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会社設立の基礎知識

一般社団法人での相続税対策は不可に?従来の仕組みや2018年の改正内容

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一般社団法人での相続税対策は不可に?従来の仕組みや2018年の改正内容

一般社団法人は、営利を目的としない法人で、特定の条件下では大幅な節税効果が期待できるものでした。しかし、相続税対策としての利用は、かつては効果的とされていたものの、2018年の法改正より状況が変わっています。この記事では、一般社団法人を使った節税の仕組みや、改正後の影響について分かりやすく解説します。

一般社団法人とは

NPO法人

一般社団法人は、営利を目的としない法人形態で、出資持分がないことが特徴です。設立が比較的容易で、さまざまな事業活動を行えます。ここでは、一般社団法人の基本的な特徴について詳しく解説します。

営利を目的とせず出資持分がない法人形態

一般社団法人は、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」に基づいて設立される非営利法人です。営利を目的としないため、利益の分配はできませんが、事業活動を通じて収益を上げることは可能です。余剰利益は次年度に繰り越して事業に再投資されます。

設立には2名以上の社員が必要で、社員は法人の重要事項を決定する「社員総会」に参加します。社員は従業員ではなく、株式会社でいう「株主」に近い立場です。

一般社団法人には株式や出資金が存在しません。つまり、法人の所有権を分ける「持分」がないため、利益を分配する必要がないのです。そのため、法人の利益は原則として、すべて事業活動や社会貢献に使われます。

設立には特別な許可や認可は不要で、公証役場で定款の認証を受け、法務局で登記することで完了します。

一般社団法人は非営利性を保ちながらも、柔軟な事業活動が可能な法人形態です。

参考:一般社団法人及び一般財団法人制度Q&A|法務省

以前は相続税の節税対策として利用されていた

一般社団法人は、かつて相続税の節税対策として広く利用されていました。特に、資産家や不動産オーナーが相続税の負担を軽減するために活用していたのです。

例えば、資産家が所有する不動産や株式などの資産を一般社団法人に移転することで、相続財産から除外し、相続税の課税対象を減少させることが可能でした。また、社員を家族にすることで、実質的に資産を家族に引き継ぐこともできたのです。

このような方法により、相続税の負担を大幅に軽減するために、一般社団法人を設立するケースが多くみられました。資産が法人に移転されることで、相続時にその資産が相続財産として計上されず、結果として相続税が発生しない効果があったからです。

相続税の節税対策として有効な手段とされていましたが、2018年の税制改正により規制が強化され、現在では過度な節税が難しくなっています。

関連記事:一般社団法人の活用で節税するスキームとは?法改正の影響を解説!

一般社団法人を利用した節税対策の仕組み

節税

一般社団法人を利用した節税対策は、かつて効果的な方法として広く利用されていました。ここでは、具体的なケースを通じて、どのように節税が行われていたのかを見ていきます。

一般社団法人通じて財産を譲渡すると相続税の課税対象から外れる

節税対策の一例として、A氏が長男B氏と一緒に一般社団法人Cを設立したケースを考えてみましょう。A氏は自分の持っているアパートをCに譲渡します。この時点で、アパートはA氏の個人財産から移り、Cの所有物です。

その後、A氏が亡くなった場合を考えてみます。A氏の財産には、Cに譲渡したアパートしかなかったと仮定します。この場合、相続税はA氏の財産に対して課税されますが、Cに譲渡したアパートはA氏の財産には含まれません。結果として、A氏の財産はゼロとなり、相続税が発生しない結果になります。

この仕組みの背景には、一般社団法人が誰の所有物でもない特性にあります。一般社団法人が所有する財産は、特定の個人のものではないため、相続税の対象外です。これにより、A氏の財産は半永久的に相続税が課税されない状態となるのです。

財産を贈与するケースでも抜け道があった

A氏がアパートを一般社団法人Cに移す方法として、譲渡(有償による移転)の他に、贈与(無償による移転)も考えられます。しかし、贈与の場合は譲渡以上に税金が発生するリスクが潜んでいるのです。

まず、A氏に対しては、贈与したにもかかわらず、そのアパートを時価で売却したものとみなされ、所得税が課税されます。一方、Cに対しては、無償で財産を受け取ったことが利益と見なされ、法人税が課税されるのです。

