確定申告で借入金を経費にできるのか、よくわからないと感じている方もいるでしょう。結論、設備投資など事業に関する借入金の支払利息に関しては、経費として計上できます。今回は、確定申告で借入金を経費にする方法や具体的なケース、仕訳と処理方法、注意点などを解説します。最後まで読めば、確定申告での借入金の仕訳方法を理解できるでしょう。
目次
確定申告で借入金を経費にできるのかは状況による
以下の通り、確定申告では借入金の利息を経費にできるケースとできないケースに分けられます。
- 事業目的の設備投資などは経費にできる
- 個人的な支出は経費にできない
ここから詳しく見ていきましょう。
事業目的の設備投資などは経費にできる
事業目的の設備投資など、確定申告で借入金を経費にするには、事業に関連するものであるのがポイントです。
- 総収入金額に対応する原価と、得るためにかかった費用
- その年に発生した販売費や一般管理費、その他業務上の費用
金融機関からお金を借りるとき、帳簿上の売上にはなりません。返済するときも同様で、経費として計上できないのが特徴です。
一方で、事業用の設備投資目的の借入金の利息に関しては、事業に関連する費用とみなされます。慣れていない方にとって間違いやすいポイントで、明確に分けて記帳する点に注意が必要です。
プライベートな支出は経費にできない
友人との食事や旅行など、事業に関係のない借入金の利息は経費の対象外です。前述の通り、事業目的の借入金の利子などに限り、経費として記帳できると定められているためです。
以下の通り、民間で利用できるローンは複数あるものの、経費にするものは明確にするとよいでしょう。
- 住宅ローン
- 自動車ローン
- リフォームローン
- 教育ローン
- フリーローン
- カードローン
住宅や自動車など、個人的な支出と事業の支出を兼用している場合、事業で利用している部分のみが対象です。事業で利用している割合を明確にしたうえで、利息を経費として計上するとよいでしょう。
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確定申告で借入金を経費にできるケース3つ
経費として借入金の利息を記帳できるケースとして、具体的には以下の3つがあげられます。
- 個人事業主である
- 不動産収入を得るための借入金がある
- 本業以外に20万円以上の所得がある
それぞれ詳しく解説します。
個人事業主である
個人事業主の場合、確定申告で借入金に関連する支払いを経費として扱えるケースがあります。具体的には、事業による収入を得るために必要な、借入金により取得した設備投資が該当します。借入金そのものが経費として認められない理由は将来的に金融機関へ返還するものだからです。
借入金によって設備投資した場合、減価償却によって毎年少しずつ経費として計上するのが特徴です。種類や目的に応じて法定耐用年数が決められており、適切な対応が求められます。
借入金の金額が増えると、返済のためのまとまった資金が必要で、黒字でも資金ショートするリスクがあります。事業計画と照らし合わせ、慎重に借入を利用するのがポイントです。
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不動産収入を得るための借入金がある
不動産収入を得るための借入をしている場合、事業資金として認められるため、金融機関への手数料などを経費として扱えます。
前述の通り、元本に関しては経費として認めてもらえず、別に計上しなければなりません。不動産収入において経費となるものは、具体的に以下が挙げられます。
- 保険料
- 管理委託料
- 管理費
- 入居者募集の費用
- 修繕費
- 税金
- 専門家への報酬
- 通信費
- 旅費交通費
- セミナーなど勉強代
- 交際費
- 自動車関連費など
不動産収入を得ている場合でも、借入金の返済額が大きすぎると赤字になる可能性があります。自己資本率を高めたり返済期間に余裕を持ったりするなど、対策が求められます。
本業以外に20万円超の所得がある
本業以外で1年間に20万円超の所得があるビジネスパーソンの場合、借入金の利子などを経費にできます。収入から必要経費を差し引いた所得が20万円を超えると、確定申告する必要があるためです。
副業の場合、一般的には雑所得扱いとなるのが特徴で、具体的には以下の支出も経費として計上できます。
- PCやWi-Fi、スマホなどの通信費
- 取材やミーティングなどで発生した交通費
- ペンやコピー用紙など事務用品の購入費など
本業以外の収入が以下のいずれかに該当する場合、青色申告できます。
- 事業所得
- 不動産所得
- 山林所得
後述する通り、青色申告は手続きが必要となるものの、節税効果が期待できます。
参考:「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」国税庁
確定申告での借入金の仕訳と処理方法
借入金の仕訳と処理方法は、以下の通り状況によって異なります。
- 金融機関から借入するとき
- 金融機関に返済するとき
ここから具体的に解説します。
金融機関から借入するとき
金融機関から借入するとき、主に以下の勘定科目が適用されます。
- 普通預金:自由にお金の出し入れをできる預金
- 前払費用:まだ提供されていないサービスに対して支払った費用
- 租税公課:税金と公共団体に支払う会費や罰金などを合わせたもの
例えば、以下の通り金融機関から400万円借り入れするケースで考えてみましょう。
- 保証料40,000円:前払費用として処理
- 印紙代2,000円:租税公課として処理
借入金と保証料・印紙代を仕訳すると、以下の通りです。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
普通預金 | 395万8,000円 | (長期or短期)借入金 | 400万円 | 事業用資金借入 |
前払費用 | 40,000円 | 保証料 | ||
租税公課 | 2,000円 | 印紙代 |
【税理士監修】個人事業主の借入はいくらまで?借入先やタイミングなども解説
金融機関に返済するとき
金融機関に借入金を返済するとき、原則的に利息の支払いが発生します。勘定科目において、利息は「支払利息」で記帳するのがポイントです。
例えば、金融機関から400万円借入し、16万円の利息を支払うときの記帳方法は以下の通りです。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
(長期or短期)借入金 | 400万円 | 普通預金 | 416万円 | 借入金返済 |
支払利息 | 16万円 | 利息 |
以下の通り、貸借対照表の翌日から起算した返済期限に応じて、仕訳方法は異なるのが特徴です。
- 返済期限1年超:長期借入金
- 返済期限1年以内:短期借入金
決算時に返済期限1年以内の長期借入金に関しては、短期借入金として記帳します。支払利息としてあげられるものは、具体的に以下が考えられます。
- 融資を受けるときに支払う信用保証料
- 手形更改時に支払う利息
- ファクタリングを利用するときの手数料
借入により決算のタイミングで支払利息を前払いしている場合、「前払費用」として仕訳することも考えられます。
確定申告で借入金を経費にするときの注意点
借入金を経費にするうえでは、以下の点に注意が必要です。
- 青色申告と白色申告で手続きが異なる
- 自宅と事務所を兼ねている場合は家事按分する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
青色申告と白色申告で手続きが異なる
確定申告で借入金を経費にする場合、以下の通り申告方法によって、必要な手続きが異なる点を押さえておくとよいでしょう。
確定申告の方法 | 概要 |
青色申告 |
|
白色申告 |
|
手間や労力がかかるものの、長い目で見ると青色申告の方が事業をするうえで効果的だといえます。
確定申告の手続きに関しては、クラウド会計ソフトや税理士の力を頼るのが理想的です。
参考:「No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度」国税庁
【税理士監修】確定申告「青色申告」を税理士に依頼した場合の費用はいくら?
自宅と事務所を兼ねている場合は家事按分する
借入金の利息は経費にできるものの、自宅と事業所を兼ねている場合、家事按分によって分けて計上する必要があります。家事按分とは、プライベートと事業を兼ねている出費のうち、事業関連の出費を経費にできる仕組みのことです。
青色申告の場合、出費の割合に関係なく、事業関連の支出に関しては適用できます。
一方で、白色申告を選択する場合、以下の条件を満たす必要があります。
- 所得を得るために必要な費用の割合が全体の50%を超えている
- 全体の50%以下の場合、事業のために使ったことが明確な費用である
家事按分の適用において、白色申告よりも青色申告の方が有利になる可能性は高いです。
例えば、家賃20万円・120㎡の物件において、事業所の部分が60㎡の場合は按分率が50%です。結果、経費にできる金額は10万円と算出できます。
仕訳や記帳など確定申告に関する相談は税理士へ
確定申告で借入金を経費にできるケースや、注意点などを解説してきました。借入金は経費にできるものではなく、事業に関する借入の支払利息に限られる点に注意が必要です。
個々の状況によって、確定申告で借入金を経費にできるのかは決まります。事業を始めた方や副業で20万円超の所得がある方の中には、複雑に感じたり面倒に感じたりするケースもあるでしょう。
借入金の仕訳など、確定申告全般の相談は税理士に任せるのが一つの方法です。
小谷野税理士法人では、豊富な経験と専門知識を持つスタッフが、あなたの確定申告を丁寧にサポートしますので、お気軽にご相談ください。