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会社設立の基礎知識

サラリーマンの副業が赤字…確定申告と損益通算のやり方を解説

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サラリーマンの副業が赤字…確定申告と損益通算のやり方を解説

サラリーマンの副業が赤字になった際、その赤字分を本業の所得から差し引ける「損益通算制度」を利用できる場合があります。ただし、損益通算には適用条件があり、すべての赤字を差し引けるわけではありません。この記事では、損益通算できる赤字とできない赤字の見分け方や、確定申告で損益通算するやり方を解説します。また、「副業収入が年300万円以下だと損益通算できないって本当?」といった疑問にもお答えします。

損益通算とは?副業の所得区分によっては適用できない

確定申告のイメージ

まずは損益通算の制度を解説します。適用できれば節税できますが、適用には条件があることを押さえましょう。

損益通算とは、副業の赤字を本業の黒字と相殺して節税する制度

損益通算とは、種類が異なる所得同士の赤字と利益を相殺できる制度です。副業で赤字が出た場合、他の所得(会社員なら給与所得)と相殺して総所得を減らせます。よって、相殺する前よりも税金を安くできます。

具体例は以下の通りです。

給与所得

500万円

副業の所得

-100万円

総所得

給与所得 + 副業の所得

= 500万円 + ( – 100万円)

= 400万円

上記の場合、損益通算を適用しないと、給与所得の500万円に基づいて所得税や住民税が計算されてしまいます。しかし損益通算を適用すると、総所得の400万円に基づいて所得税や住民税が計算されます。

ただし、他の所得と損益通算できる所得は下記4点に限られているため注意しましょう。

  • 事業所得
  • 不動産所得
  • 山林所得
  • 総合課税の譲渡所得

上記以外の所得は、他の所得と損益通算できません。つまり、損益通算には「副業の所得区分」が重要です。

参考:損益通算|国税庁

副業の所得区分が「損益通算できる所得」であることが必要

一般的な副業の所得は、以下のように区分されます。所得区分によって、損益通算や青色申告ができるか否かが分かれるので気を付けましょう。

収入の一例

所得区分

他の所得との損益通算

青色申告

  • 個人事業主としての定期的な仕事の収入
  • 継続的なアフィリエイトやせどりなどの収入

事業所得

  • 単発の仕事の収入
  • 少額のアフィリエイトやせどりなどの収入
  • 株の売買の利益(営利目的もしくは所有期間1年以下の場合)
  • 暗号資産(仮想通貨)の利益

雑所得

×

×

土地・建物・駐車場などの貸付けによる収入

不動産所得

株の売買による利益(単発もしくは所有期間1年超の場合)

譲渡所得(分離課税)

×

×

車や金(ゴールド)の売買による利益

譲渡所得(総合課税)

×

雇用契約に基づくアルバイトやパート

給与所得

×

×

参考:所得の種類と課税方法|国税庁

参考:青色申告制度|国税庁

上記を見ても分かる通り、事業所得と雑所得の線引きは曖昧です。にも関わらず、損益通算や青色申告ができるかで税負担は大きく変わります。そのため、両者の所得区分についてはトラブルが起こりやすいので注意しましょう。

国税庁は事業所得と雑所得の区別について、「帳簿を付けて保存しているか否か」が重要だと通達しています。以下の表の「事業所得の条件」に1つでも当てはまっていれば、事業所得だと主張できる可能性があります。

事業所得の条件

雑所得の条件

  • 社会通念上「事業」と言える程度で行っており、取引を帳簿に記録し保存している
  • 副業の収入が300万円超
  • 社会通念上「事業」と言える程度で行っていない
  • 帳簿の記録や保存をしていない

なお、社会通念上の事業とは、「営利目的で対価を得ているか」「反復・継続しているか」などで判断すると過去に判例があります。

参考:最判昭和56年4月24日|最高裁判所

ただし、記帳や帳簿保存をしていても、以下2つのケースでは税務署が個別に判断する場合があります。もっと言えば、雑所得と認定される可能性が高くなります。

雑所得と認定される可能性が高いケース

具体例

副業の収入がごく僅か

  • 3年程度の期間で収入額が年300万円以下
  • 主な収入(会社員の給与など)の10%未満の収入額

営利性が認められない

副業が毎年赤字で、赤字を解消する取組をしていない

参考:法第35条(雑所得)関係|国税庁

副業の所得が雑所得か事業所得か迷う方は、事業所得として確定申告する前に、税務署や税理士に相談しましょう。税務署は、事業の赤字を利用して所得税を少なくしようとする脱税行為を警戒しているためです。

事業所得として確定申告した後に税務署から否認されてしまった場合、追徴課税を求められるケースもあります。余計なお金を支払うことになるためご注意ください。

追徴課税とは?加算税の種類や計算方法、対象期間について解説

また、事業所得に該当する場合で、開業届を出していない方はすぐに提出しましょう。「事業を始めた場合は、開業届を税務署に出す」というルールがあります。

【税理士監修】開業届とは?書き方や必要書類、提出方法までの完全ガイド

なお、副業の不動産所得や譲渡所得について詳しく知りたい方は、下記の記事もご確認ください。

家賃収入があるサラリーマンは確定申告が義務?必要書類も解説

雑所得同士・譲渡所得同士など、同じ所得の通算なら可能

雑所得や譲渡所得(分離課税)といった「他の所得と損益通算できない所得」でも、同じ所得であれば通算が可能です。例えば、せどりの雑所得が赤字でも、原稿料の雑所得でプラスが出ていれば、所得を相殺できます。これは所得内通算や内部通算と呼ばれます。

