多摩大学「現代世界解析講座ⅩⅣ」の10回目(12月9日)は、テレビでもお馴染み、白鷗大学名誉教授、共同通信社客員論説委員の後藤謙次氏による「衆院選挙後の政治構造と動向」でした(以下、敬称略)。
1.岸田政権の内部構造
9/29の総裁選で圧勝し、10/31の衆議院選挙で絶対安定多数を確保しましたが、岸田政権は脆弱というのが現段階での評価です。
(1)重要ポストに岸田派の重鎮が不在
官房機密費を握る官房長官は、側近中の側近が就くのが通常ですが、岸田内閣では安倍派の松野博一です。
党の公認権と金庫を差配する幹事長は、麻生派の甘利明、その後、茂木派(旧竹下派)の茂木敏充が就いています。
政調会長は、総裁選で安倍元首相が応援した高市早苗。
総務会長は福田康夫元首相の長男である福田達夫。
因みに、岸田首相側近として政策に取り組んでいるのは木原誠二ぐらい。将来の総理候補の可能性もあるので注目したいです。
党や官邸に側近が不在の中、岸田・麻生・茂木の三者会談を頻繁に開催して政策を動かそうとしていますが、麻生・茂木は言わずと知れた“安倍親衛隊”であり、安倍対策が政権運営のカギとなります。
憲法改正や敵基地攻撃能力といったタカ派的テーマを口にしているのもその表れでしょう。
(2)チーム力の欠如
アーリーハーベスト(早く結果を!)ということで、例えば、オミクロン対策としての水際対策を迅速に実行していることは評価できます。しかし、首相権限で可能な範囲に限定されています。
10万円の特別定額給付金問題では手続きで混乱しましたし、文書通信交通滞在費問題では決着できず先送りとなりました。党や官僚等の利害関係者を巻き込んだチーム力が欠如していることが要因だと思います。
2.最大の課題は“外交”
岸田政権の足許最大の課題は“外交”、とりわけ米中対立を背景とした対中関係です。
北京オリンピックについて、米国はじめ欧米主要国が“外交ボイコット”を表明している中で、日本は未だ態度を明らかにしていません。
2022年9月29日には、日中国交正常化50周年を迎えます。コロナで延期となっている習近平総書記の国賓としての招待をどうするか、また、サプライチェーン再構築のための企業規制や機密特許の非公開化等を扱う経済安全保障問題をどう裁くか、課題山積です。
3.決戦は2022年夏の参院選
次回参院選が来年夏に予定されていますが、この頃にはコロナの全容が明らかとなって、どのように対応したか、が争点となるでしょう。
参院選は3年に1度、その半数しか改選されないため大勢には影響しない、と思われがちですが、「参院を笑う者は参院で泣く」ことが過去何回も起きています。
沖縄の政治日程(1月:名護市長選、5月:沖縄返還50年、9月:沖縄知事選)とも絡んで、岸田政権の命運を左右しそうです。