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会社設立の基礎知識

退職金にも税金がかかる?節税効果の高い受け取り方

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源泉控除対象配偶者のイメージ

もうじき定年を迎える人が気になる問題は、退職金にかかる税金ではないでしょうか?退職金にはいくつかの受け取り方があり、それぞれメリット・デメリットがあります。例えば、一時金として一括で受け取る場合と、年金形式で分割して受け取る場合には、税額に違いが出てきます。ここでは、どの受け取り方が有利になるのか、詳しく解説していきましょう。

退職金の受け取り方は3パターン〜それぞれの節税効果

会社によって決められている場合もありますが、退職金の受け取り方には下記の3つの方法があります。

  1. 一括で受け取る「一時金」
  2. 分割で受け取る「年金」
  3. 2つを組み合わせた「一時金&年金」

3種類の受け取り方におけるメリット・デメリットと、それぞれの税金について詳しく解説していきましょう。

一括で受け取る「一時金」〜非課税にできる金額が多い

最も一般的な退職金の受け取り方は、一時金として一括で受け取る方法です。そもそも退職金は長年の勤労に対する報酬として支給されるので、もともと税制上の優遇措置がとられています。

一時金として受け取る場合にかかる税金

退職金は退職所得となり、所得税・住民税の課税対象です。具体的には、勤続年数に応じた退職所得控除が適用され、退職金から退職所得控除を引いた金額の1/2の金額に対して課税されます。

言い換えると、退職所得控除後の金額の半額にしか税金はかかりません。退職所得における税金の優遇措置は、退職金一括受け取りの最大の利点です。

しかし、一度に大金を受け取れるため使いすぎてしまうおそれがあります。一時金として一括で受け取る場合、自分でしっかり資金計画を立てる必要があります。

退職金を一時金で受け取る際のメリット・デメリット

退職金を一時金として受け取るメリットおよびデメリットは、下記の通りです。

  • 一時金受け取りのメリット:非課税にできる金額が多い
  • 一時金受け取りのデメリット:自分で資金計画を立てる必要がある

また、事前に退職所得の受給に関する申告書を提出しておくと、源泉徴収の段階で退職所得控除が適用されます。

そのため、適切な金額を受け取れます。提出していない場合、一律20.42%の税金が徴収されるので、確定申告をして還付が受けられる可能性があります。

分割で受け取る「年金」〜総支給額が多くなる

退職金を年金として分割で受け取る場合、公的年金同様、雑所得扱いとなり、所得税・住民税の課税対象です。また、他の公的年金などと合算して計算する必要がありますが、公的年金等控除の適用が受けられます。

年金として受け取る場合にかかる税金

公的年金等控除は、60歳から64歳までは60万円、65歳以上は110万円が、支給された年金額から毎年差し引かれます。

そのため、年金が控除額の範囲内であれば、所得税・住民税は発生しないでしょう。ちなみにこの金額は、公的年金などの雑所得以外の合計所得が1,000万円以下のケースです。この金額を上回る場合の控除額は、以下の参考をご覧ください。

参考:公的年金等の課税関係 | 国税庁

公的年金等控除の対象

公的年金控除の対象となる年金は、主に下記の通りです。

  • 公的年金:老齢基礎年金、老齢厚生年金
  • 企業年金・iDeCo:年金として支給される老齢給付金
  • 退職金:分割払いの退職金

上記が公的年金控除の対象で、複数から受け取る場合は合算します。分割で受け取る場合、退職所得控除のような大きな税制優遇は受けられません。しかし、受け取り総額が一時金で受け取った時より多くなる可能性があります。

なぜ総額が増えるのかと言うと、まだ受け取っていない部分の年金が運用され、結果的にその運用利益が上乗せされるからです。

また、年金形式では定期的に少しずつ受け取れるので、使いすぎの防止になります。退職金を使いすぎてしまうおそれがある人は、年金形式を検討しても良いでしょう。

退職金を分割で受け取る際のメリット・デメリット

退職金を分割で受け取る際のメリットおよびデメリットは、下記の通りです。

【分割受け取りのメリット】

  • 一時金で受け取った時より受け取り総額が多くなる可能性がある
  • 定期的な収入源を確保できる
  • 使いすぎを防止できる

【分割受け取りのデメリット】

  • 退職所得控除のような大きな税制優遇は受けられない
  • 公的年金等控除を超えた金額に課税される

年金形式の受け取りでは、税負担が大きくなる場合もあるので慎重に検討しましょう。また、確定申告の際、公的年金等控除以外にも、配偶者控除など各種控除を適用できます。

退職金の分割受け取りを予定している人は、節税になるので他の控除の適用も検討しましょう。

一時金&年金/退職金の一部を一時金・残りを年金で受け取る方法

ここまで一時金形式と年金形式の2種類の受け取り方を解説してきました。退職金の受け取り方にはもうひとつ、この2種類を組み合わせた「一時金&年金」というハイブリッド型の受け取り方があります。

ハイブリッド型は、大きな支出に対応できる即時性と、定期的な収入を確保できる安定性を兼ね備えた受け取り方です。

一時金・年金として受け取る場合にかかる税金

一時金部分には退職所得控除が適用されます。また、残額を年金として受け取ることで公的年金等控除が適用され、税引後の手取り額を増やせるでしょう。

例えば、一定額を住宅購入やローン返済に充て、残りを年金として老後の生活資金にしたいという人も多いのではないでしょうか?このような退職金の使い道を考えている人は、一度検討してもよいでしょう。

一時金・年金として受け取る場合の最適な割り振り方

両者の税制優遇を適用した最適な割り振りは、退職所得控除額まで一時金で受け取り、残りは年金で受け取る方法です。

退職所得控除の非課税枠を最大限生かしつつ、税金の負担を分散できます。以下が具体的な手順です。

  1.  勤続年数に基づいて退職所得控除額を計算し、その金額を一時金として受け取る
  2.  一時金を受け取った後の退職金残高は、年金として分割して受け取る

一時金&年金は、多額の退職金を受け取る予定がある人に有効な手法です。退職金が退職所得控除額に収まる場合、税金はかからないので、一括で受け取る選択もあります。

退職金にかかる税金とは?