さらに、税務署がこの一連の行為を相続税や贈与税を不当に減少させる目的と判断した場合、一般社団法人Cを個人とみなして、Cに対して相続税や贈与税が課税されることがあります。

このように、贈与は譲渡よりも税務上のリスクが高く、慎重な対応が求められます。ただ、どのような場合に相続税や贈与税が課されるのか規定が曖昧であったため、規制としては不十分でした。しかし、曖昧であった課税要件が、その後の法改正では明確化されています。

事業継承では社員の交代により相続税や贈与税がかからない

事業承継の際にも、節税対策として一般社団法人が活用されていました。事業承継する会社の株式を一般社団法人が保有し、代表の地位を後継者に引き継ぐというものです。

事業承継時の相続税や贈与税は、現経営者から後継者に株式を移転することに対して課税されます。そこで、後継者に株式を移転するのではなく、法人に株式を移転する方式を取ります。

この方法を使えば、一般社団法人が株式を保有することになるため、株式の相続は発生しません。後継者が代表理事を務めることで、事業を支配することが可能となります。

一般社団法人を活用した事業承継の最大のメリットは、相続税や贈与税が発生しないことです。一般社団法人には株式がなく、その支配権は社員に帰属しています。後継者への事業承継も、株式の移転によってではなく、社員の交代によって行われるため、相続税や贈与税がかからないのです。

解散時の財産の帰属先のルールが変更できる

一般社団法人に移した財産はその後どうなるのでしょうか。特に、誰の所有物でもない一般社団法人が解散した場合、その財産はどのように処理されるのでしょうか。

一般社団法人は、解散時の財産の帰属先について、定款(法人のルール)であらかじめ決めておく必要があります。登記時に定款を公証人に確認してもらうことで、法人が設立するのです。

ただし、解散時の財産を設立者やその親族に渡すルールを定款に記載すると、株式会社と同様と見なされ、設立が認められません。例えば、解散時にアパートをA氏やB氏に渡すルールは設定できないのです。

では、そのアパートは相続税が課税されないものの、結局自分たちのものにはならないのでしょうか。実は、設立後に定款を変更することで、この問題を解決する方法があります。

設立時には「解散時の財産は国や地方公共団体等に渡す」と定めておき、設立後に「解散時の財産は社員総会で決定する」と変更することが可能です。これにより、一般社団法人の財産を設立者やその親族に引き継ぐことができます。

この方法を使うことで、相続税が課税されずに、親から子へ財産を渡せてしまっていたのです。

関連記事:法人格の種類とは?特徴や取得方法について解説

「平成30年度税制改正大綱」による一般社団法人への規制

税理士に節税を相談するイメージ

平成30年度の税制改正では、一般社団法人を利用した過度な節税対策に対する規制が強化されました。これにより、相続税や贈与税の回避が難しくなり、適正な納税が求められるようになりました。

相続目的での一般社団法人の利用が難しくなった

これまで、一般社団法人を利用することで大幅な節税が可能でしたが、2018年に行われた税制改正により、国は以下の2つの対策を講じました。

1つ目は「親族で支配している一般社団法人に対する相続税の課税」です。国は、一般社団法人に資産を移すことで相続税を回避する手法に対して規制を強化しました。親族が支配するケースにおいて相続税を課す制度が導入されたのです。

例えば、父A氏と長男B氏が一般社団法人Cを設立し、A氏がアパートをCに譲渡した場合、A氏が亡くなった際にCに対して相続税が課されます。

この制度では、一般社団法人を「人」とみなして相続税を課すことで、相続税の回避を防いでいるのです。ただし、すべての一般社団法人が対象となるわけではなく、以下の要件を満たす場合に限られます。

  • 相続開始の直前において、同族理事数が総理事数の2分の1を超えること
  • 相続開始前5年以内において、同族理事数が総理事数の2分の1を超える期間の合計が3年以上であること

また、2つ目の対策として「相続税や贈与税を不当に減少させる行為に対する規制の強化」も行われました。具体的には、以下の条件のいずれかを満たさない場合、不当な減少とみなされ、相続税や贈与税が課されます。

  • 運営組織が適正であり、理事の数のうち親族の割合が1/3以下である
  • 解散時に残余財産を国や地方公共団体等に渡す
  • 理事等に特別な利益を与えたことがない
  • 3年以内に重加算税・重加算金を課せられたことがない

