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- ニュースの数字をどう読むか ~統計にだまされないための22章~
小谷野です。
TVや雑誌など様々なメディアで数値が溢れています。
今回は、これら公表される数値を素直に受け取るのは危険である事を指摘している『ニュースの数字をどう読むか』(David & Tom Chivers著/ちくま新書2022.2.10)からです。
「グッドハートの法則」
数値や測定が目標になると不適切な集計数値になる。
イギリスでコロナの検査体制が遅れていた2020年4月、1日1万回であった検査体制を4月中に1日10万回にすると政府が宣言し、その後4月30日の検査数は12万回と公表された。
本来は感染の有無を検査するPCR検査実施数の目標数値であったが、途中から検査可能数に変更されるなど、検査の申込数、ポスト投函された数、PCRではなく抗体検査数も含め、10万回に届かせるために様々な不適切な集計がされた。
「合流点バイアス」
合流点バイアスとは、何の関係がないものがあるように見えたり、何もないところに仮想関連性を作り奇妙な結果をもたらすことです。
例えば、コロナの入院患者でタバコを吸う人よりタバコを吸わない人の入院が多いという数値集計が進んだとき、患者にニコチンを注入するためのニコチンパッチを準備したフランスの病院もあったそうです。
「いいとこ取り」(Cherry Picking)
イギリスでは10代の自殺率がこの8年で2倍になった、と2019年の雑誌のトップ記事になったことがあったが、この記事は、10代の自殺率が最も少ない2010年を起点にしており、この年を基準にすればどの年代も自殺率は上昇する。
起点と終点をいいとこ取りをすることは、結論があって仮説を立てる(hypothesizing after results are known-HARK)として知られている手法である。
「絶対的リスクと相対的リスク」
男が45才以上で子供を授かると、父親が24~35才の子供に比べて、子供にてんかんが出る可能性が18%も高くなるという雑誌記事があった。
18%は相対的な数値で、絶対的数値を比較すれば0.024%と0.028%の差であった。0.004%のリスク増加で、人生の後半で父親になることを諦める必要はあるのだろうか。
「生存者バイアス」
大戦中、米海軍は航空母艦に帰還した戦闘機の被弾状況を分析して新しい戦闘機の装甲を設計して大失敗をしたそうです。空母に戻ってこなかった(撃ち落とされた)戦闘機の被弾状況の分析が抜けていたからです。
「私の成功の秘訣」などの成功本も同じです。「早起き、アボカドスムージーを飲み、従業員の10%を2週間毎に解雇して、金持ちになった」などです。
生存者(成功者)の偏った情報ですが、書籍にするとよく売れるようです。
~今日は飲みに行く確率3%、小谷野でした~