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会社設立の基礎知識

独立企業間価格とは?その概要や算出方法について解説

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海外取引のイメージ

独立企業間価格とは、海外にあるグループ会社などとの取引に用いられるみなし価格のことです。移転価格税制では、グループ会社間における優遇価格ではなく、独立した第三者との市場価格を用いて課税を行います。本記事では、独立企業間価格の概要や移転価格税制の目的、算出方法などについて解説します。国外関連会社との取引を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

独立企業間価格とは

独立企業間価格(:Arm’s Length Price)とは、多国籍企業が国外にあるグループ会社や関連会社と取引を行う際に、グループ会社以外の市場価格と一致するように調整した価格のことです。

海外のグループ会社や関連会社との取引では、優遇価格が用いられるケースがあります。グループ会社以外の第三者(独立した第三者)との取引とは異なる価格です。

そうすることによって、市場価格と優遇価格の差額を海外のグループ会社などに移転させ、日本での課税額を減らすことが目的です。

OECD移転価格ガイドライン

出典:移転価格税制の概要|財務省

それを防ぐために、独立した第三者との取引に用いられる適正価格を算出し、調整する必要があるのです。

この適正価格のことを、独立企業間価格と言います。

参考:第4章 独立企業間価格の算定等における留意点|国税庁

参考:移転価格税制の概要|財務省

移転価格税制とは

前段で解説したとおり、独立企業間価格とは、独立した第三者との取引で用いられる適正価格のことです。

国外関連会社との取引において、優遇価格を設定することで日本の課税額を減らそうとするケースがあります。

そのため、適正な独立企業間価格を算定し、利益の海外移転を防ぐことが目的です。

移転価格税制では、「実際の取引価格(優遇価格)」ではなく、「独立企業間価格」で行われたとみなして課税額を計算します。

参考:移転価格税制の概要|財務省

独立企業間価格の算定方法

独立企業間価格の算定方法

日本における独立企業間価格の算定方法は、大きく分けて6つあります。

基本三法

独立価格比準法(CUP法)

再販売価格基準法(RP法)

原価基準法(CP法)

その他の方法

取引単位営業利益法(TNMM法)

利益分割法(PS法)

ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法(DCF法)

独立企業間価格を算定する方法に優先順位はありません。

以前は基本三法を優先する方式が採用されていましたが、2011年(平成23年)度の税制改正によってなくなりました。

そのため、現在はこの6つの算定方法から最も適切なものを採用する「ベストメソッド方式」に変更になっています。

参考:第4章 独立企業間価格の算定等における留意点|国税庁

参考:最適方法ルール下における利益分割法の適用について|国税庁

基本三法

価格計算

基本三法とは、独立価格比準法、再販売価格基準法、原価基準法のことです。業界によって適した算定方法が異なるので、ぜひ各算定法の概要を押さえておきましょう。

独立価格比準法(CUP法)

独立価格比準法(CUP:Comparable Uncontrolled Price Method)とは、同種の製品やサービスを提供する第三者企業の取引価格と、対象となるグループ会社の取引価格を直接比較する算定方法です。

市場においてすでに取引が行われている製品やサービスと比較するため、客観性が高く、根拠としても示しやすいことがメリットです。

しかし、比較対象は「同種」の製品などに限られるため、選び出すことが難しいというデメリットがあります。

同種は類似よりも同一性が高いことが求められるためです。

そのため、一般的には実際に採用されるケースはほとんどありません。

参考:移転価格税制の適用に当たっての参考事例集|国税庁

再販売価格基準法(RP法)

再販売価格基準法(RP:Resale Price Method)とは、国外関連会社への再販売価格を基準にした算定方法です。

再販売価格から通常考えられる利益を差し引いた金額にすることが一般的です。比較対象は独立価格比準法ほど厳密ではなく、類似していれば問題ありません。

再販売価格を基準とするため、主に商社に適しています。

参考:移転価格税制の適用に当たっての参考事例集|国税庁

原価基準法(CP法)

原価基準法(CP:Cost Plus Method)とは、製造・加工した製品やサービスを国外関連会社へ販売する場合に用いる算定方法です。

製造原価に「適正な利益」を加算し、独立企業間価格を設定します。

この適正な利益を計算する際には、類似している比較対象会社を選び出す必要があります。原価基準法は、主に製造業やサービス業で用いられています。

参考:移転価格税制の適用に当たっての参考事例集|国税庁

それ以外の方法

基本三法以外にも、3つの算定方法があります。前述の通り、これらの算定方法には優先順位が定められていません。最も適切な方法を選んで算定します。

取引単位営業利益法(TNMM法)

取引単位営業利益法(TNMM:Transactional Net Margin Method)とは、国外関連取引による営業利益の水準を、自社の業態に似た第三者企業の利益率と比較することで、間接的に独立企業間価格を算定する方法です。

取引単位営業利益法に用いられる利益指標は、売上高営業利益率、総費用営業利益率、営業費用売上総利益率の3つです。他の算定方法に比べて比較対象との差が寛容なため、最も多く使われています。

参考:移転価格税制の適用に当たっての参考事例集|国税庁

参考:令和3事務年度・相互協議処理事案の内訳|国税庁

利益分割法(PS法)

利益分割法(PS:Profit Split Method)とは、各関連会社の利益を合算し、貢献した度合い(寄与度)によって按分する算定方法です。

利益分割法には3種類あります。

【比較利益分割法】

国外関連取引と類似した条件のもとで行われた第三者企業間の取引を参考にして、利益を分割する算定方法です。

しかし、比較対象にできる取引を見つけることが難しいため、実務ではほとんど用いられていません。

【寄与度利益分割法】

各関連会社の利益を合算し、寄与度を測るファクターに基づいて分割する算定方法です。

企業内部の情報のみで寄与度が決まってしまうため、客観性に欠けやすいというデメリットがあります。

【残余利益分割法】

親会社と子会社の双方が重要な無形資産を有する場合に用いられる算定方法です。合算営業利益を二段階に分けて分割します。

まずは、製造活動や販売活動などによる利益を各関連会社に配分します。次に、残った利益(残余利益)を寄与度に応じて分割します。

最後に、この2つの合計額によって、適正な利益配分を算定します。

参考:第4款 利益分割法の適用|国税庁

参考:移転価格税制の適用に当たっての参考事例集|国税庁

ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法(DCF法)

ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法(DCF:Discounted Cash Flow)とは、会社が将来的に獲得すると予測されるキャッシュフローを、現在価値に割り引いて算定することです。

参考:移転価格税制の適用に当たっての参考事例集|国税庁

専門家への依頼もおすすめ

今回の記事では、独立企業間価格(ALP)の概要や目的、算定方法などについて解説しました。

独立企業間価格の算定方法は全部で6つあり、適した業界や企業などがそれぞれ異なります。算定方法によって価格が異なってしまうため、選択は慎重に行いましょう。

また、比較対象の企業や製品などが不適当な場合は、税務局からの調査や指摘などが入ります。そのため、独立企業間価格を算定する際は、プロの税理士に依頼することをおすすめします。

小谷野税理士法人でも、独立企業間価格のご依頼が可能です。まずは一度気軽にご相談してみてはいかがでしょうか。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。

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今野 靖丈

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