これにより、一般社団法人を利用した過度な節税対策が難しくなり、適正な納税が求められるようになりました。

参考:平成 30 年度税制改正の大綱|総務省

参考:特定の一般社団法人等に対する課税のあらまし|国税庁

節税効果は低いものの不動産分割の対策としては有効

税制改正後の一般社団法人は、節税効果が低くなったものの、不動産を分割しなくて済むメリットがあります。特に、不動産の分割が難しい場合や分割したくない場合には、有効な対策です。

改正後も、役員に占める親族の割合を減らすなどの条件を満たせば、贈与税や相続税はかかりません。具体的には、親族役員の割合が3分の1以下であり、解散時には財産が国や公益団体に帰属し、以前の不動産所有者が特別な利益を受けていない場合です。しかし、このような条件を満たす法人では、相続させたい人に限定して財産を与えられず、相続対策としての効果は限定的でしょう。

一般社団法人を設立し、不動産を法人名義に変更しても、以前のような節税対策の効果は得られません。しかし、不動産の分割で生じる問題を解決する手段としては有効です。

複数の相続人が不動産を相続する場合、金銭のように均等に分割することは難しいです。売却すれば均等に分割できますが、不動産として所有したい場合は、共有名義にすると、その後の売却や賃貸は困難でしょう。

不動産を法人名義にすることで分割を避ける方法は、株式会社を設立する場合でも可能です。しかし、一般社団法人などの非営利型法人に該当すれば、非収益事業から生じた所得が非課税となるメリットが加わります。

つまり、不動産の資産価値を下げずに所得を確保したい場合などは、相続対策として一般社団法人を設立するのが向いていると言えます。

関連記事:寄付金が税金対策になる?寄付金控除の仕組みや対象について解説

相続税の節税で一般社団法人を設立した方が良いケース

相続税の申告書

一般社団法人を利用した相続税対策は、法改正により効果が低下しましたが、依然として特定の状況では有効です。ここでは、一般社団法人の設立が向いているケースを紹介します。

相続で不動産を分割したくないケース

不動産を法人名義にすることで、相続時に分割せずに済むメリットがあります。前述のように、株式会社でも同様の方法は可能ですが、非営利型の一般社団法人であれば、非収益事業が非課税となるため、この点が有利に働くでしょう。

また、賃料収入がある不動産を個人で所有し、課税所得が年間で900万円を超える場合、法人税の実効税率を利用する方が有利になることがあります。個人の所得税率は累進税率で、所得が増えるほど税率が高くなり、30%を超えることもあります。

一方、法人税の実効税率は、法人税や法人住民税、法人事業税などを含めた実際の税負担率で、一般的に30%前後です。そのため、個人で高額所得を得るよりも、法人を設立して所得を分散させる方が、税負担が軽くなる可能性があります。

親族以外にも財産を分けたいケース

収益財産がある場合など、高額な所得を得ているケースでは、個人と法人での税率の差だけでなく、所得の分散効果にも注目する必要があります。一般社団法人を設立し、役員に報酬を支払うことで所得を分散し、節税効果を得ることが可能です。

また、大規模修繕費や退職金の積み立てなどで将来に備えることもできるでしょう。さらに、親族以外の信頼できる知人や友人にも財産を分けることで、個人への資産集中を防ぎ、相続対策としても有効です。

関連記事:寄付は節税になる?法人・個人の節税効果や仕組みについて詳しく解説!

過度な節税対策には十分注意しよう

法改正により、一般社団法人を利用した相続税対策は難しくなっています。今後もこの方法に固執するのは得策ではありません。

例えば、同族役員数を減らしたり、若い理事を入れるなどの抜け道を探すことも考えられますが、リスクは伴うでしょう。また、国は法改正を続ける可能性が高く、抜け道に対する締め付けが強化されると考えられます。

さらに、人の死亡タイミングを正確に予測することは難しく、相続税対策を封じる国側が有利です。法律の抜け道を利用した節税対策は賢明ではありません。究極の相続税対策と呼ばれる方法も、後から規制や法改正で使えなくなることが多いのです。

一般社団法人を利用した相続税対策は慎重に検討する必要があります。過度な節税対策には十分注意しましょう。相続税について何かお困りのことがあれば、私たち「小谷野税理士法人」が全力でサポートしますので、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
税理士「今野 靖丈」

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