ただしFXや先物取引の雑所得は例外です。 これらの損失は、同じ「先物取引に係る雑所得」の範囲内でしか通算できず、せどりや原稿料などとは通算できません。

参考:外国為替証拠金取引(FX)の課税関係|国税庁

参考:先物取引に係る雑所得等の課税の特例|国税庁

株の譲渡所得についての通算について詳しくは、下記のサイトや記事をご確認ください。

株式投資で損をしたときの節税法!確定申告での損益通算のやり方を解説

参考:上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除|国税庁

サラリーマンが確定申告で副業の赤字を損益通算するやり方

フローランスの確定申告のイメージ

損益通算を適用するには、確定申告を行う必要があります。ここでは、会社員が副業の赤字を損益通算する際の確定申告のやり方を3ステップで解説します。

  1. 損益通算できる赤字か?副業の所得区分を確認する
  2. 副業の帳簿を付け、収入・経費・赤字額を正確に把握する
  3. 帳簿と源泉徴収票を揃え、確定申告する

以下、1つずつ見ていきましょう。

①損益通算できる赤字か?副業の所得区分を確認する

記事前半で解説した通り、給与所得と損益通算できる赤字は事業所得や不動産所得など4種類のみで、雑所得はできません。確定申告の前に、副業の赤字が損益通算できるか必ず確認しましょう。迷う場合は、事前に税務署や税理士へ相談することをおすすめします。

これ以降は、副業の所得が「損益通算できる所得」に該当するとして解説していきます。

②副業の帳簿を付け、収入・経費・赤字額を正確に把握する

確定申告では、副業の収入や経費、そして赤字額を正確に記入する必要があります。それらの数値は帳簿から割り出します。帳簿を付けていない場合は今からでも付けましょう。

確定申告なのに帳簿を付けてない!個人事業主の最低限の対策は?

事業所得や、事業規模の不動産所得がある方が青色申告を行う場合、複式簿記による帳簿が必要です。青色申告や複式簿記の記帳方法に関して詳しくは下記の記事をご確認ください。

サラリーマンの副業でも青色申告は可能?メリットや注意点について解説

事業規模ではない不動産所得や、白色申告の場合でも、簡易簿記が必要です。詳しくは下記の記事をご確認ください。

白色申告の帳簿の付け方解説|手書きやエクセルは可?記載例も

帳簿には、収入や経費を正確に記録する必要があります。経費にできるものを把握し、漏らさず計上しましょう。

【税理士監修】副業の経費はいくらまで?節税するための確定申告書の書き方
個人事業主は経費をどこまで切れる?経費にできるものや上限・メリットなどぶっちゃけ紹介!
個人事業主が経費計上できる項目と事例、経費の落とし方を徹底解説!

③帳簿と源泉徴収票を揃え、確定申告する

確定申告の際は、副業の帳簿のほか、本業の源泉徴収票も必要です。どちらも提出はしませんが、確定申告書の作成に使います。

状況に応じて固定資産台帳や各種控除の証明書類なども必要になる場合があります。詳しくは下記の記事で確認してください。

【税理士監修】確定申告のやり方ガイド!いつからいつまでの収入?郵送のケースや必要書類・マイナンバーカードについて

必要な資料が揃ったら、e-Taxで確定申告書を作成していきます。

参考:e-Taxについて知る | 【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)

e-taxの指示に従いながら、帳簿や必要書類をもとに収入・経費・給与所得・各種控除などを入力しましょう。e-taxであれば、自動で損益通算の計算をしてくれます。特別な手続きは不要です。

作成した書類に不備がなければ提出しましょう。これで赤字の損益通算は完了です。

サラリーマンが副業の赤字を損益通算する際のよくある質問

疑問を持っている男性

ここでは、サラリーマンが副業の赤字を損益通算する際に抱きやすい疑問2点にお答えします。

副業の収入が年300万円以下だと損益通算できなくなるって本当?

本当ではありません。確かに2022年8月、国税庁は「副業の場合、年300万円以下の収入は雑所得とする」という旨の改正案を出しました。事業所得と雑所得の線引きに基準を設けようとしたためです。

しかし反対するパブリックコメントが殺到し、同年10月、上記の内容は修正されました。その結果、原則として副業の年収に関わらず帳簿書類がある場合は「事業所得」、ない場合は「雑所得」と通達されました。

よって、「副業の収入が年300万円以下だと損益通算できなくなる」というのは、現時点では間違いです。

参考:サラリーマンの「副業節税」に歯止め?国税庁が改正案(2022年8月) | 毎日新聞
参考:帳簿つけたら「事業所得」 所得税、副業促進に配慮(2022年10月)|日本経済新聞

赤字を損益通算すると、副業が会社にばれる可能性はある?

はい。赤字を損益通算すると、副業が会社にばれる可能性が高まります。自治体は毎年、社員の住民税の額を会社に通知するためです。

損益通算を行って総所得と住民税が減った場合、会社は「住民税が減っている」という事実を把握します。これにより、会社の人に「あの社員、副業しているのかな?」と推測される可能性があります。

会社にばれたくない方は、赤字が出ても損益通算しない方がいいでしょう。詳しくは下記の記事をご確認ください。

副業は住民税でバレる?申告方法や会社にバレない方法を解説

副業の節税策は税理士にご相談ください

この記事では、サラリーマンの副業が赤字になった際の損益通算について解説しました。損益通算は節税できる制度ですので、適用できる方は積極的にご利用ください。

副業の節税策は、損益通算の他にも、繰越控除や青色申告特典など多岐に渡ります。しかし本業もあるなか、副業の節税策までリサーチするのは大変ですよね。

税理士は、個別の状況に合わせて最善の節税策を提案いたします。税務に割いていた時間をぜひ本業や副業にお使いください。

副業の損益通算についてのお困りごとやご相談は、ぜひ「小谷野税理士法人」までお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
税理士「今野 靖丈」

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