『考えてみれば、日本の私たちは、他人には礼儀正しいし、気を遣うのに、その人が自分に面倒をかけてくる存在になると、途端に冷淡になる。
私たち日本人が重んじる《和》は、実は相互の深い親切心のもとで成り立っているわけではなく、表面的なのかもしれない。
人でなしとは思われない程度の親切と、身内以外の人に迷惑をかけるくらいなら切腹するぐらいの遠慮をもってして、
かろうじて機能している繊細な絆だ。言わずに察する文化で支え合っている私たちは、そのルールを無視する人間に接すると、著しく憤慨して疎外する。
憤慨は動揺の裏返し、疎外は怯えの裏返しだ。』
綿矢りさ著『かわいそうだね?』より。
目的にかかわらず、『決まっているから』という理由で、暗に守ることを強制されているようなルールというのが世の中にはけっこうあります。
ビジネスマナーなんかにありがちですが、電話の用件がすんだら、かけた方から切るのがマナー(あれ、逆?)だと言われても一概には納得できないのが心情です。
もちろん、相手の話が終わっていないかもしれないうちに電話を受けた側が切ってしまう可能性を考えれば当然のことなのかもしれませんが。
しかしながら、上記の引用のとおり、礼節を逸した行動をとる人を見ると、心に冷たい風が吹く感触も、わからないではないです。
難しくないルールは簡単に守りたい。
そんなところですかね。
ではまた。