会社設立には様々な費用がかかります。登記に必要な登録免許税もそのうちの一つです。本記事では、会社・法人の形態ごとの登録免許税の違いや、納付方法といった基礎知識について解説します。また、登録免許税を軽減できる方法やそのメリット・デメリットについても併せて紹介します。
目次
登録免許税とは
登録免許税とは、登記の手続きを行う際に国に納付する税金のことです。会社や法人の設立時だけではなく、不動産や人の資格などの登記にも必要です。
会社に関する登記は商業登記、会社以外の登記は法人登記と呼ばれます。商業登記は、株式会社、合同会社、合名会社、合資会社の登記を指します。法人登記は、一般社団法人、一般財団法人、NPO法人などの登記を指します。
参考:登録免許税法|e-GOV
会社・法人設立時の登録免許税
会社や法人設立の際にかかる登録免許税は、その形態によって異なります。
【会社設立時の登録免許税】
内容 | 課税標準 | 税率 | 最低課税額 |
株式会社 | 資本金の額 | 1,000分の7 | 15万円 |
合同会社 | 資本金の額 | 1,000分の7 | 6万円 |
合名会社・合資会社 | 申請件数 | 6万円/1件 | 6万円 |
株式会社と合同会社は、資本金が課税標準です。
株式会社の場合、資本金が約2,140万円を超えると、登録免許税が15万円より大きくなります。
合同会社の場合、資本金が約860万円を超えると、登録免許税が6万円より大きくなります。
最低課税額のボーダーラインとして押さえておくことで、登録免許税の概算がしやすくなるでしょう。
【法人設立時の登録免許税】
法人種別 | 1件あたりの登録免許税 |
一般社団法人 | 6万円 |
一般財団法人 | 6万円 |
NPO法人 | 0万円 |
一般社団法人と一般財団法人を設立する際の登録免許税は、1件につき6万円です。それに対してNPO法人は登録免許税が不要です。
法人は形態によってかかる法定費用が異なるため、自身が申請する法人の情報をよく確認する必要があります。
設立時以外に必要な場合
登録免許税は会社の登記事項に変更がある度にかかります。税率は登記内容によって異なります。
- 本店または支店の住所変更
- 合併・組織変更
- 役員の変更
- 法人の解散
例えば、会社設立後に組織変更や役員変更などが行われた場合、再び登録免許税を納付しなければなりません。
できる限り経済的な負担を減らせるように、設立前から創業後の事業計画を練っておくことをおすすめします。
登録免許税の納付方法
登録免許税の納付方法は3種類あります。ここではその方法と注意点について解説します。
現金納付
現金納付の場合は、最初に法務局が指定する口座へ現金を振り込みます。入金後、金融機関から領収書と領収書の控えが発行されるので、登録免許税納付用台紙へ貼付してください。
最後に印鑑を押して税務署へ提出します。
収入印紙
登録免許税は、現金納付が原則です。ですが、登録免許税額が30,000円以下の場合には収入印紙による納付が認められています。
収入印紙での納付に必要なものは下記の通りです。
- 収入印紙
- 登記申請書
- 登録免許税納付用台紙
- 印鑑
収入印紙を登録免許税納付用台紙に貼付し、税務署に納付します。この台紙と登記申請書に押す印鑑は同じにしてください。
キャッシュレス納付
最近はキャッシュレスによる納付も普及してきています。自宅での手続きで済ませたい人におすすめです。
【ATM・インターネットバンキング】
登録免許税は、ペイジーに対応した金融機関のATMなどで納付する電子納付が可能です。ただし、電子納付を行うためには登記申請をオンラインで行う必要があります。
【クレジットカード】
クレジットカードによる納付は、2024年(令和6年)1月から開始されました。納付額に2.2%を乗じた決済手数料が別途かかる点に注意しましょう。
登録免許税は軽減できる?
