多摩大学「現代世界解析講座ⅩⅣ」の11回目(12月16日)は法政大学の前総長でもある田中優子名誉教授による「江戸から考えるコロナ後の学び」でした。
1.江戸時代の人々の学び方
(1)素読(すどく、すよみ、そよみ)
字突棒で文字を指しながら声に出して読み、子供がそれを復唱します。音読により身体で覚えます。
12、3歳で「易経」「詩経」「書経」「春秋」を、14歳で「礼記」を学び、これら「五経」を卒業します。
(2)講義(聴講、聴聞ともいいます)
字や文の意味を日本語で説明します。
(3)会読(輪講、会業ともいいます)
10人ぐらいで1グループとなり、順番をくじで決め、テキストの当該箇所を読んで講義をします。
その後、他の者が質問し、討論します。教師は、議論が対立したりすると判定を下します。
会読によって、江戸時代の人々は相互コミュニケーション力を身につけていた、といえます。
しかし、近代(明治時代)に入ると、欧米の一斉教授方法(現代の大教室での一方通行の授業)が導入され、江戸時代特有の個別指導方法(素読)や共同読書方法(会読)は消滅していきました(但し、明治時代の民権結社は江戸時代の会読結社の発展形態と考えられることから、自由民権運動は、江戸時代の内発的発展の上に創り出されたといえます)。
2.江戸時代の学び方から得られること
「リモートの元祖は“本”である」
江戸時代の「会読」から受け継ぐべきことは、学びの方法についてのプラットフォームを作ることです。
具体的には、読書によって身体に言葉を刻み込み、自分自身で言語化し、自ら講義し、議論することです。