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会社設立の基礎知識

エンジェル税制でスタートアップに投資するとどうなる?メリット・デメリットや確定申告までの流れを解説

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エンジェル税制のイメージ

スタートアップの投資は、高リスク・高リターンのイメージがありますが、実は国から税制上の優遇措置を受けられる場合があります。それが「エンジェル税制」と呼ばれる制度です。しかし、エンジェル税制を利用するには、投資家や企業が一定の条件を満たす必要があり、メリットだけでなくデメリットもあります。この記事では、エンジェル税制の仕組みや対象条件、メリット・デメリットや確定申告までの流れなどを分かりやすく解説します。エンジェル税制でスタートアップに投資することを検討している方は、ぜひ参考にしてください。

エンジェル税制とは?

エンジェル税制のイメージ

エンジェル税制とは、スタートアップに投資した個人投資家に対して、税制上の優遇措置を行う制度です。

エンジェル税制の目的は、起業して間もないスタートアップに対する個人の投資を促進し、イノベーションや経済活性化を支援することです。

スタートアップは、新しい技術やサービスを開発したり、社会的な問題を解決したりすることを目指したくても資金が不足しがちで、銀行や証券会社からの融資や投資を受けにくい場合が多く、個人投資家の役割が重要となります。

エンジェル税制は、個人投資家がスタートアップに投資することで、所得税の優遇措置を受けられる制度です。これにより、個人投資家の税負担を軽減し、スタートアップへの投資意欲を向上させることにつながります。

エンジェル税制の種類

エンジェル税制には、以下のような種類と優遇内容があります。

  • 起業特例

自己資金によってスタートアップを設立した場合、出資額全額をその年の株式譲渡益から控除できます(非課税)。ただし、非課税となるのは20億円の出資までで、それを超える分は課税繰延となります。

  • 優遇措置A

設立5年未満で外部資本比率が1/6以上の企業に投資した場合、投資額全額から2,000円を差し引いた金額をその年の総所得金額から控除できます(課税繰延)。控除上限額は総所得金額の40%と800万円のいずれか低い方です。

  • 優遇措置A-2

設立5年未満で外部資本比率が1/20以上の企業に投資した場合、優遇措置Aと同様の控除ができます。

  • 優遇措置B

設立10年未満で外部資本比率が1/6以上の企業に投資した場合、投資額全額をその年の株式譲渡益から控除できます(課税繰延)。控除上限額はありません。

  • プレシード・シード特例

設立5年未満で外部資本比率が1/20以上の企業に投資した場合、投資額全額をその年の株式譲渡益から控除できます(非課税)。ただし、非課税となるのは20億円の出資までで、それを超える分は課税繰延となります。

エンジェル税制の対象となる投資家と企業の条件

エンジェル税制のイメージ

エンジェル税制を利用するには、投資家や企業が一定の条件を満たす必要があります。以下に、それぞれの条件を説明します。

投資家が満たすべき要件

エンジェル税制の対象となる投資家は、以下の要件を満たす必要があります。

  • 個人であること(法人や組合などは対象外)
  • 投資した企業の役員や従業員でないこと(ただし、起業特例は自分が役員や従業員であっても適用される)
  • 投資した企業の株式を投資した年の12月31日時点で保有すること(優遇措置A、優遇措置Bの場合)
  • 投資した企業の株式の譲渡益や配当を申告すること
  • 投資した企業の株式の取得価額や売却価額を証明できる書類を保管すること
  • 投資した企業の株式の取得日や売却日を証明できる書類を保管すること
  • 投資した企業がエンジェル税制の対象企業であることを証明できる書類を保管すること

投資家として活動するのであれば、上記の要件をきちんと把握しておきましょう。

企業が満たすべき要件

エンジェル税制の対象となる企業は、以下の要件を満たす必要があります。

  • 中小企業であること(中小企業等経営強化法第2条第1号から第5号に定義する中小企業)
  • 設立後一定期間以内であること(起業特例は設立後1年未満、優遇措置AとA-2、プレシード・シード特例は設立後5年未満、優遇措置Bは設立後10年未満)
  • 外部資本比率が一定以上であること(起業特例は外部資本比率1/100以上、優遇措置AとBは外部資本比率が1/6以上、優遇措置A-2とプレシード・シード特例は外部資本比率が1/20以上)
  • 特定の事業分野に該当すること(製造業、情報通信業、サービス業、卸売業、小売業、建設業、運輸業、農林水産業、医療・福祉業など)
  • 特定の事業内容に該当すること(新規性、創造性、成長性、社会的貢献性などが高いと認められる事業)
  • 特定の事業計画に基づいて事業を行うこと(事業計画書を作成し、投資家に提供すること)