減価償却のイメージ

退職金はもともと税制上の優遇措置が設けられていると述べてきました。しかし、いくら優遇されているといっても、老後の大切な資金である退職金を少しでも多く残しておきたいものです。

ここでは一時金受け取りの際に退職金にかかる税金、「所得税」「住民税」「復興特別所得税」について解説していきます。

所得税

退職金は退職所得として優遇され、通常の給与所得とは異なる計算方法が用いられます。具体的には、勤続年数に応じて退職所得控除が適用されます。

退職所得控除額の計算方法】

勤続年数

退職所得控除額

20年以下

40万円×勤続年数

(80万円に満たない場合は80万円)

20年超

800万円+70万円×(勤続年数-20年)

【20年間勤続した場合の退職所得控除額】

40万円×20年=退職所得控除額800万円

退職金から、この控除額800万円を引いた残額が課税対象です。

住民税

住民税も退職金の課税対象です。しかし、所得税同様、住民税にも退職所得控除が適用され、退職金の一部は非課税です。

住民税には均等割と所得割の2種類がありますが、退職金の住民税は所得割で計算します。自治体によって税率が異なる場合もありますが、一般的に所得割の税率は一律10%(都道府県民税4%、市町村民税6%)が適用されます。

  • 均等割:所得額にかかわらず定額の税額を負担
  • 所得割:所得額に応じて税額を負担

実際の税率や控除額については、地方自治体の税務課や最寄りの税務署に確認しましょう。

復興特別所得税

退職金には、復興特別所得税も課税されます。これは、東日本大震災後の復興財源を確保するために導入された税金で、基準となる所得税額に対して2.1%が上乗せされます。例えば、所得税額が100万円の場合、復興特別所得税は2万1,000円です。

参考:退職金と税 | 国税庁

退職金の税金の計算方法は?

医療費控除のイメージ

退職金を受け取る際、税金をどれくらい払わなければいけないのか気になっている人もいるでしょう。ここでは、退職金を受け取る際の税金の計算方法を見ていきます。

所得税の計算方法

まずは、所得税の計算方法を見ていきます。以下が計算のステップです。

  1. 退職金から退職所得控除額を差し引く。勤続年数が20年以下の場合、1年あたり40万円、20年を超える場合は1年あたり70万円(最低控除額は80万円)が控除です
  2. 控除後の金額を2分の1にする。これが退職所得です
  3. この退職所得に対して累進課税の所得税率を適用する

【退職所得金額の計算方法】

{収入金額(源泉徴収される前の金額)-退職所得控除額} × 1/2= 退職所得の金額

【所得税の税率一覧表】

課税所得金額

所得税率

控除額

195万円以下

5%

0円

195万円超〜330万円以下

10%

97,500円

330万円超〜695万円以下

20%

42万7,500円

695万円超〜900万円以下

23%

63万6,000円

900万円超〜1800万円以下

33%

153万6,000円

1800万円超〜4000万円以下

40%

279万6,000円

4000万円超

45%

479万6,000円

それでは具体的なケースを用いて計算してみましょう。

【勤続年数30年で退職金2,000万円の場合】

手順

補足

退職所得控除額を出す

800万円+{70万円×(勤続年数30年-20年)}=退職所得控除額1,500万円

退職所得を出す

(退職金2,000万円-退職所得控除額1,500万円) × 1/2=退職所得250万円

所得税率を適用する

退職所得250万円×所得税率10%-控除額97,500円=所得税15万2,500円

上記の所得税の税率一覧表に基づいて計算します。退職所得250万円の所得税率は10%なので、250万円の10%から所得控除97,500円を引いた金額が所得税額になります。

上記の計算方法を用いて、自分の退職金にかかる税金を計算してみましょう。

住民税の計算方法

退職金にかかる住民税の計算方法は、所得税と同様に退職所得控除後の金額が基準です。退職金にかかる住民税は定率で課税され、以下のステップで計算されます。

  1. 退職金から退職所得控除を差し引く
  2. 控除後の金額を2分の1にする
  3. この金額に対して、一律10%の住民税を適用する

では実際に計算してみましょう。

【退職所得が600万円で退職所得控除が400万円の場合】

  • 住民税の計算式:(退職金 – 退職所得控除) ×1/2×10%
  • 具体的な計算:(600万円 – 400万円) × 1/2 ×10%= 10万円

退職所得が600万円で退職所得控除が400万円の場合、10万円の住民税が課せられます。この住民税は所得税とは別に徴収されるため、両方の税金を見積もっておきましょう。

退職金を受け取る予定のある人は、退職金にかかる税金の計算方法を確認し、税引後の受取額がいくらになるのかしっかり把握しておきましょう。

参考:退職金と税 | 国税局

退職金の節税対策は専門家に相談

退職金は長年勤めた勤労に対する報酬であり、老後の重要な資金でもあります。しかし、その金額が多くなればなるほど、税金は膨らんでいきます。老後の資金を少しでも増やすために、節税対策をしていきましょう。

退職金の税制はとても複雑で、特別な計算方法により税額が決定されます。退職金の節税対策は、専門家に相談するのもひとつの手です。

退職金による節税対策をお考えの方は、ぜひ小谷野税理士法人にご相談ください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。

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