個人事業主として経費を計上する際、どこまでが経費として認められるのか悩むことがあるでしょう。すべての支出が経費として扱えるわけではなく、計上するためには一定のルールがあります。この記事では、経費として認められる支出とそうでない支出の違いや、経費計上時に注意すべきポイントについて詳しく解説します。経費関連でお悩みの個人事業主の方は最後までご覧ください。
目次
個人事業主はなんでも経費にできる?
結論から言うと、個人事業主はすべての支出を経費として計上できるわけではありません。経費とは、事業を運営するために必要な支出を指し、事業運営に直接関わらないものは認められないからです。
誤って私的な支出を経費として計上すると、後々税務調査などで問題になる可能性もあるため、どこまでが経費として認められるかの見極めが重要です。
経費にできる支出の具体例
まず、経費にできる支出の具体例をいくつか紹介します。
- 交通費
- 接待交際費
- 消耗品費
- 広告宣伝費
- 研修費
- 租税公課
- 家事按分が認められる経費
それぞれ詳しく見ていきましょう。
交通費
事業に関連して移動が必要な場合、その交通費は経費として計上できます。具体的には、電車やバスの料金、タクシー代、車でのガソリン代や高速料金などが該当します。
接待交際費
顧客や取引先とのビジネス関係を深めるための食事や贈り物にかかる費用は、接待交際費として経費に計上できる場合があります。ただし、プライベートな食事は対象外のため、会食時の参加者や目的を記録し、領収書をしっかり保管しておきましょう。
消耗品費
文房具やプリンターのインク、名刺など、業務で日常的に使用する消耗品も経費として認められます。これらは比較的小額の支出が多いため、頻繁に使用する消耗品についても、証拠となる領収書や購入記録を管理しておかなければなりません。
広告宣伝費
広告や宣伝活動にかかる費用も経費として計上できます。例えば、Webサイトの制作費、SNS広告の出稿費、チラシや名刺の印刷費などがこれに該当します。
研修費
スキルアップや業務に必要な知識を得るための研修やセミナー参加費用も経費として認められます。例えば、マーケティングや技術に関する講座への参加費が該当します。
租税公課
事業に関連する税金や手数料も経費として計上できます。固定資産税や自動車税、印紙税などがこれに該当します。
家事按分が認められる経費
自宅を事業用の作業スペースとして一部使用している場合、以下の支出については家事按分が認められる場合が多いです。
- 地代家賃
- 水道光熱費
- 通信費
「家事按分」とは、事業とプライベートの両方で利用しているものを、使用割合に応じて区別することを指し、事業で使用している部分を経費として計上できます。
例えば、自宅全体が100㎡だとして、そのうち20㎡を事務スペースとして使っている場合、地代家賃の20%を経費として計上できるでしょう。
按分計算の基準は自分で決められますが、税務調査時に証明を求められた場合に備え、合理的かつ一貫性のある基準の設定、領収書や利用状況など記録の保管を徹底しましょう。
経費にできない支出の具体例
経費にできない支出の具体例をいくつか紹介します。
- 税金や社会保険料
- 事業に関連のない部分の地代家賃・光熱費
- 日用品費
- プライベートの食事や旅行
- 個人の衣服代
- 趣味や娯楽の費用
税金や社会保険料
所得税や住民税、個人事業主の社会保険料などは、事業と直接関係のない個人の負担と見なされるため、経費計上は認められません。
事業に関連のない部分の地代家賃・光熱費
自宅の一部を事業用スペースとして利用している場合、家賃や光熱費をすべて経費として計上はできません。事業で使用している部分のみを家事按分して計算し経費計上しましょう。
日用品費
日常生活に使う洗剤や食器、トイレットペーパーなどの日用品費は、事業に直接関係しないため経費として認められない場合が多いです。たとえ自宅で事業をしている場合でも、私的な利用が主である支出については経費計上は難しいでしょう。
プライベートの食事や旅行
事業に関連する打ち合わせや出張とは異なり、家族や友人とのプライベートな食事や旅行にかかる費用は、事業とは無関係な支出のため経費として計上できません。
個人の衣服代
スーツやビジネス用の衣服であっても、私服として使用できるものは経費として認められないケースが多いです。経費として計上できるのは、業務専用の制服やユニフォームに限られるでしょう。
趣味や娯楽の費用
趣味や娯楽に使う支出(趣味の道具やレジャーにかかる費用など)は、事業とは無関係であるため経費として計上できません。
個人事業主が経費計上時に注意すべき5つのポイント
経費計上において以下5つのポイントに注意してください。
- 事業との関連性を明確にする
- 領収書・レシートの保管
- 家事按分を正確に計算する
- 経費の過大計上を避ける
- 法改正やルールの確認
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 事業との関連性を明確にする
経費を計上する際は、その支出が事業にどのように関係しているか明確にしましょう。曖昧な支出は税務調査時に否認されるリスクがあるため、使用目的や状況を記録しなければなりません。
領収書やメモに加え、支出が事業のどの部分に貢献したかを具体的に説明できるようにしておくと、税務調査にも対応しやすくなるでしょう。
2. 領収書・レシートの保管
経費として計上するためには、支出を証明するための領収書やレシートをしっかりと保管しておきましょう。
これらの証憑がない場合、経費として認められない可能性があります。また、税務調査では数年前の記録を確認される場合もあるため、領収書やレシートは法定期間に応じて一定期間保存(電子データ含め)しておいてください。
3. 家事按分を正確に計算する
自宅を事業用に使用している場合、前述の通り、家事按分の計算が必要です。地代家賃や水道光熱費、通信費などを経費に計上する際、事業用と私用部分を分けるための按分基準を合理的に設定しましょう。
使用面積や時間を基に計算し、計算根拠を記録しておくことが重要です。
4. 経費の過大計上を避ける
経費を過大に計上することは、税務署から不正申告とみなされ、ペナルティが科される可能性もあります。
事業に必要な範囲内での適正な金額を計上し、特に高額な支出はその用途や関連性を明確に示す証拠を残しておきましょう。適切な範囲を超えた経費申告は、後々大きな問題に発展するリスクがあるため、慎重な管理が求められます。
5. 法改正やルールの確認
税制は定期的に改正されるため、最新のルールを常に確認しておきましょう。古い情報のまま経費計上を続けていると、知らないうちに違反している場合もあり得ます。
定期的に税制改正や関連ルールを見直し、必要に応じた適切な対応が必要です。専門家のアドバイスを受けるのも有効でしょう。
経費でお悩みの個人事業主は専門家に相談
経費としてどこまで認められるのか、家事按分の計算など、経費計上に関する疑問は多くの個人事業主にとって悩みの種です。正確に経費を計上できているか不安がある場合や、税務上のリスクを回避したい方は、専門家へ相談してみましょう。
小谷野税理士法人は、個人事業主向けに税務相談や経費控除に関する専門的なアドバイスを提供しています。
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