投資家同様に、エンジェル税制に関する要件の数が多いため、今一度制度に関する理解を深めることが大切です。

参考:国税庁|No.1544 エンジェル税制の概要等

 

エンジェル税制のメリットとデメリット

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エンジェル税制には、投資家やスタートアップ企業にとってのメリットとデメリットがあります。以下に、それぞれのメリットとデメリットを説明します。

投資家にとってのメリット

エンジェル税制を利用する投資家にとってのメリットは以下の通りです。

  • 税金の負担を大幅に軽減できる

エンジェル税制では、寄附金控除や株式譲渡益からの控除を受けられます。これらの優遇措置によって、投資家は、自分の所得に応じて節税できます。

  • スタートアップの成長に貢献できる

スタートアップは、社会的な問題を解決するイノベーションを生み出す可能性があります。投資家は、そのイノベーションの一翼を担うことができ、スタートアップのネットワークを広げられるでしょう。スタートアップの創業者や経営者、他の投資家との交流も期待できます。

投資家にとってのデメリット

エンジェル税制を利用することで、投資家にとってのデメリットは以下の通りです。

  • 投資した企業の株式を優遇措置A、優遇措置Bの場合投資した年の12月31日時点まで保有しなければならない

これは、エンジェル税制の条件の一つです。しかし、スタートアップの株式は、価値が下がる可能性もあります。市場の変化や競合の台頭、経営の失敗などによって、投資した金額よりも低くなるかもしれません。また、スタートアップの株式は上場していないため、売りたいときに売れないことがあります。

  • 投資した企業の情報開示が不十分な場合がある

スタートアップの情報開示が不十分な場合があります。財務状況や成長戦略、競争力や市場規模など、投資判断に必要な情報が十分に得られないことがあります。

スタートアップ企業にとってのメリット

エンジェル税制を利用することで、スタートアップ企業にとってのメリットは以下の通りです。

  • 資金調達の機会が増える

スタートアップは、資金が不足しがちです。エンジェル税制は、個人投資家にとっても魅力的な制度であり、個人投資家からの資金調達が容易になります。

  • 個人投資家からのフィードバックやアドバイスが得られる

個人投資家からのフィードバックやアドバイスが得られることもメリットの一つです。個人投資家は、自分の経験や知識、スキルを持っています。そのような個人投資家からの意見や提案は、事業の改善や発展に役立つでしょう。

  • 個人投資家のネットワークやコネクションを活用できる

個人投資家のネットワークやコネクションを活用できることもメリットです。個人投資家は、他のスタートアップや企業、専門家などとの関係を持っています。そのような関係を通じて、新たなビジネスチャンスやパートナーシップが生まれることがあるかもしれません。

スタートアップ企業にとってのデメリット

エンジェル税制を利用することで、スタートアップ企業にとってのデメリットは以下の通りです。

  • エンジェル税制の対象となる条件を満たすことが難しい場合がある

スタートアップ企業は設立年数や外部資本比率、事業分野や事業内容など、さまざまな要件をクリアする必要があります。しかし、これらの要件は、事業の状況や戦略によって変わる可能性があるものです。たとえば、設立年数が5年を超えた場合や、外部資本比率が1/6を下回った場合、エンジェル税制の対象から外れることがあります。また、事業分野や事業内容が、エンジェル税制の対象となる基準に合致しない場合もあります。

  • 個人投資家とのコミュニケーションや管理に時間や労力がかかる場合がある

個人投資家は、投資したスタートアップ企業の情報や状況を知りたいと思います。そのため、企業は個人投資家に対して、定期的に報告や説明を行う必要があります。また、個人投資家は、投資した企業に対して要求や干渉をするかもしれません。そのような要求や干渉に応えることが難しい場合もあるでしょう。

