固定資産の取得に関する圧縮記帳について
公開日:
最終更新日:
はじめに
設備投資等で国から補助金を受けた場合、固定資産の取得に関する圧縮記帳という制度があります。
今回圧縮記帳制度と会計処理についてご説明します。
1.圧縮記帳制度とは
圧縮記帳とは、事業者が一定の要件下で固定資産を取得した場合に実施できる、課税の繰り延べ手法です。
2.圧縮記帳のメリット・デメリット
【メリット】
・補助金や保険金など圧縮記帳の対象となる給付があった年度において、課税所得が減額され、一時的な節税効果があります。
・企業の投資意欲を課税で低下させません。
【デメリット】
・多くの圧縮記帳資産をもつと、資産管理面で他と区別する等の作業が増えます。
・翌年以降は圧縮記帳分だけ課税が重くなります。
3. 補助金による圧縮記帳
【事業再構築補助金】
事業再構築補助金は独立行政法人中小企業基盤整備機構を通じての交付のため圧縮記帳の対象外かと思われましたが、国税庁より所得税法第42条又は法人税法第42条に規定する国庫補助金等に該当するとし、圧縮記帳が認められます。
圧縮記帳が認められる経費…固定資産(建物、設備)
圧縮記帳が認められない経費…技術導入費、専門家経費等固定資産以外の経費
【小規模事業者持続化補助金】
小規模事業者持続化補助金(コロナ対応型)は独立行政法人中小企業基盤整備機構から、小規模事業者持続化補助金(一般型)は全国商工会連合会から補助対象者に交付されるものですが、所得税法第42条又は法人税法第42条に規定する国庫補助金等に該当するとし、圧縮記帳が認められます。
なお、固定資産の取得に充てるための補助対象経費については、圧縮記帳は認められますが、固定資産の取得以外に充てられた部分の金額については、圧縮記帳の対象外となります。
4. 圧縮記帳の方式
圧縮記帳の方式として、直接減額方式と積立金方式があります。今回は、直接減額方式を説明します。
【補助金交付】
預金1,000 / 雑収入1,000 補助金交付
【機械装置取得】
機械装置2,000 / 預金2,000 機械装置取得
【圧縮損計上】
固定資産圧縮損1,000 / 機械装置1,000 圧縮損
※圧縮限度額まで損金経理した場合
【減価償却費計上】
減価償却費100 / 機械装置100 減価償却費計上
5.資産取得年度と補助金交付年度で事業年度が異なった場合
設例:国庫補助金1,000
固定資産取得価額2,000
償却率0.100(新定額法)
【1期に取得し補助金交付の場合】
1期 | 2期 | |
圧縮限度額 | 1,000 | 0 |
償却限度額 | 100 | 100 |
損金合計 | 1,100 | 100 |
【1期に取得、2期に補助金交付の場合】
1期 | 2期 | |
圧縮限度額 | 0 | ※900 |
償却限度額 | 200 | 100 |
損金合計 | 200 | 1,000 |
※圧縮限度額=補助金×(期首帳簿価額÷取得価額)
このように取得と交付の期がまたがると損金計上のタイミングで差異が生じますが損金合計は一緒です。
おわりに
圧縮記帳を適用するかどうかで益金、損金計上のタイミングが変わりますので、当期だけでなく翌期以降の業績も加味して判断するようにしましょう。
(担当:渡邊)