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小規模企業共済に個人事業主が加入するメリットとデメリットを解説

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小規模企業共済に個人事業主が加入するメリットとデメリットを解説

個人事業主が加入できる制度の一つとして小規模企業共済があります。個人事業主には給与所得者のように退職金がないため、自身で老後のの生活資金をためる必要があります。本記事では、個人事業主が加入できる小規模共済について詳しく解説するとともに、そのメリット・デメリットについてお伝えします。

小規模企業共済の基礎知識

ストックオプションの税金のイメージ

個人事業主の方々にとって、将来の資金計画は重要な課題の一つです。小規模企業共済は、廃業や退職後の生活資金を積み立てるための退職金制度であり、1965年に設立されて以来、多くの方が加入しています。

加入にはいくつかの条件があり、事業を営む方々に配慮された内容が定められています。以下より制度の概要と個人事業主が加入できる具体的な条件についてもお伝えします。

小規模企業共済とは

小規模企業共済は、個人事業主や小規模企業の経営者が、廃業や退職後の生活資金を積み立てるための退職金制度です。1965年に発足し、約162万人(2023年3月時点)が加入しており、運営は独立行政法人中小企業基盤整備機構が行っています。 

この制度に加入すると、月額1,000円から70,000万円の範囲で自由に掛金を設定でき、積み立てた金額に応じて将来共済金を受け取れます。また掛金は所得控除の対象になり、税金の負担を軽減しながら将来に備えられる制度です。

小規模企業共済制度に加入できる個人事業主

前提として個人事業主とは、法人を設立せずに自らの名義で事業を営む個人を指します。一般的に、雇用契約に基づいて他者のために働いている場合は、個人事業主には該当しません。ただし、請負や代理業務などの契約に基づいて独立して事業を行い、事業所得を得ている場合は個人事業主として認識されます。

個人事業主が小規模企業共済に加入するためには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 常時使用する従業員の数が要件に合致していること
  • 税務署に開業届を提出し、事業所得を得ていること
  • 雇用契約に基づく給与を受け取っていないこと
  • 固定給に近い報酬を得ず、完全歩合制であること
  • 社会通念上、事業者と認められること(事務所を有し、事業に従事している等)

個人事業主が複数の事業を行っている場合、すべての事業で小規模企業者である必要があります。「常時使用する従業員」の数については以下のように定められています。

  • 建設業、製造業、運輸業、不動産業、農業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る):常時使用する従業員が20人以下
  • 商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く):常時使用する従業員が5人以下

ここでの「常時使用する従業員」とは、共済加入時点で雇用されている正社員のことで、個人事業主や家族従業員、パート・アルバイトなどは含まれません。

なお、以下の場合は小規模企業共済に加入できません。

  • 給与所得者で事業を兼業している方(例:アパート経営をしているサラリーマン)
  • 会社の役員とみなされる方(役員登記がない実質的な経営者)
  • 他の共済制度の被共済者(中小企業退職金共済制度など)
  • 生命保険外務員
  • 配偶者の専業従事者(共同経営者の要件を満たせば加入可能)
  • 小規模企業者に該当しない事業の兼業や役員をしている方
  • 学業を本業とする全日制高校生など

これらの条件を確認し、自身が小規模企業共済に加入できるか判断しましょう。

参考:加入資格 | 小規模企業共済

小規模企業共済に加入するメリット

個人事業主における年金の確定申告イメージ

個人事業主が小規模企業共済に加入するメリットとしては、主に以下の5点が挙げられます。

  • 掛金が全額所得控除の対象になる
  • 無理なく積み立てられる
  • 共済金受取時は退職金扱いになる
  • 低金利の貸付制度を利用できる
  • 決算対策にも役立つ

掛金が全額所得控除の対象になる

小規模企業共済の掛金は、全額が「小規模企業共済等掛金控除」として課税所得から控除されます。掛金は前納も可能で、前納した分も控除の対象です。掛金額が大きいほど税制メリットが増し、退職金を積み立てながら節税も行える点が魅力です。

