『ある日、羊飼いのギュゲスは、羊たちに草を食わせているとき、黄金の指輪を見つけた。
指輪を身につけて、玉受けを回したところ、自分の姿が透明になることがわかった。
そこでギュゲスは、その指輪を使って国王を殺し、王権を手に入れた』
―「国家」より。
ソクラテスさんの弟子のプラトンさんは、本当にたくさんの著作があって、いろいろなお話が残されています。まぁ、良し悪しやら善悪やらと「よく」生きることを追求する過程で、やはり「正義」という概念は欠かずことができません。
で、冒頭の一文。
これはプラトンさんが書いた『国家』の本文中で語られたエピソードトークです。ギュゲスなんていかにも悪そうな名前ですけどね。なかなか血なまぐさい感じです。ロードオブザリングに似てますね。
本文は以下のように続きます。
この状況で、最大の不正よりも正義選ぶ人、いる?正義選べる根拠、ある?
人にばれないように偽善者ぶってこっそり手に入れちゃえばさ、それだけで将来安泰でしょ?
たぶん、こんな感じです。もちろん、原文の通りではありません。これは原文のほうが伝わるかもしれません。ちょっと咀嚼しすぎました。日本語ではありませんが。
何が言いたいかといえば、誰にもバレないなら悪いことしちゃうよね、ということです。プラトンさんはこの話をとおして教育の重要性を訴えはじめます。良し悪しを判断させるよりも、自然に善を選ぶ方向に導くことが重要なのだ、というスタンスです。
バレなきゃ悪いことしちゃうような人を教育でなんとかしようなんて、若干弱すぎやしないかなぁ、と思わないではありませんが。でも、こういうことをあーでもないこーでもないと一生懸命考えたのはソクラテスさんやプラトンさんがはじめてだったわけですから、なんだかスゴいですよね。しかも紀元前。いわゆる例の神様もいないような時代です。
とはいえ、不正はダメです。正々堂々と正面から。はい、確定申告はおはやめに(笑)
で、この研究はプラトンさんの弟子、アリストテレスさんに引き継がれます。
とはいえ、アリストテレスさんはどちらかというと、プラトンさんはあんなこと言ってたけど俺は違うと思うなー、というスタンスです。
ではまた。
【参考:読まずに死ねない哲学名著50】