スタートアップ企業に投資する方法

エンジェル税制のイメージ

エンジェル税制を利用するには、スタートアップ企業に投資する必要があります。では、スタートアップ企業に投資する方法はどのようなものがあるのでしょうか?ここでは、主に以下の3つの方法を紹介します。

直接投資

直接投資とは、スタートアップ企業の創業者や経営者と直接交渉して、株式を購入する方法です。この方法のメリットは、投資先の企業や事業について詳しく知れることや、投資条件や契約内容を自由に決められることです。デメリットは、投資先の企業を探すことや、交渉することに時間や労力がかかること、投資額や株式の割合が大きくなることが多いことです。

認定投資事業有限責任組合(LPS)

認定投資事業有限責任組合(LPS)とは、スタートアップ企業に投資する専門のファンドです。この方法のメリットは、ファンドの運用会社が投資先の企業を選定・管理し、支援することや、投資額や株式の割合が小さくて済むことです。デメリットは、ファンドの運用会社に手数料や報酬を支払うことや、投資先の企業に直接関与できないことです。

認定少額電子募集取扱業者(ECF)

認定少額電子募集取扱業者(ECF)とは、インターネットを通じてスタートアップ企業に投資するプラットフォームです。この方法のメリットは、投資先の企業を多数から選べることや、投資額や株式の割合が非常に小さくて済むことです。デメリットは、投資先の企業の情報が不十分な場合があることや、投資先の企業に直接関与できないことです。

エンジェル税制申請から確定申告までの流れ

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エンジェル税制を利用するためには、スタートアップと個人投資家の双方がそれぞれ必要な手続きを行う必要があります。ここでは、エンジェル税制申請から確定申告までの流れを見ていきましょう。

スタートアップの手続き

スタートアップがエンジェル税制の対象となるためには、以下の手続きを行う必要があります。

ステップ1:エンジェル税制の対象となる条件を満たす

スタートアップは、設立年数や外部資本比率、事業分野や事業内容など、さまざまな要件をクリアする必要があります。これらの要件は、エンジェル税制の種類によって異なります。詳しくは、国税庁のホームページを参照してください。

ステップ2:エンジェル税制対象企業証明書を取得する

スタートアップは、エンジェル税制の対象となる条件を満たしていることを証明するために、エンジェル税制対象企業証明書を取得する必要があります。この証明書は、所轄の税務署に申請することで発行されます。申請には、以下の書類が必要です。

  • エンジェル税制対象企業証明書交付申請書
  • 会社の定款
  • 会社の登記簿謄本
  • 会社の決算書
  • 会社の事業計画書
  • 会社の事業内容に関する資料

提出書類に漏れがあると手続きが進められないため、上記をリストアップして不足がないかをチェックしておきましょう。

ステップ3:個人投資家にエンジェル税制対象企業証明書を提出する

スタートアップは、個人投資家に対して、エンジェル税制対象企業証明書を提出する必要があります。この証明書は、個人投資家が確定申告を行う際に必要となります。また、個人投資家に対して、以下の情報を開示する必要があります。

  • 会社の名称や住所、設立年月日、外部資本比率など
  • 株式の取得価額や売却価額、取得日や売却日など
  • 株式の譲渡益や配当の金額など

スムーズに提出できるよう、あらかじめ上記の情報をまとめておきましょう。

個人投資家の手続き

個人投資家がエンジェル税制の優遇措置を受けるためには、以下の手続きを行う必要があります。

ステップ1:投資したいスタートアップを探す

個人投資家は、投資したいスタートアップを探します。スタートアップを探す方法は、以下のようなものがあります。

  • 知り合いやネットワークから紹介してもらう
  • イベントやセミナーに参加して、スタートアップのピッチを聞く
  • メディアやSNSで話題になっているスタートアップをチェックする
  • LPSやECFなどの投資プラットフォームを利用する

投資したいスタートアップを探す際には、以下の点に注意しましょう。

  • スタートアップがエンジェル税制の対象となる条件を満たしていることを確認する
  • スタートアップがエンジェル税制対象企業証明書を取得していることを確認する
  • 自分の興味や関心のある事業分野や事業内容であることを確認する
  • スタートアップのビジョンやミッション、チームや文化に共感できることを確認する
  • スタートアップの財務状況や成長戦略、競争力や市場規模などを分析する

