現在、投資家に限らず個人事業主やサラリーマンも株式投資で損失が出た場合、損益通算をすることで他の所得との相殺ができます。結果として節税にもつながるため、個人投資家や個人事業主の方はぜひ参考にしてみてください。
目次
株で損した人は確定申告で損益通算すべき?
確定申告で損益通算をすることで、同一年度内で発生した利益と損失を相殺できます。損失が出た場合、利益から差し引けるため、その分税負担を軽減できるのです。
本来であれば株式投資で損失が出た場合、原則確定申告は不要ですが、最大3年間にわたって損失を繰り越しできるため、次年度以降の利益が発生した場合に節税効果を期待できます。
株で損したときの損益通算の方法
損益通算の制度を活用することで、損失を所得と相殺し、税負担を軽減できます。ここでは、確定申告による損益通算の方法を確認しましょう。
複数の口座で「損益通算」できる
多くの個人投資家は、複数の証券会社で取引を行っているでしょう。損益通算は複数の口座間でも適用可能です。
各証券会社から年間取引報告書を受け取り、そのデータをもとに確定申告を行います。具体的な手順は以下の通りです。
- 各証券会社から年間取引報告書を受け取る(各社のフォーマットは異なる場合がある)
- 各報告書を合計して一年間の総損益額を計算する
- その計算結果をもとに確定申告書を作成し、税務署に提出する
例えば、A証券会社では70万円の利益がでたがB証券会社では20万円の損失がでた場合、確定申告をすれば損益通算ができるため、50万円が課税対象となります。
確定申告をしなかった場合、損益通算ができないためA証券では70万円に対して税金が計算されます。
株の損失を3年間繰り越せる「繰越控除」
繰越控除とは、その年の利益が損失をカバーしきれなかった場合、最大で3年間損失を繰り越せる制度です。
たとえば、2022年に100万円の損失が生じ、2023年に50万円の利益が出た場合、2023年の確定申告時に2022年の100万円の損失を繰り越し、50万円の利益と相殺できます。結果として、2023年度の課税対象所得は0円となるため、税負担が軽減されるのです。
もし確定申告をせずに繰越控除を受けなかった場合、50万円の利益に対して税金がかかります。
このように、繰越控除を正しく活用することで、株式投資における損失を最大限に活かすことができます。ただし、繰越控除を受けるためには毎年の確定申告が必須です。
株式投資で確定申告が必要なケース
株式投資を行っていると、年間を通じて利益や損失が発生します。確定申告が必要となるのは主に以下のケースです。
- 株式投資による譲渡益と配当金で年間20万円超の利益がある(源泉徴収ありの特定口座以外)
- 特定口座(源泉徴収あり)以外で取引を行った
- 過去の損失を繰り越して税額を控除したい
株式投資で確定申告が不要なケース
以下のケースでは、原則確定申告は不要です。
- 特定口座(源泉徴収あり)を利用している
- 年間の譲渡益と配当金の合計が20万円以下
ただし、住民税に関しては利益が20万円以下でも申告する必要があります。
株式投資にはどんな税金がかかる?
株式投資では、収益に対してさまざまな税金が発生します。利益を大きく左右する要因となるため、しっかり理解しておきましょう。
「譲渡益」にかかる税と税率
株式の譲渡益(売却益)とは、株式を売却することで得られる利益です。現在の税率は、所得税15%、住民税5%の合計20%が基本です。さらに、復興特別所得税が2.1%加算されるため、実際の税率は20.315%になります。
例えば、株式を売却して得られた譲渡益が100万円の場合、以下のように計算します。
所得税(15%):100万円×0.15=15万円 住民税(5%):100万円×0.05=5万円 復興特別所得税(2.1%):15万円×0.021=3,150円 |
したがって、譲渡益100万円に対する総税額は20万3,100円(百円未満切り捨て)となります。
配当金等にかかる税と税率
配当金とは、企業から株主に利益の一部を分配することで得られた利益を指します。申告分離課税の場合、配当金の税率は、譲渡益と同じく20.315%です。
配当金が10万円の場合、以下のように計算します。
所得税(15%):10万円×0.15=15,000円 住民税(5%):10万円×0.05=5,000円 復興特別所得税(2.1%):15,000円×0.021=315円 |
この結果、10万円の配当金に対する総税額は20,300円(百円未満切り捨て)となります。配当控除を利用すれば、一定の条件を満たすことで税負担を軽減できるでしょう。
株の配当金の確定申告は必要?
