2014年度のふるさと納税による寄付獲得額で日本一になった自治体は、日本の陸路最西端に位置する長崎県平戸市でした。その額は14億円を超え、同市の市民税の収入を上回ったのだそうです。どうしてそのような結果が得られたのか、その舞台裏を同市の黒田成彦市長が本にまとめ出版しています。
キーワードは、「「ないものねだり」から「あるもの磨き」」。
ないものに拘らず、あるものを磨き活用する、という意識の転換です。
2009年に市長に就任後、政策決定のスピードアップを図り、意思疎通の精度を高めるため、若手職員が市長と直接意見交換を図る場として、会費制による自由参加型の「意見交換会」(いわゆる呑み会)を定期的に開催することを始めたそうです。部長・課長などの管理職は参加できないルールにもしたとか。その試みの1回目のメンバーであった一若手職員が、ふるさと納税制度活用のアイデアを進言し、ほとんど1人で推進したのだそうです。
具体的な施策については「逆転の発想「10の戦略」」として次のようにまとめられています。一般的には「弱み」である点を、独自の「強み」に変える様々な試みです。
01.
従来「待ちの姿勢」だったふるさと納税制度を、ゲーム性のある楽しく戦略性のあるシステムに変える
02.
「売れ筋商品を幅広く揃える」から「平戸産へのこだわり」を徹底し、少しぐらい高値でもよい商品を揃える戦略に変更
03.
定時定量供給でなければ成立しない「商品ブランド」戦略から、季節ごとに少量多品目を提供する「平戸コーナー」の設置で「地域ブランド」戦略へ転換
04.
カタログを単なる商品紹介から、読んで、見て、楽しいものにする。このワクワク感が寄付につながる。
05.
「お礼の品」という一回きりのお付き合いから、ポイントの永年繰り越し可能で「価値の継続」「貯める楽しみ」を演出し、長いお付き合いとなる「絆」づくりへ
06.
1品種をまとめる方が効率がよいという発想ではなく、少量を組み合わせたバラエティ溢れるパッケージで、消費者のニーズに応えていく
07.
商品価値は、単に市場価格で決まるのではなく、生産者のこだわりや生産地の歴史・環境などが醸し出す「物語」によって見出される
08.
返礼品に選ばれないと思われていた高額な商品が、ポイントの永年繰り越し制度によって選択可能になり、平戸市ふるさと納税の魅力をけん引
09.
生産能力や季節的な制約によって数量が限定される商品は、頒布方式や会員限定特典として品切れを起こさないような仕組みに進化
10.
行政にとっては特定の事業者を選ぶことが困難と思われるが、平戸市では4団体に絞り込んだことでこの団体に参加する構成組合員全員と取引が可能となった
本書を読んだ感想をまとめると、できないことに拘り何もしないのではなく、できることやできるかもしれないことに着々と挑戦することが、やはり大事だな、と。改めて思いました。