多摩大学「現代世界解析講座ⅩⅣ」の第2回目(10月14日)は、笹川平和財団の渡部恒雄上席研究員による「米中対立とバイデン政権の戦略」でした。
渡部恒雄上席研究員は、会津訛りの政治家である故渡部恒三氏の長男で、“ナベツネ”こと渡邉恒雄氏とは同音異字となります。
1.2021年以後の世界秩序の構造
第二次世界大戦後から冷戦、冷戦後にかけて、米国の圧倒的な富と力の独占と民主化イデオロギーの隆盛という世界が続いてきましたが、米国の国力の減衰と中国の台頭により、世界はナショナリズムとポピュリズムが跋扈する時代に転換しています。
2.バイデン外交の基本姿勢
バイデン外交は、米国の現実のパワーバランスの低下や自分の国内政治上の制約を理解して柔軟に対応する姿勢をとっています。
3.対中政策
中国を「21世紀の安全保障に対する最大の長期にわたる戦略的脅威」と考え、同盟国・パートナー国との関係強化によって中国の軍事的冒険主義を抑止する勢力均衡策をとっています。
政権発足後100日で、インド・太平洋外交に大きくシフトしましたが、バイデン政権の目標は、もはや米中対抗関係に勝利して中国を屈服させることではなく、正統性のある秩序をインド太平洋に構築して中国を組み込むことです。
4.内政を最重視するバイデン政権
バイデン政権にとっては、政権維持のための米国民の支持を得ることが最優先課題です。具体的には、2022年の中間選挙において、上下院で過半数を維持し、2024年の大統領選挙でバイデン大統領あるいは後継候補が選出されることです。
そのため、バイデン外交の優先順位は対中強硬策よりも「中間層のための外交政策」が上位にあるという認識が重要な視点です。