例えば、課税所得が200万円の場合、月額掛金を70,000円に設定すると、約12万9,400円の節税が可能。また、所得が多い年には、12月に翌年分を一括で支払うことで最大84万円の控除を受けられます。掛金は月額1,000円から70,000円の範囲で設定でき、500円単位で調整可能です。

加入期間が長くなるほど、積立金と所得控除額が増えていきます。小規模企業共済は退職金の準備と同時に節税効果を高める手段として、特に所得が高い方におすすめです。

無理なく積み立てられる

小規模企業共済の掛金は、月額1,000円から70,000円の範囲で500円単位で自由に設定できます

掛金は、多いほど節税効果が高まりますが、月々の負担も考慮しなければなりません。資金繰りが厳しくなった場合には、柔軟に掛金を減額できます。経済的に余裕があるときには、増額して積立金を増やすこともできます。

経営状況に応じて掛金を調整できるため、一定額を強制的に積み立てる保険とは異なり、無理のない範囲での積み立てが可能です。

掛金の支払い方法は、月払い・半年払い・年払いから選択できます。そのため経済的に余裕のあるタイミングでまとめて支払えます。

共済金受取時は退職金扱いになる

小規模企業共済では、共済金を受け取る際に税制上の優遇措置が適用され、退職金として扱われます。個人事業主でも退職時にまとまった資金を受け取り、老後の生活資金が得られるため安心です。

共済金の受け取り方法は、一括受取り・分割受取り・またはその併用から選べます。共済金Aや共済金Bを受け取る場合、請求事由が死亡でない限り、60歳以上であれば分割受け取りができます。この際、分割受け取りでは300万円以上、一括・分割併用の場合は330万円以上の受け取りが必要です。

なお、受け取り方法を選ぶ際には注意が必要です。税制上の取り扱いは受け取り方によって異なります。一括で受け取った場合は退職所得扱いになり、通常の所得税よりも軽減された税率が適用されます。一方、分割受け取りの場合は雑所得扱いになり、税負担が大きくなる可能性があるため注意が必要です。併用受け取りでは、一括分は退職所得、分割分は雑所得として扱われます。

この制度は、退職金制度がない個人事業主にとって、将来の資金計画において重要です。特に、事業の廃業や引退を考える際には、小規模企業共済を利用することで、安心して生活資金を準備できます。共済金の受取時の税制優遇を活用し、賢い資金運用を行いましょう。

低金利の貸付制度を利用できる

個人事業主として事業を営む中で、急な資金需要は多々発生します。小規模企業共済の加入者であれば、掛金の範囲内で低金利の貸付制度が利用できます。

小規模企業共済で利用できる貸付制度は以下の通りです。

  • 一般貸付け(事業資金)
  • 緊急経営安定貸付け
  • 傷病災害時貸付け
  • 福祉対応貸付け
  • 創業転業時・新規事業展開等貸付け
  • 事業承継貸付け
  • 廃業準備貸付け

特に一般貸付けは、事業資金を迅速に借りられる制度です。掛金の7~9割(10万円以上2,000万円以内)を低金利(年1.5%)で借り入れできます。緊急時や福祉目的など他の貸付制度では、さらに低金利の年0.9%での融資も提供されています。

これらの貸付制度は、無担保・保証人不要で即日対応可能です。事業が不安定な時期にも迅速かつ有利な条件で資金を確保できるため、経営のリスク軽減に繋がります。

なお、貸付限度額は掛金の残高や納付月数に基づいて年2回(4月・10月)設定されます。利用を検討する際は、契約内容の確認を行いましょう。

決算対策にも役立つ

小規模企業共済の掛金は通常は月払いですが、年払いを選ぶこともできます。特に年末の決算期に「今年は利益が多くて税金が増えそうだ」と感じたとき、年払いに切り替えることで節税対策として活用できます。

例えば12月中に1年分の掛金をまとめて支払うことで、その分を所得控除として計上し、税金の負担を軽減できます。期末に予想外の利益が出た場合の決算対策として有効です。

