クレジットカードや売掛金の支払いが間に合わず、遅延損害金を請求された経験がある人は少なくないでしょう。本記事では、遅延損害金の仕訳や勘定科目について解説しています。また、遅延損害金に課される消費税の課税区分や再請求時に課される手数料の取り扱いについても併せて紹介します。遅延損害金の仕訳や勘定科目などの会計処理に関する知識を深めたい方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
目次
遅延損害金の基本知識
遅延損害金とは、契約に基づく支払期日までに支払いが行われなかった場合に請求される損害賠償金のことを指します。平たく言えば、元の請求額に加え、追加で支払うことになるお金のことです。基本的に遅延損害金は元本に対して一定の割合で請求されるため、遅延利息と呼ばれることもあります。
遅延損害金の利率には、約定利率と法定利率の2種類があります。
約定利率は契約を結んだ当事者同士で決める利率のことです。契約書に明記することで効力を発揮し、消費者契約法で最大14.6%までと定められています。この利率を超えると約定利率は無効になります。
法定利率は約定利率が無効となった場合や、契約書に明記されていない場合に用いられる利率です。民法により3%と定められています。
基本的に、遅延損害金は以下の式で算出可能です。
債務額×遅延損害金の利率×遅れた日数÷365日 |
例えば、クレジットカードの支払額が30万円で遅延損害金の利率が12%、遅れた日数が14日の場合は次のように計算します。
30万円×12%×14日÷365日=1,380円 |
分割払いの場合や契約内容によっては上記の計算方法以外で損害金を算出することもあります。自身の契約を一度見直しておきましょう。
遅延損害金と混同されがちなものとして延滞金が挙げられますが、この2つは支払う元となるお金の性質が異なります。原則として、遅延損害金は個人間の取引において支払の遅延が生じた際に課されるペナルティですが、延滞金は固定資産税などの公的なものの支払いが遅れた際に課されるペナルティです。
参考:消費者契約法(平成十二年法律第六十一号)|e-GOV法令検索
状況別の遅延損害金の勘定科目
遅延損害金の勘定科目は、基本的に支払利息として処理をします。これは支払いが遅延したことにより生じた利息であると考えられているためです。遅延損害金が生じる代表的なケースは以下の4点です。
- 売掛金の支払いが遅れた
- クレジットカードの支払いが遅れた
- 残高の不足により支払いが遅れた
- 賃料の支払いが遅れた
上記の4点のうち、売掛金とクレジットカードに関しては、支払利息のほかに雑損失でも処理できます。また、賃料の支払が遅れたことによる遅延損害金に関しては、支払利息ではなく支払家賃として処理することになります。賃料の支払いに関しては課税仕入れとみなされるケースもあり、より正確な処理が求められます。
再請求時の手数料の処理方法は?
一般的に支払いが遅れると再請求がなされますが、その際に再請求手数料や事務手数料が課されるケースがあります。この再請求時の手数料は、支払手数料という勘定科目を用いることになっています。遅延損害金に付随するため支払利息として処理しがちですが、勘定科目が異なるため注意しましょう。
遅延損害金の課税区分
遅延損害金には消費税が課せられない非課税取引と、消費税が課せられる課税取引があります。以下では、遅延損害金が生じる代表的なケースにおいて、非課税取引となる場合と課税取引になる場合について解説していきます。
非課税取引となるケース
大前提として、金銭の支払いが遅れたことにより生じた遅延損害金は、非課税取引に該当します。すでに解説しましたが、クレジットカードや売掛金の支払い遅延によって生じた遅延損害金は利息という取り扱いです。遅延損害金という名称ではありますが、実態は金銭を貸していることに対する利息だと考えられています。
消費税法では貸付金利には消費税を課さないと取り決められています。したがって、クレジットカードや売掛金の支払い遅延による遅延損害金は非課税取引となります。
課税取引となるケース
賃貸の支払いが遅延したことで生じた遅延損害金は、原則として課税取引に該当します。賃貸契約に違反すると、賃料の割増料金というルールが適用されます。賃料の支払遅れも賃貸契約の違反とみなされるため、この割増料金が適用され消費税の課税対象となります。
ただし、賃貸物件が住宅もしくは土地である場合は非課税取引となります。
遅延損害金の仕訳の仕方
遅延損害金を支払った際の仕訳は、支払方法によって異なります。代表的な遅延損害金の支払方法は銀行振込、現金、事業主の私的な金銭で支払うという方法です。以下では、それぞれの仕訳の仕方を紹介していきます。
支払方法 | 仕訳 | |||
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | |
銀行振込 | 支払利息 | 1,300円 | 普通預金 | 1,300円 |
現金 | 支払利息 | 1,300円 | 現金 | 1,300円 |
私的な金銭 | 支払利息 | 1,300円 | 事業主借 | 1,300円 |
個人事業主の場合、事業主の私的な金銭から支払利息を捻出するケースは少なくありません。この場合は、事業主借という勘定科目を用います。事業主借は事業に由来しない入金を処理する際の勘定科目です。個人事業主の方はこの機会に覚えておきましょう。
遅延損害金の仕訳について理解を深めよう
遅延損害金は、会計処理上は金銭を貸していることに対する利息という扱いになっています。そのため基本的には非課税取引となり、仕訳の際も支払利息という勘定科目を使用します。
ただし、オフィスなどの賃料の支払いが遅れた場合は、賃料の割増料金というルールが適用され課税取引となります。また、再請求時に追加で支払う手数料は支払手数料という勘定科目を用いるという点にも留意しておきましょう。
遅延損害金は言ってしまえばペナルティであり、できれば出したくない支出です。会計処理をする手間や時間もかかるため、なるべく遅延なく事業運営を行いたいと思うのが本音でしょう。それでも、取引上支払いに遅れが生じてしまう場面もあるかと思います。
そのような状況が度々発生する場合は、一度税理士や会計士などの専門家への相談も検討してみましょう。例えば税理士であれば、遅延損害金に関する仕訳のみならず、現在の財務状況の改善や資金調達の方法についてアドバイスをもらうことができます。