経費精算や税務で頻繁に目にするレシートと領収書の違いについて、正しく理解ができているでしょうか?この記事では、レシートと領収書について、両者の違い、税務上の扱いなど、税務と経費精算に役立つ情報を徹底解説します。また、インボイス制度への影響についても紹介します。レシートと領収書の違いを正しく認識することで、経費精算や税務処理をスムーズに進めましょう。
目次
税法におけるレシートと領収書の違い
経費であることを証明するためにもレシートや領収書は欠かせない存在ですが、それぞれ税法上では違いはありません。つまり、税法上ではどちらも支払いを証明できる書類という位置づけです。
事実、海外では領収書という書類自体が存在しないことが多いです。海外でサービスを受けたり、ものの購入したりしたときは、支払いを実証する書類としてレシートを受け取ります。
日本独特の慣例である領収書、国内外で発行されるレシート、共に支払いを証明できる効力を持ちます。
レシートと領収書の記載内容の違い
税法においては同じ扱いのレシートと領収書ですが、記載内容に違いがあります。正しく経費を精算するためにも、レシートと領収書の記載内容の違いを押さえておきましょう。
記載項目
レシートと領収書では、記載項目に違いがあります。
レシートの記載項目
- 発行日
- 取引金額
- 取引詳細
- 発行者の連絡先(住所、電話番号、担当者)
- 収入印紙(代金が5万円を超える場合)
領収書の記載項目
- 発行日
- 取引金額
- 但し書き(主な用途)
- 発行者の連絡先(住所、電話番号、担当者)
- 社印、担当者印
- 収入印紙(代金が5万円を超える場合)
共通する項目もありますが、異なる点もいくつかあります。それぞれの違いについて、以降にさらに詳しく解説します。
宛名の有無
領収書にはサービスや商品を購入した人もしくは企業の宛名が記載されています。レシートも領収書も下記の内容が、書類に明記されています。
- 発行者
- 日付
- 取引内容
- 単価
上記の情報に加えて、代金を支払った人や企業の情報を宛名として記載しているのが、領収書です。
領収書の宛名は、代金を支払った人や企業が指定し、原則、企業名もしくは個人名を記載してもらいます。また、株式会社を㈱と表記するような略称の領収書を経費精算に使えない企業もあるため、発行を依頼するときは注意してください。
領収書の宛名として「上様」を使うケースもありますが、代金の支払い先が曖昧になるため、会社名か個人名を明記してもらうことが無難です。
代金の内訳詳細
レシートには領収書のような宛名の記載がありませんが、代わりに支払った費用の詳細が明記されています。
一方で領収書は、レシートと同程度に費用の詳細が明記されていません。しかし、宛名が明記されている領収書は、業務上必要な支払いであったことを説明するのに効果的です。
社印もしくは担当者印の有無
領収書を発行してもらうときは、宛名、合計金額、さらには社印もしくは担当者印の押印があります。レシートは、レジから直接発行されるものであるため、社印がありません。
領収書の押印は、取引について証明するために、領収書の発行側が押印しますが、主に、昔からの慣習や偽造防止の目的で押印しているケースがほとんどです。
しかし、押印の有無が領収書としての効力に与える影響はないとされています。そのため、領収書への押印は必須ではありません。仮に、押印のない領収書でも、支払いの立証に効力のある書類として成り立ちます。
発行依頼の可否
レシートは、代金の支払いがあった場合に自動的に発行されます。一方で、領収書は自動的ではなく、代金を支払った企業もしくは個人から依頼を受けて発行するものです。
レシートでも代用できることなどを理由に、領収書の発行依頼を断られることもあります。一方の領収書は、レシートのように機械による印字ではなく、手書きでの作成が一般的です。
電子データではなく、手書きで領収書を作成する主な理由は、長年の慣習、長期間保存、不正防止のためです。企業取引では、レシートよりも、領収書を経費精算などで重宝する慣習が昔から根付いています。そのため、レシートではなく、領収書の発行を希望するケースが、今でも多いのです。
また、領収書は長期間の保存にも効果的です。レシートは、感熱紙に印字するため、経年劣化によりインクが消えやすく、期間が経過すると内容が確認できない場合があります。
