11月10日までに行う必要があります。

仮に、法人の解散を決議したまま清算を完了させずに放置すると、翌年以降も「清算事業年度」として申告し続けなければなりません。この手続きは清算を完了しない限りその後も続くため、注意が必要です。

残余財産確定事業年度の確定申告

残余財産確定日の属する事業年度の確定申告については、事業年度終了日の翌日から1ヵ月以内に行う必要があります。ただし、事業年度終了の翌日から1ヵ月以内に残余財産の最後の分配または引き渡しが行われる場合には、その行われる日の前日までが申告期限です。

この確定申告は、提出期限延長の特例が適用されないため、期限に遅れないよう速やかに手続きを行うことが重要です。

例えば、3月決算の法人が2023年9月10日に解散の決議を行い、債権者保護手続を経て、2024年1月20日に残余財産が確定した場合を考えます。この場合、まず2023年4月1日から2023年9月10日までの期間の確定申告を行います(これは前述の「解散事業年度にかかる確定申告」に該当します)。その後、さらに2023年9月11日から2024年1月20日までの期間の確定申告を行う必要があります。

残余財産確定事業年度の申告期限は1ヵ月以内、つまりこの例では2024年2月20日までとなります。速やかな対応が求められるため、計画的に手続きを進めることが重要です。

実質的に廃業していても無申告が発覚するとペナルティが課される

廃業手続きは慎重に行わないと、無申告状態が生じるリスクが高まります。実質的に廃業している場合でも、無申告が発覚すると無申告加算税や重加算税、延滞税が課される可能性があります。利益が出ていないからといって、無申告が問題にならないわけではありません。

税務署から過去の無申告期間を指摘された場合、その期間の利益が0円だったとしても、法人税等の追徴税額や無申告加算税は課されません。しかし、法人住民税の均等割は黒字・赤字に関わらず毎年発生します。

なお、実質的に廃業している場合は、事業所所在地の自治体に休眠会社である旨の届出を提出することで、住民税均等割を免除してもらうことが可能です。この手続きを行わないと、自治体に住民税均等割の課税権が残り続けるため、会社を休眠する際は注意しましょう。

また、清算結了していない法人は申告義務が免除されることはなく、申告書を提出する義務が残ります。実質的に廃業していたとしても、法的手続きが完了するまでは適正に申告を行う必要があるのです。さらに、廃業後も税務調査が行われる可能性があるため、適切な対応が求められます。

「休眠の届出」でも廃業時の無申告リスクを回避できる

書類を見ている人

廃業状態になった際、無申告によるリスクを回避するためには、法人格を消滅させる以外にも、休眠の届出を出す方法があります。

休眠会社は法律上まだ存在しているため、営業活動を停止していても申告義務があります。ただし、所得がない場合は法人税などは発生しないため、無申告であっても法人税に関する大きなトラブルは避けられるでしょう。

ただし、休眠の届出を正しく行わないと、法人住民税の均等割が毎年発生します。例えば、都税事務所や県税事務所、市役所に休眠会社である旨を届け出ていない場合、売上がゼロの年であっても、毎年70,000円ほどの法人住民税が課されます。さらに、事業活動が完全に停止していると認められない場合も同様です。届出を怠ると、税金を滞納している状況になりかねません。

休眠が2〜5年程度でその後に事業を再開する予定がある場合や、法人を売却する可能性がある場合は、毎年の税務申告が必要です。この場合、税理士に依頼することが一般的ですが、営業を停止している場合は簡素な申告で済むため、依頼料も少額で済むことがほとんどです。

廃業に伴う申告義務を守り、正しく手続きしよう

法人の廃業には、解散や清算結了といった法律上の手続きが必要であり、税務上の届出や申告も伴います。正しい手続きと必要な確定申告を行わない場合、無申告のリスクが生じるため、税理士などの専門家に相談しながら進めることが重要です。

廃業や休眠をお考えの方や、無申告リスクを回避したい方は、私たち「小谷野税理士法人」が全力でサポートしますので、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
税理士「今野 靖丈」

会社設立専門の税理士による
オンライン面談を実施中!

お電話でのお問い合わせ

0120-469-383 受付時間 平日 09:00~18:00

Webからのお問い合わせ

相談無料会社設立の相談をする 24時間受付中

税理士変更のご検討は
オンライン面談でもお受けします

お電話でのお問い合わせ

0120-469-383 受付時間 平日 09:00~18:00

Webからのお問い合わせ

税理士変更の相談をする 24時間受付中
オンライン面談