個人事業主やフリーランスで仕事をしている場合、取引先とのやりとりを個人スマホや携帯電話で行う方も多いのではないでしょうか。このとき、スマホ料金を経費として計上しても良いのか気になる所だと思います。今回は、スマホや携帯電話の料金は経費にできるのか、その他法人契約にするメリットや各費用の仕訳方法についても解説します。
目次
スマホ・携帯料金は経費に計上できる
個人のスマホ料金は経費として計上できます。ですが、計上できるのは仕事として使用したと認められた分のみです。個人事業主やフリーランスの場合、プライベートとの併用での使用が考えられるため、全額を経費にするのは難しいでしょう。
個人事業主やフリーランスでスマホ料金を経費にしたい場合、仕事で使用しているのは何割程度なのかを「家事按分(かじあんぶん)」することで、費用の一部を経費として計上できます。
スマホ・携帯料金を経費にするには「家事按分」が重要
「家事按分(かじあんぶん)」とは、自宅兼仕事場にかかる家賃・水道光熱費などを、プライベートの生活分と事業分とに分けることです。個人事業主やフリーランスは自宅で仕事をする機会も多く、その場合家賃や光熱費も「事業を行う上で必要な支出」と認められ、経費として一部計上できます。
収入から経費を差し引いた所得には所得税などが課せられるため、適切な家事按分を行うことで確定申告の際に節税へとつなげられます。
家事按分の割合は明確に決められておらず、スペース(専有面積)・時間などから計上する方法が一般的です。1ヵ月の使用時間や日数で割合を算出すると良いでしょう。
家事按分の割合が不自然で税務署に判断・指摘された場合には、経費として認められない可能性もあるため注意が必要です。
スマホ・携帯を法人契約にするメリット
個人事業主やフリーランスが個人のスマホを経費として計上するには、家事按分が必要です。ですが、仕事とプライベートの時間比率を正確に分けるのは難しく、算出をするにも手間と時間がかかってしまいます。
そこでおすすめしたいのがスマホを法人契約に変更することです。法人契約に変更することで、経費を抑えられるなど様々なメリットが受けられます。ここではそのメリットについて解説します。
スマホ・携帯料金を全額経費にできる
法人契約にしてしまえば家事按分する必要はなく、全額経費として計上できる可能性があります。「法人契約なら個人事業主には利用できないのでは?」と思う方も多いと思いますが、必要書類を揃えれば個人事業主・フリーランスの方でも利用できる場合があります。
個人事業主・フリーランスの場合、以下の書類の中から1つは必ず準備しておきましょう。
- 青色申告書(確定申告書類)
- 屋号や代表者氏名が入った公共料金の領収書
- 開業届
さらに、運転免許証のような本人確認ができる書類も必要です。税務署に開業届を提出して青色申告を行っていれば、法人契約の審査が下りる可能性が高いと言われています。
通信費を削減できる
法人契約の場合、個人契約とは別で法人向けの料金プランがあります。データ容量を気にせず無制限で使えるプランがあったり、国内通話が24時間かけ放題になるプランがあったりなど、キャリアによって様々です。
契約の条件によっては割引が適用され、個人契約よりもお得になる場合があります。業務での使い方に合ったプランを選ぶことで、毎月の通信費を削減できるでしょう。
情報漏洩の防止につながる
個人契約のスマホで仕事に使用する重要なデータを持ち歩いている場合、操作を誤ってデータの紛失や情報漏洩といったリスクもあります。その場合、取引先からの信用を失いかねません。
法人契約の場合、法人向けに作られた専用機能のついた料金プランや機能・サービスが用意されています。迷惑メールやウイルス除去などのセキュリティ対策に対応したサービスもあるため、スマホでの作業が多い場合でも安心です。
スマホ・携帯料金の仕訳方法
スマホ・携帯電話に関する費用を経費として計上する場合、かかる費用ごとにそれぞれ仕訳する必要があります。ここではその仕訳方法について解説します。
スマホ・携帯電話の通信料金
通信料金は「通信費」と仕訳するのが一般的です。通信費にはスマホ料金だけに限らず、インターネット回線や切手などの郵便物、宅急便の料金なども含まれています。個人契約と法人契約では仕訳方法が違うため、それぞれ紹介します。
個人契約の場合
個人契約で4月のスマホ料金1万円を普通預金から支払った場合、まず事業で使用した比率を家事按分しましょう。今回は事業分が30%、プライベート分が70%と仮定して計算します。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
通信費 | 3,000円 | 普通預金 | 10,000円 | スマホ通信費 4月分 |
事業貸主 | 7,000円 |
摘要欄には該当月を記載しておくと、後から確認する際に便利です。
法人契約の場合
同じように、法人契約で4月分のスマホ料金を1万円で普通預金から支払った場合は以下の通りです。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
通信費 | 10,000円 | 普通預金 | 10,000円 | スマホ通信費 4月分 |