登録免許税は特定創業支援事業という制度を利用することで、登録免許税を半額にできます。株式会社は7.5万円に、合同会社も3万円まで軽減できます。
特定創業支援事業とは、初めて事業を行う方や創業して5年未満の方などをサポートするための事業です。国による認定を受けた各市区町村が、創業支援等事業者とともにセミナーやスクール、個別創業面談などを行います。2024年(令和6年)4月現在、1,331件(1,490市区町村)が認定されています。
特定創業支援事業は、この認定を受けていない市区町村では受けられません。その場合は、登録免許税の軽減措置も対象外となってしまいます。
この制度を利用したいと考えている方は、必ず創業前に中小企業庁のホームページで確認しておきましょう。
また、特定創業支援事業の対象や制度の内容は市区町村によって異なります。法人を対象外としているケースもあるため、くれぐれも対象の自治体の要件をよく確認してください。
参考:産業競争力強化法に基づく認定を受けた 市区町村別の創業支援等事業計画の概要|中小企業庁
特定創業支援事業のメリット
特定創業支援事業には、それ以外にも様々なメリットがあります。創業時にかかる初期費用を少しでも抑えたいという方はぜひ活用しましょう。
この制度を受けるためには、各市区町村でセミナーや個別創業面談などを受け、自治体が発行する証明書を得る必要があります。
登録免許税の軽減
前述の通り、特定創業支援事業を利用することで、初めて事業を行う際の登録免許税を半分まで軽減できます。
創業時は、予想していなかった費用が必要になる場合があります。使えるお金を少しでも残しておくためにも、特定創業支援事業の対象となる方はぜひ検討してみてください。
6ヵ月前から創業関連保証の相談可
創業関連保証とは、創業前の方や創業後5年未満の方などが金融機関から融資を受ける際に、信用保証協会が保証人となる制度です。信用保証協会による100%保証によって、最大3,500万円の資金調達が可能です。
創業前は実績がないため、金融機関からの融資は難しいことが一般的です。創業関連保証は、そういった創業期の方のバックアップを目的にしています。
通常、相談を受け付けるのは創業2ヵ月前からです。しかし、特定創業支援事業を利用している場合は6ヵ月前から相談できるようになります。早い時期から資金調達できればその後の事業計画もしやすくなるでしょう。なお、審査は別途あります。
新規開業資金の利率引き下げ
新規開業資金は、日本政策金融金庫が行っている融資制度の一つです。創業前から創業後概ね7年以内と、幅広い方が対象となっています。
融資限度額も7,200万円(うち運転資金4,800万円)と高額であることも特徴です。また、新規開業資金は特定創業支援事業との併用が可能です。
特定創業支援事業の支援を受けている場合は、基準利率よりも低い利率が適用されます。利用を検討している方はぜひ併用しましょう。
新創業融資制度は廃止に
日本政策金融公庫の融資の一つである新創業融資制度は、2024年(令和6年)3月で廃止になりました。
それに伴い、新規開業資金の内容が一部リニューアルされています。これまで新創業融資制度は、創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できることが要件でした。しかし、現在はこの自己資金の要件が撤廃され、以前より特定創業支援事業の申請はしやすくなっています。
特定創業支援事業を受けるための注意点
特定創業支援事業は、金銭的な面でのデメリットはありません。ただし、取得までにかかる手間や時間といった煩雑さがあることは留意しておく必要があるでしょう。
最低限1ヵ月以上の研修が必須
特定創業支援事業の証明書を得るためには、創業支援等事業者が開催するセミナーやスクールなどを受講する必要があります。
その期間は最低限1ヵ月以上と義務付けられています。あらかじめ登記の日を決めている場合は、かなり余裕を持って準備を進める必要があるでしょう。
市区町村によって内容が異なる
前述の通り、特定創業支援事業は市区町村によってその対象や制度内容が異なります。
そもそも行っていない自治体もあるため、利用したい方は創業前に直接確認することをおすすめします。
専門家への依頼も視野に
本記事では、登録免許税の基礎知識や軽減するための方法について解説しました。
しかし、創業前後にはできる限りそのような事務作業を減らし、事業のみに専念したいと考える方が大半です。
さらに、特定創業支援事業の利用を検討している場合は、登記まで約2ヵ月かかります。そのため、より早く準備に取りかかる必要があるでしょう。
登記に関する業務は、行政書士や会社設立をサポートする専門家に依頼することもできます。ぜひ小谷野税理士法人へのご相談も視野に入れてみてください。