スタートアップを探すうえで、あらかじめ確認しておくべき項目は多いです。投資価値の高いスタートアップを選ぶためにも、上記をヒントにして投資先を検討していきましょう。

ステップ2:投資するスタートアップと交渉する

個人投資家は、投資するスタートアップと交渉します。交渉する内容は、以下のようなものがあります。

  • 投資額や株式の割合
  • 投資条件や契約内容
  • 投資家の権利や義務
  • スタートアップの情報開示や報告
  • 投資家の関与や支援

交渉する際には、以下の点に注意しましょう。

  • 自分の投資目的やリスク許容度を明確にする
  • スタートアップの評価額や将来の収益性を適切に判断する
  • スタートアップの創業者や経営者と信頼関係を築く
  • 法律的な手続きや書類作成を正しく行う

ステップ3:投資するスタートアップの株式を購入する

個人投資家は、投資するスタートアップの株式を購入します。株式を購入する方法は、以下のようなものがあります。

  • 直接投資の場合は、スタートアップとの契約書に基づいて、株式を譲渡してもらう
  • LPSの場合は、ファンドの運用会社に出資金を支払い、ファンドの出資者となる
  • ECFの場合は、プラットフォームのサイトで株式を購入する

株式を購入する際には、以下の点に注意しましょう。

  • 株式の取得価額や売却価額を証明できる書類を保管する
  • 株式の取得日や売却日を証明できる書類を保管する
  • スタートアップがエンジェル税制の対象企業であることを証明できる書類を保管する
  • スタートアップの株式の譲渡益や配当を申告する

ステップ4:確定申告を行う

エンジェル税制を利用するためには、確定申告を行う必要があります。確定申告は、毎年2月16日から3月15日までの期間に、税務署やインターネットで行えます。

確定申告を行う際には、以下の点に注意しましょう。

  • エンジェル税制の確定申告で必要な以下の書類を用意する
    • 確定申告書(A4版)
    • 所得税の計算に関する明細書(A4版)
    • エンジェル税制の控除に関する明細書(A4版)
    • 株式の取得価額や売却価額を証明できる書類(株式譲渡証明書など)
    • 株式の取得日や売却日を証明できる書類(株式譲渡証明書など)
    • スタートアップがエンジェル税制の対象企業であることを証明できる書類(エンジェル税制対象企業証明書など)
  • エンジェル税制の確定申告書類の書き方や記載方法を確認する
    • 確定申告書では、所得の種類や金額、控除の種類や金額などを記入する
    • 所得税の計算に関する明細書では、所得税の計算方法や税率などを記入する
    • エンジェル税制の控除に関する明細書では、スタートアップの名称や住所、設立年月日、外部資本比率などを記入する
    • 株式の取得価額や売却価額を証明できる書類や株式の取得日や売却日を証明できる書類は、確定申告書類に添付する
    • スタートアップがエンジェル税制の対象企業であることを証明できる書類は、確定申告書類に添付する

確定申告の不備は、思わぬ脱税につながってしまうため上記をよく確認したうえで申告してください。

エンジェル税制でスタートアップに投資して社会貢献しよう!

この記事では、エンジェル税制について、その概要や対象条件、メリットやデメリット、投資方法や確定申告の方法などを解説しました。エンジェル税制は、ベンチャー企業に投資する個人に税金の優遇措置を与える制度で、ベンチャー企業の成長やイノベーションを支援することを目的としています。エンジェル税制を利用することで、個人投資家は、自分の資金やスキルを社会的な価値の創造に活かせます。

エンジェル税制に関することで、分からないことや不安なことがあれば、専門家に相談することをおすすめします。税理士や弁護士などの専門家は、エンジェル税制の制度や手続きに詳しく、投資や資金調達に関する相談に応じます。専門家に相談することで、エンジェル税制を正しく理解し、有効に活用できるでしょう。

エンジェル税制は、個人投資家とベンチャー企業の双方にメリットがある制度です。詳しく知りたい方は、ぜひ私たち「小谷野税理士法人」へお気軽にご相談ください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。

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