法人契約の場合は、仕訳方法もわかりやすく簡単です。
スマホ・携帯の本体料金
本体を従業員用に新しく買い足した、古かったスマホを買い替えたなどの場合の購入費も、経費として計上可能です。
最近のスマホは高額な種類も多く、購入費用によって仕訳方法が変わるため注意してください。10万円未満の購入費用は「消耗品費」、10万円以上の購入費用は「工具器具備品」として仕訳しましょう。
スマホ本体を10万円未満で購入した場合
10万円未満の場合の仕訳は「消耗品費」です。消耗品費とは、主に1年未満など短期間で消耗する電池、帳簿、文房具などの備品の計上に用います。法人契約で9万円の本体費用を現金で支払った場合は以下の通りです。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
消耗品費 | 90,000円 | 現金 | 90,000円 | スマホ本体代 |
もし複数台を一気にまとめて購入し、合計が10万円を超えた場合でも、1台あたりの購入金額が10万円未満の場合は「消耗品費」で計上できます。その場合、税務調査の時に指摘されるのを防ぐためにも、摘要欄に「スマホ◯台分」と記載しておきましょう。
スマホ本体を10万円以上で購入した場合
10万円以上の場合は「工具器具備品」です。購入金額が10万円以上の場合は「減価償却資産」の扱いとなり、仕訳の際に減価償却する必要が出てきます。
減価償却資産とは、事業などの業務のために用いられる建物、建物附属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具など、一般的に時の経過等によってその価値が減っていく資産をいいます。
引用:減価償却のあらまし – 確定申告書作成コーナー – 国税庁
10万円以上の高額な機械や設備を購入した時、一度に経費とせず、耐用年数に応じて計上します。耐用年数は物によって異なり、スマホ・携帯の場合は4年が一般的です。法人契約で16万円のスマホの本体費用を口座から支払った場合は以下の通りです。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
工具器具備品 | 16万円 | 普通預金 | 16万円 | スマホ本体代 |
そして決算の際には、本体費用16万円を耐用年数に応じた償却率で計算した金額を減価償却費として計上します。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
減価償却費 | 40,000円 | 工具器具備品 | 40,000円 | 当期償却額 |
スマホ本体の購入費用が10万円以上20万円未満の場合は「一括償却資産」として3年間で減価償却できます。4年で減価償却をするよりも短期間で減税効果が得られるため、費用が20万円未満の場合は活用するのがおすすめです。
参考:一括償却資産とは – 確定申告書作成コーナー – 国税庁
スマホ・携帯の周辺機器(アクセサリ)
本体の費用だけでなく、スマホに関係する周辺機器(アクセサリ)も経費として計上可能です。モバイルバッテリーや充電器、スマホカバーなど、計上する場合は「消耗品費」として仕訳しましょう。
法人契約のスマホに使用するスマホカバー8,000円を現金で支払った場合は以下の通りです。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
消耗品費 | 8,000円 | 現金 | 8,000円 | スマホカバー代 |
スマホの周辺機器も現在は様々な種類があるため、経費にできるかわからない場合は一度税理士に相談しましょう。
スマホ・携帯の修理費
電源が入らない、画面が割れたなどの理由でスマホが故障した場合は、修理費を経費として計上可能です。一般的には「修繕費」として仕訳されますが、「通信費」や「消耗品費」とするケースもあります。
画面が割れてしまった法人契約のスマホを修理に出し、9,000円を現金で支払った場合は以下の通りです。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
修繕費 | 9,000円 | 現金 | 9,000円 | スマホ修理代 |
「修繕費」「通信費」「消耗品費」のどれを使用しても問題ないと説明しましたが、一度修理費を仕訳している場合は毎年同じ科目で統一しましょう。
経費の計上方法やその他の節税対策は税理士に相談も
個人事業主やフリーランスの方が個人で使用しているスマホ・携帯料金は経費として計上できます。経費の計上を行うために、家事按分の計算方法や仕訳などをしっかり把握しておきましょう。
家事按分の計算が面倒と感じる場合は、法人契約を利用するのがおすすめです。法人契約にすると、スマホに関わる費用が経費として計上できるだけでなく、その他にも様々なメリットがあります。
「何を経費にできるのか?」また「どの程度計上するのが適切か?」という疑問や「家事按分の計算方法が難しい」などのお悩みがあれば、一度税理士に相談してみましょう。
節税対策のアドバイスや確定申告の代行など、事業を円滑にするためのサポートをしてもらえます。