配当金は受け取る際に源泉徴収されているため、原則として確定申告は必要ありません。しかし、あえて申告して「申告分離課税」か「総合課税」を選択することで、最終的な手取り額が異なる場合があります。
損益通算をする場合は申告分離課税を選択する必要があります。
総合課税は他の所得と合算されるため、所得が一定水準以下の人には有利となりますが、給与所得や事業所得が高い場合には税率が上がる可能性があります。
ただし、総合課税を選択すると「配当控除」が受けられるため、配当金以外の所得と合わせて確定申告をするか判断しましょう。
株式投資の確定申告のやり方
ここまでは、株式投資において確定申告が必要となるケースをご紹介してきました。
ここからは、確定申告のやり方について解説します。
確定申告には3つの方法があります。状況に応じて、正確かつスピーディーにできる方法を選択しましょう。
確定申告ソフト・確定申告アプリを使う
確定申告ソフトやアプリは、導入のしやすさ・使いやすさが特徴です。
利益や損失・税額を自動計算してくれるため計算ミスも防げます。また、株式売買で発生した損失を他の利益と相殺する処理も自動化されています。
電子申告(e-Tax)にも対応しているため、紙の書類を郵送する手間が省け、スマートフォンやパソコンから手早く申告を完了できます。
確定申告書等作成コーナーを使う
国税庁の確定申告書等作成コーナーを利用することで、無料で申告書を作成できます。費用をかけずに確定申告を行いたい場合に最適な方法です。
利用手順は以下の通りです。
- 事前準備:株式取引の損益計算書や源泉徴収票など必要な資料をすべて揃える
- ログイン:確定申告書等作成コーナーにアクセスし、ログインする。ID・パスワード方式やマイナンバーカード方式などから選択可能
- 入力画面:ガイドに従って必要事項を入力する。とくに投資損益は正確に入力し、損益通算の箇所も忘れずに行う
- 確認・提出:入力内容を確認し、電子申告(e-Tax)で送信する。書面をプリントアウトし、郵送することも可能
詳しい手順は公式サイトでご確認ください。
手書きで行う
手書きで確定申告を行う場合、正確さが求められます。損益通算の項目はとくに注意が必要です。
具体的な手順は以下の通りです。
まず、株式取引の詳細や源泉徴収票、その他の証明書類を準備します。次に、所轄の税務署や市区町村役場で申告書を入手します。Webサイトからのダウンロードも可能です。
申告書に記入する際は、損益通算の箇所を正確に記入し、他の項目も漏れなく記載します。記入完了後は再度すべての記入欄を確認し、誤りがないかチェックします。計算ミスにはとくに注意が必要です。
最後に、必要書類とともに税務署に郵送するか窓口に提出します。手書きで申告を行った場合でも、コピーを取るなどして控えは必ず保存しておきましょう。
関連記事:【税理士監修】確定申告のやり方ガイド!いつからいつまでの収入?郵送のケースや必要書類・マイナンバーカードについて
株の確定申告は利益がいくらから必要?
すでにお伝えした通り、株式投資では利益が20万円を超えると原則として確定申告が必要となります。
しかし「特定口座(源泉徴収あり)」の場合は、証券会社が所得税・住民税を源泉徴収するため確定申告は不要です。
また、給与所得がなく株式投資の利益が48万円以下の場合は、基礎控除を差し引くと所得が0円になるため、確定申告をする必要はありません。
株の確定申告をすると会社にばれる?
確定申告をしても、原則的には会社には知られませんが注意が必要です。
例えば、確定申告の際に住民税の納付方法を「普通徴収」にすることで、給与からの天引き(特別徴収)と分けられます。
給与所得にかかる住民税のみが特別徴収されるため、株式投資などによる所得を会社に知られたくない場合に有効です。
運用損益を把握して適切に税負担を軽減しましょう
損益通算は利益と損失を相殺するだけでなく、繰越控除をすれば最大で3年間にわたって損失を繰り越せます。
また、損益通算以外にも確定申告をすることで税負担を軽減できるケースはさまざまあります。
必要に応じて、計算方法や必要書類の準備などの具体的なステップを理解し、適切な確定申告を行うことが大切です。