多摩大学「現代世界解析講座ⅩⅣ」の第6回目(11月11日)は慶應義塾大学総合政策学部の白井さゆり教授による「世界で拡大するESG投資と環境・社会的責任を意識した企業経営」でした。
1.世界で拡大するESG投資
2006年に国連が責任投資原則(Principles for Responsible Investment、PRI)を公表し、年金・保険などのアセットオーナーと資産運用機関は「責任ある投資原則」の6原則に署名しました。
PRIは環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)と投資の関係性を理解し、投資の意思決定や株主としての行動により支援することを目的としており、ESG投資が世界に浸透する契機となりました。
投資家はESG投資を促すべく、企業と「建設的な対話」を実施し、必要に応じて「議決権」を行使します。
ESG投資より広い概念であるサスティナブル投資の金額は、世界の年金・保険・資産運用の36%、4000兆円にまで拡大しています。
2.企業に期待されるESG投資
(1)企業統治に関して企業に期待されていること
・女性の取締役の増加
・社外取締役を3分の1以上、できれば過半数へ
・執行役員の報酬をサステナビリティ指標(ex.CO2排出削減量)に連動させる
・環境・社会的視点での企業の中長期目標の設定と進展度のチェック
・サステナビリティ委員会とサステナビリティ担当者を任命
・非財務諸表の情報開示の充実 等
(2)環境に関して企業に期待されていること
・排出量の開示→スコープ1(自社の排出)とスコープ2(間接的排出)で開示。スコープ3(サプライヤー)の開示も望ましい。
・科学的根拠に基づいた目標設定
・RE100(Renewable Energy100=事業活動で消費するエネルギーを100%再生可能エネルギーで調達することを)への参加
・気候関連財務情報タスクフォース(TCFD)提言に沿った情報開示の促進。
・原材料のトレーサビリティと認証 等
(3)社会に関して企業に期待されていること
ダイバーシティ、人権、労働環境、データの取扱いへのリスク管理、企業倫理、等
3.ESG投資の課題
・ESG評価機関の評価のばらつき
・企業による情報開示・データの不足→企業間比較の困難性
・企業の事業計画と環境・社会的課題の統合が不十分、経営陣の理解不足、目標へのコミットメント 等