多摩大学「現代世界解析講座ⅩⅣ」の第8回目(11月25日)は、多摩大学グローバルスタディーズ学部の堂下恵(ドウシタメグミ)教授による「ポスト・コロナの観光に向けて―これまでの時代の課題と観光発展の関係」でした。
1.観光の歴史
観光とは、①誰もが、②安価で、③苦痛なく楽しくできる旅をいいます。
観光の起源は、19世紀のイングランドにおいて都市労働者が娯楽を目的として鉄道で海へ出かけたこととされます。
世界初のパックツアーは、労働者の飲酒が社会問題となった時代に、牧師で禁酒運動家のトーマス・クックが、禁酒運動大会の参加者に向けて、鉄道会社に団体割引をさせて貸切列車を運行させたのが始まりです。観光が飲酒に代わる新しい娯楽として位置付けられました。
第二次大戦後には、ヨーロッパ経済復興支援計画(マーシャルプラン)の一政策として、ヨーロッパ経済復興のためアメリカ国民のