青色申告をするには、事業をスタート日から2ヵ月以内に税務署へ申請書を提出しなければなりません。また、開業届は事業をスタートした後に税務署へ提出するルールがあります。つまり記事タイトルのように「開業届を出してから2ヵ月過ぎた」ケースは、事業の開始からも2ヵ月経っているので、原則として開業した年の青色申告はできません。この記事では、開業から2ヵ月過ぎてても青色申告が承認される例外を解説します。
目次
開業日から2ヵ月過ぎたら開業した年の青色申告はできない
青色申告のためには、原則として開業日から2ヵ月以内に「青色申告承認申請書」を税務署へ提出しなければいけません。2ヵ月過ぎて提出したケースでは、提出日が1月1日〜3月15日なら提出した年以降、3月15日〜12月31日なら提出した翌年以降の青色申告ができます。
国税庁が定義する開業日は、「開業届の提出日」でも「自分が決めた日付」でもなく「事業を始めた日」です。また、開業届は事業の開始前には提出できません。
よって、この記事のタイトル「開業届を出してから2ヵ月過ぎたけど青色申告できる?」の答えは「開業した年はできない」です。
ただし例外があります。それは1月1日〜1月15日の期間に事業を始めている場合です。この場合、青色申告の申請書の提出期限は一律で3月15日となります。
よって、1月1日に事業をスタートした人が、2ヵ月過ぎた3月3日に申請書を出しても、その年から青色申告が可能です。
まとめると、提出期限は以下の通りです。
開業日(事業の開始日) | 提出期限 |
1月16日〜12月31日 | 開業日から2ヵ月以内 |
1月1日〜1月15日 | 3月15日 |
前年以前 |
※提出期限が土・日・祝日などの場合、翌営業日が期限
開業日を偽ると青色申告が取消されることも
開業から2ヵ月過ぎたけど青色申告したい場合、開業日を実際より後の日付にして開業届を出すよう勧める情報が散見されます。しかしこれは不正行為です。虚偽の内容での申請は絶対におやめください。
虚偽申請が発覚した場合、青色申告にふさわしくないと税務署に判断され、取消しの対象となります。さらにその後数年間は、青色申告の承認が受けられなくなる可能性も。
虚偽の発覚は簡単です。開業届に書いた開業日よりも前に収入や事業実態があれば分かります。とはいえ収入や事業実態を隠蔽して確定申告すれば、過少申告や無申告としてペナルティが課されます。
虚偽の申請は、結果的に余分な税負担を招きます。開業から2ヵ月過ぎたら、その年の青色申告は潔く諦めるのが最善です。申請書を出していないと気付いたら後回しにせず直ちに提出し、翌年以降の青色申告を目指しましょう。
参考:個人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)|国税庁
青色申告はどのような時に取り消される?条件やデメリットについて解説
開業と青色申告についてよくある質問
最後に、個人事業主の開業に関する質問7点に答えます。
開業届とは?提出期限はいつ?
開業届とは、事業を新しく始めた後に税務署へ出す書類です。事業をスタートした日から1ヵ月以内が期限ですが、過ぎても罰則はありません。
また、事務所の移転や増設、または廃業時にも提出が必要です。
【税理士監修】開業届とは?書き方や必要書類、提出方法までの完全ガイド
開業時に開業届以外の手続きはある?
開業時、開業届以外に「個人事業開始申告書」を提出する必要があります。書類の正式な名称や提出期限は都道府県によって異なりますが、期限を過ぎても罰則はありません。
開業届は所得税(国税)に関する書類で、税務署に提出します。一方、個人事業開始申告書は個人事業税(地方税)についての書類です。
参考:事業を始めたとき・廃止したとき|東京都主税局
参考:個人の事業開始等の申告[開業、変更、廃止]|大阪府
【税理士監修】個人事業開始申告書とは?手続きの書類と提出方法を紹介!出していないとどうなる?
そもそも青色申告とは?どんなメリットがあるの?
確定申告の方式の一種であり、他には白色申告があります。青色申告は手間が掛かりますが節税でき、白色申告は手間は掛かりませんが青色申告に比べて節税できません。
主なメリットは以下の通りです。
- 最大65万円の「青色申告特別控除」がある
- 赤字を最長で3年間繰り越せる
- 配偶者などに支払う給与を、経費として計上できる
- 30万円未満で購入した減価償却資産は、全額を購入した年の経費にできる
青色と白色どちらにすべきか迷う方は、節税効果の高い青色申告がおすすめです。
個人事業主の青色申告とは?いくらから必要?メリット・デメリットや帳簿の書き方などについて解説!
開業日前の所得にも青色申告の恩恵は受けられる?
開業日前の所得が雑所得だった場合、青色申告の恩恵は受けられません。事業所得だった場合、申請書を出した日によって恩恵が受けられるか否かが分かります。
以下、具体的な例を2パターン解説します。
ケース①:開業日前に、知人の仕事を単発で手伝って所得を得た場合
開業日前に知人の仕事を単発で手伝って得た所得は、青色申告の恩恵を受けられません。なぜなら、単発的な収入は事業所得ではなく雑所得とみなされるためです。
青色申告できる所得は、事業所得・不動産所得・山林所得のいずれかに限られます。雑所得や一時所得は対象になりません。
事業所得か雑所得かの判断は、基本的に以下の通りです。
事業所得とみなされる可能性が高い | 活動が単発的ではなく、継続的かつ反復的に行われている |
雑所得とみなされる可能性が高い |
|
最終的には税務署の判断となります。不安な方は確定申告の前に税務署や税理士へ相談しましょう。
ケース②:開業日前に、練習で仕事を引き受け事業所得を得た場合
開業日前に、練習で仕事を引き受け事業所得を得た場合、そもそも開業日の修正を求められる可能性があります。国税庁が定義する開業日は、書類に記載された日付ではなく、実際に事業をスタートした日だからです。
開業日前の練習で発生した所得にも青色申告の恩恵は受けられるか否かは次の通りです。
恩恵が受けられる | 練習スタート日から2ヵ月以内に申請書を出している |
恩恵が受けられない | 練習スタート日から2ヵ月過ぎてから申請書を出している |
例えば、4月1日から練習としての事業実態(事業所得)がある個人事業主がいたとします。自分の中での本格的な開業日は7月1日で、開業届と同時に申請書を7月10日に提出しました。
しかし4月1日から具体的な売上が発生しているため、税務署は「本当の開業日は4月1日」とみなしました。この場合、開業から2ヵ月過ぎてから申請書を出したと判断されます。
この例では、練習期間の事業所得だけではなく、この年1年間の事業所得に対しても青色申告できません。
一方、練習で得た所得がごくわずかである場合は雑所得とみなされるケースもあります。この場合は開業日以降の事業所得に対し青色申告できます。
最終的には税務署の判断となりますので、不安な方は税務署へ相談しましょう。
開業届の提出日を過ぎるとペナルティはある?
提出日を過ぎてしまったとしても、特に罰則などはありません。気付いた時点で所定の書類を提出しましょう。
開業日を決める際に縁起を重視しても良い?
開業日を決めるときにはゲン担ぎも兼ねて、一粒万倍日など縁起の良い日を選択するのも良いでしょう。
ただし、事業開始前や開始後を開業日とすることはできないのでご注意ください。
開業日は変更できる?
開業届は再提出も認められるため、変更も理論上は可能です。正当な理由があれば、書類を再び提出し開業費を変更しても良いでしょう。
ただし、青色申告をするために開業日を修正しても認められる可能性は低いですし、何度も開業日を変更することは税務署に目を付けられるなどのリスクもあるのでやめましょう。
開業届の手続きや確定申告は専門家に相談しよう
開業届を出してから2ヵ月過ぎたら、一般的には開業した年は青色申告できません。書類を出していないと気付いた時点で直ちに提出し、翌年以降の青色申告ができるよう努めましょう。
開業の手続きや青色申告による確定申告は複雑で、ミスが発生しやすい部分です。間違った申告による余分な出費を避けるため、税理士など専門家への相談をご検討ください。専門家のアドバイスがあれば、重要書類の提出期限を逃すこともありません。
事業に集中するために、複雑な手続きと申告は専門家のサポートを受けましょう。