社会福祉法人の会計監査人監査
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はじめに
社会福祉法(以下「法」とします)等の一部改正により、一定規模を超える社会福祉法人では、2017年4月以降に開始される会計年度において、会計監査人による監査が制度化されています。
今回は、社会福祉法人における会計監査人監査の概要と意義について解説します。
1.会計監査人監査とは
会計監査人監査とは、公認会計士又は監査法人によって行われる外部監査をいいます(法45条の2)。
会計監査人の監査の目的は、社会福祉法人を取り巻く多様な利害関係者(地域社会、利用者(受益者)、職員、政府、国民及び金融機関等の資源提供者等)に対して、公認会計士が独立した第三者として、監査を受ける法人の財務報告の信頼性を担保することにあります。
2.監査のプロセス
会計監査人監査は、次のような流れで行われます。
予備調査 | 監査計画立案の参考とするため、監査に協力する準備が整っているか、監査に対応可能な内部統制が構築されているかどうか等、法人内部組織などの調査を行います。 |
監査計画 | 内部統制の整備・運用状況、取引の実態などを分析して、誤った会計処理が生じるリスクに応じた効果的・効率的な監査が実施できるように、監査計画を立案します。 |
監査手続 | 監査計画に基づいて具体的な監査手続を実施します。勘定科目ごとに各種の監査手続を行い、監査証拠を積み上げていきます。 |
監査意見 | 監査手続の結果をまとめた監査調書から、相互の関連性や整合性を検討して、意見を形成するに足る合理的根拠が得られていることを確認し、監査意見を形成します。 |
監査報告書の提出 | 以上の過程を経て、監査報告書が提出されます。計算書類等が、会社の財務状況を適正に表示していると認められれば、監査人から適正意見が表明されます。 |
3.監査が必要な対象法人の範囲
現在、会計監査人の監査が義務付けられているのは、「前年度の収益が30億円超、又は、負債が60億円超の法人」となっております。(法37条、社会福祉法施行令第13条の3)
当初は、この基準は段階的に引下げられ、
2019年度~:収益が20億円超又は負債が40億円超
2021年度~:収益が10億円超又は負債が20億円超
へと対象法人が拡大することが予定されていました。
しかし、厚生労働省から2018年11月2日付で表明された事務連絡「社会福祉法人における会計監査人に係る調査と平成31年4月の引下げ延期について(周知)」により、基準の引き下げは延期されています。
4.監査導入のメリット
監査の導入により次のような効果が期待されます。
1. 財務情報の信頼性の向上、ガバナンスの強化、これによる法人の社会的な信頼性の向上に寄与します。
2. 適時、適切な経営判断に不可欠な信頼性の高い財務情報を適時に把握できる管理体制の整備・経営力強化に寄与します。
3. 職業専門家との定期的なコミュニケーションにより、経営課題を浮彫にし、課題解決に共に取り組みます。
4. 不正の防止、発見効果が上がります。
5. 業務プロセスの見える化により、効率的な経営の実現に寄与します。
おわりに
2019年の厚生労働省の調査によれば、会計監査人の監査を受けた法人の92%が、監査報酬の費用対効果について「満足」「相応」と回答しています。会計監査を上手に活用することで、法人の社会的な信頼性を高めたり、業務改善につなげることができるでしょう。
今後、法定監査の対象となる社会福祉法人の範囲は拡大される可能性が高いと思われます。現在会計監査任を設置していない法人様におかれましては、早めに公認会計士にご相談することをお勧めいたします。
(担当:江森)