(税制改正特集)消費課税、納税環境整備改正諸々
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はじめに
2023年度税制改正大綱のうち、今回は「適格請求書等保存方式に係る見直し」、「電子帳簿等保存制度の見直し」、「加算税(加算金)制度の見直し」について、その改正の内容を記載します。
1.適格請求書等保存方式に係る見直し
(1)税額控除に関する経過措置
これまで免税事業者であった者が、インボイス発行事業者になった場合の納税額を、売上税額の2割に軽減する。
2023年10月1日から2026年9月30日までの日の属する各課税期間において適用されます。
(2)仕入税額控除に関する経過措置
基準期間における課税売上高が1億円以下又は特定期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者の行う課税仕入れに係る支払対価の額が1万円未満の取引につき、帳簿のみで仕入税額控除を可能とする。
2023年10月1日から2029年9月30日までの間の国内における課税仕入れに適用されます。
(3)返還インボイスに関する見直し
1万円未満の値引きや返品等の返還インボイスについて交付義務を免除する。
2023年10月1日以後の売上げに係る対価の返還等について適用されます。
(4)登録制度の見直し
申請期限後(2023年4月1日)に同年10月1日からインボイス発行事業者登録を受ける場合に、登録申請書に困難な事情の記載が不要となるほか、登録申請書等の提出期限の見直しが行われています。
2.電子帳簿等保存制度の見直し
(1)優良な電子帳簿の範囲の見直し
過少申告加算税の軽減措置の対象となる申告所得税及び法人税に係る優良な電子帳簿の範囲を、2024年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税から、次のとおりとする。
①仕訳帳 |
②総勘定元帳 |
③次に掲げる補助簿 イ手形上の債権債務に関する事項 ロ売掛金その他債権に関する事項 ハ買掛金その他債務に関する事項 ニ有価証券に関する事項 ホ減価償却資産に関する事項 ヘ繰延資産に関する事項 ト売上その他収入に関する事項 チ仕入その他経費又は費用に関する事項 |
(2)スキャナ保存制度の見直し
国税関係書類に関するスキャナ保存制度について、2024年1月1日以後に保存が行われる国税関係書類から、次の見直しを行う。
①解像度、階調及び大きさに関する情報の保存要件の廃止 |
②入力者等に関する情報の確認要件の廃止 |
③相互関連性要件を契約書・領収書等の重要書類に限定 |
(3)電磁的記録の保存制度の見直し
2024年1月1日以後に行う電子取引の取引情報に係る電磁的記録から適用されます。
①電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存要件について、次の措置を講じる。
イ一定の保存義務者について検索要件の全てを不要とする措置について、 対象者を次のとおりとする。 ・判定期間の売上高5,000万円以下(現行:1,000万円以下)である保存義務者 ・電磁的記録の出力書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力され、取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理されたものに限る)の提示又は提出の求めに応じることができるようにしている保存義務者 |
ロ電磁的記録の保存義務者に関する情報の確認要件を廃止する |
②電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存要件に従って保存をすることができなかったことについて相当の理由がある保存義務者に対して、次の猶予措置を講じる。
納税地等の所轄税務署長が相当の理由があることを認め、かつ、保存義務者が電磁的記録のダウンロードの求め及び出力書面の提示又は提出の求めに応じることができるようにしている場合には、その保存要件にかかわらず、その電磁的記録の保存をすることができる。 |
3.外加算税(加算金)制度の見直し
2024年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税(地方税)について、次の表1の見直しが行われる。
【表1】
区分 | 現行 | 改正後 |
無申告加算税(不申告加算金)の割合 | 15% | 15% |
納付すべき税額が50万円を超える部分に対する割合 | 20% | 20% |
納付すべき税額が300万円を超える部分に対する割合 | ― | 30% |
さらに、無申告加算税について、調査通知以後に、かつ、その調査があることにより更生又は決定があるべきことを予知する前にされた期限後申告又は修正申告に基づく場合には、次の表2の見直しが行われる。
【表2】
区分 | 現行 | 改正後 |
無申告加算税の割合 | 10% | 10% |
納付すべき税額が50万円を超える部分に対する割合 | 15% | 15% |
納付すべき税額が300万円を超える部分に対する割合 | ― | 25% |
注:納付すべき税額が300万円を超える部分に対する割合について、納付すべき税額が300万円を超えることにつき納税者の責めに帰すべき事由がない場合、適用に関して所要の措置が講じられる。
おわりに
1と2は要件が緩和され、3は反対に要件が加重される改正となります。
不利にならないためにも、適用要件についてご留意ください。
(担当:福井)