さらに、領収書の方が、不正利用の可能性が低いと考えられています。領収書では宛名を記載するだけでなく、改ざん防止のために金額の前に「¥」金額の最後に「-」が記載しているからです。不正に数字を付け足せないことから、改ざん防止として領収書を選ぶケースもあります。
経費精算時に必要な書類
領収書とレシートは、どちらも税法上では同等の扱いです。正しく経費精算をするためにも、支払いの事実を明らかにするのに必要な項目について理解しておきましょう。
経費の計上時に必要な項目
モノやサービスの購入を経費として算入する場合は、その出費が妥当であることを証明するための書類が必要です。支払いの証拠書類として効力を持たせるためには、以下の項目が必須です。
- 取引の日付
- 取引金額
- 取引内容
- 発行者の名称と連絡先
- 収入印紙(5万円以上)
条件を満たしていれば、レシートでも領収書でも支払いの証明が可能です。取引内容については、レシートに詳細が記載されていますが、領収書では、飲食代、備品代といったように但し書きで、詳細を確認できます。
また、社印や担当者印は経費計上に必須ではありません。しかし、社内規定で必要とされている場合は、押印無しの領収書では経費精算ができないため、忘れずに押印してもらいましょう。
レシートは領収書として使用可能
レシートは領収書の代わりとして使用できます。領収書を英訳すると「receipt」、つまりレシートという意味で、領収書と同じ意味で使われています。
海外では、日本のように領収書を発行する習慣がありません。そのため、海外出張でかかった経費を精算するときは、レシートで支払いの事実を明確にしましょう。
また、経費精算に関する社内規定で、領収書を添付することが義務付けられている場合、領収書が必要です。モノやサービスを購入した際には、領収書の発行を依頼してください。
会社の規定をチェックし、経費の精算や計上に必要な書類を確認する必要もあります。従業員に対して、経費精算の際に必要な証明書として何が必要なのかを、しっかりと周知させましょう。
レシートと領収書はどちらを使うべき?
レシートも領収書も記載項目に問題がなければ、どちらを使用しても支払いを証明できる書類です。
ただし、領収書の記載事項によっては、信憑性が低くなることがあるため注意が必要です。例えば、本来は会社名や個人名を記載する宛名の部分を「上様」としたり、支払いの詳細を明記せずに「お品代」としていたりする場合です。
何にいくら使ったのかが明確でない領収書は、業務上に必要な支払いであることを立証できず、税務署から指摘を受けるリスクがありまります。
一方でレシートは、宛名や押印はありませんが、日付や購入品目の詳細、店名まで印字されており、改ざんのリスクもありません。場合によっては、領収書よりも信頼できる書類です。
いずれにせよ、税務署から指摘を受けないようにするために、購入の詳細を証明できる書類を支払いの証明として選ぶことが大切です。
領収書を発行してもらえないときの対策
レシートも代金の支払いがあった事実を確定する書類として使えますが、他にも金銭のやり取りを証明できる書類があります。
- 受領証
- 預かり証
- お買い上げ伝票
- 請求書や納品書(「代済」「相済」「了」の記載あり)
レシートや領収書がないときは、上記の書類を代金授受の証明書として使用します。
また、下記のような支払いも金銭の授受を証明する書類がありません。
- 交通費(バスや電車)
- 慶弔関連(お祝い金、香典)
- 自販機で購入したもの
上記のような支払いが生じた場合は、出金伝票(文具店で購入もしくはExcelでも可)を作成します。出金伝票には、金額や日付、相手の氏名、取引内容を記載します。支払の妥当性を立証できるように、結婚式などは招待状をコピーしておきましょう。
参考:国税庁 No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書
レシートや領収書がないときの経費精算でお困りなら、「小谷野税理士法人」にお気軽にお問い合わせください。
レシートや領収書で経費を精算するときの注意点
レシートも領収書も、どちらも必要な項目を満たしていれば、支払いの事実を証明するのに効果的です。ここでは、レシートや領収書を使って経費精算をするときの注意点について紹介します。
レシートと領収書の両方の受け取りはできない