小規模企業共済に加入するデメリット・注意点

書類を見て悩む女性

小規模企業共済は個人事業主にとって心強い制度ですが、いくつかのデメリットや注意点もあります。主なデメリットとしては以下の4点が挙げられます。

  • 短期間の加入で掛け捨てリスクがある
  • 元本割れの可能性がある
  • 受取時に課税される
  • 手続きが煩雑

短期間の加入で掛け捨てリスクがある

個人事業主が小規模企業共済に加入する際、短期間の加入には掛け捨てのリスクがあることを考慮しなければなりません。ただし、事業を廃業した場合や共済金の支給事由に該当する場合は、12ヵ月未満の加入でも掛金は返還されます。

加入者が任意解約を12ヵ月未満で行った場合、これまで支払った掛金は返ってこず、全額が失われるリスクがあります。例えば、月額掛金を10,000円に設定し、12ヵ月未満で任意解約した場合、最大で12万円の損失です。もちろん掛金を低く設定すれば損失は最小限に抑えられますが、それでも掛け捨てのリスクは残ります。

短期間で加入をやめる可能性がある場合は、こうしたリスクを理解した上で、慎重な判断が必要です。

元本割れの可能性がある

元本割れのリスクは、個人事業主にとって重要な要素です。

掛金を20年未満(240ヵ月未満)で任意解約した場合、受け取る解約金は掛金の合計額を下回り、元本割れします。このリスクは、自己都合での解約や、12ヵ月以上の掛金滞納による機構解約に該当します。ただし、法人解散や役員の退任、契約者の死亡といった特定の状況では元本割れしないこともあります。

さらに、加入期間が240ヵ月以上でも、掛金の増減があった場合は、任意解約時の解約手当金が掛金合計額を下回る可能性があるため注意が必要です。このため、小規模企業共済に加入する際は、240ヵ月以上の掛金支払いが可能かどうかを慎重に判断しましょう。

元本割れを避けるためには

掛金を最低限の1,000円に減額しましょう。これにより経済的負担を軽減し、任意解約や滞納を防げる可能性があります。また、事業資金が必要な場合には、掛金納付期間に基づいた低金利の貸付制度(年利0.9~1.5%)を利用することで解約を回避できます。

受け取り時に課税される

共済金を受け取る際には課税が発生します。ただし、退職所得控除が適用されるため、全額が課税対象になるわけではありません。このため、受取時の課税は大きなデメリットにはならないでしょう。

共済金は一括または分割で受け取ることができ、一括受取は退職所得として、分割受取は雑所得として扱われます。また一括と分割を併用することも可能で、いずれの場合でも税の優遇措置があります。

退職所得は他の所得と分離して計算します。具体的な計算式は以下の通りです。

退職所得=(退職金-控除額)×1/2

受取時の課税については注意が必要ですが、実際の税負担は比較的軽いものと言えます。特に廃業時の税金支払いを考慮すると、共済金の仕組みを理解しておくことが重要です。

手続きが煩雑で利用しづらさを感じる場合も

小規模企業共済の加入手続きや解約手続きは煩雑と言われています。

加入手続きや解約手続きでは数ページにわたる書類を提出する必要があり、その作業には数時間を要する場合もあります。特に忙しい個人事業主にとっては、この時間が負担になります。

事前に必要な手続きや書類を調べておき、スムーズに進められるような準備が肝心です。必要に応じて事務代行を利用したり、専門家に任せたりすることも検討しましょう。

小規模企業共済で正しい資金計画を

個人事業主が加入できる小規模企業共済についてお伝えしました。小規模企業共済は、個人事業主にとって多くのメリットが存在し、資金計画の一助となり得ます。いくつかの注意点や、手続きの煩雑さもあるため、専門家に相談するという選択肢も考慮しましょう。

小規模企業共済への加入を検討されている方は、ぜひ「小谷野税理士法人」までお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
税理士「今野 靖丈」

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