お店でサービスを受けたり、買い物をしたりしたとき、レシートと領収書を両方受け取れません。どちらが経費精算に適しているのかを事前に確認しておき、適切な書類の発行を依頼してください。
レシートと領収書を両方受け取れないのは、二重発行を防ぐためです。領収書とレシートを両方渡してしまうと、二重での経費計上が可能になるからです。
レシートや領収書を不正に使用した場合は、違反した本人や企業だけでなく、領収書やレシートを発行した側も罪に問われることがあります。
基本的にレシートと領収書の両方を発行することはありません。しかし、誤って両方を受け取ってしまった場合は、同一の支払いであることが分かるように保管しておきましょう。
支払いを証明できる書類を用意する
備品などの買い物やタクシーの利用などはレシートで対応できても、特に、飲食代に関しては領収書を求められる可能性が高いです。
原則、レシートでも出費の妥当性を確証できますが、適切な支払いであることを証明するために、領収書を求める企業が多数あります。
それは、飲食代が税務調査で指摘される確率が高い経費の一つだからです。例えば、会食にかかった費用が高額だったり、会食の頻度が高かったりすると、会食の必要性を疑われる可能性が高いでしょう。
また、宛名がないレシートは、ビジネス目的で利用したのかを証明するのが難しいことから、宛名のある領収書を必要としている企業が多いのです。
税務調査が入ったときに、必要な支払いであることを明らかにするためにも、領収書とレシートのどちらが適しているのかを検討してみましょう。
支出の内容に関わらず、全て領収書で精算するのか、支払いの内容に応じてレシートと領収書を使い分けるのか、事前にルールを決めておくことです。
また、領収書を発行してもらうときは、信頼性を高めるために、支払いの詳細、日付、店名、金額、宛名(企業名や個人名)が必須です。
モノやサービスの購入が、業務上必要であることを証明できるようなレシートや領収書が求められます。
領収書とレシートの保存義務がある
取引を証明する書類であるレシートや領収書は、一定期間保存しなくてはいけません。原則、法人と個人事業主(青色申告者)は7年です。青色申告者でも前々年度の所得が300万円以下、白色申告者は5年間です。
保存期間ですが、レシートや領収書の発行日ではなく、確定申告期限から起算して7年間(5年間)であることに注意してください。
電子帳簿保存法の施行に伴って、紙で受領した領収書やレシートもスキャナで読み取り、電子保存が可能です。ただし、過去(2022年1月1日以前)の領収書やレシートの電子保存をするときは、税務署への届け出が必要です。
領収書とレシートにおける必要なインボイス対応
インボイス制度の導入に伴い、課税事業者として登録している企業や個人事業主も多いはずです。ここでは、レシートや領収書のインボイス対応について解説します。
インボイス対応の領収書やレシートを発行してもらう
仕入れ税額控除を受けるためには、サービスやものを購入したお店からインボイスに対応した領収書やレシートを発行してもらうことです。
インボイスには以下の項目の記載が必須です。
- 適格請求書発行事業者の名称と登録番号
- 取引日
- 取引内容
- 取引きの税抜き価格、税込み価格を税率ごとに区分したもの
- 税率ごとに区分した消費税額
- 発行者の名称
手書きの領収書の場合も、同様に上記の項目が必須です。領収書の発行時に、必要事項の記載漏れがないか、確認しましょう。
インボイスの発行が免除されるケース
インボイスの登録事業者であっても、下記のケースでは要件を満たした領収書やレシートの発行が免除されます。
- 公共交通機関の運賃(3万円以下)
- 自販機での商品販売(3万円以下)
- 組合委託の農林水産物の売買
- 切手を使う郵便サービス
- 卸売市場での生鮮食品の売買
上記に該当する出費があった場合は、出金伝票などを作成し帳簿に記載しておけば、仕入れ税額控除の適用対象となります。
まとめ | レシートと領収書の違いを正しく理解し適切な経費精算を!
税法上、レシートも領収書も、支払いの妥当性を証明できる書類であり、要件を満たしていれば経費精算時に使用できます。ただし、ものやサービスの購入が、業務上必要であることを確証できるような、レシートや領収書が必要です。経費精算時に必要な書類について、社内でルールを決めて、正しく経費を精算しましょう。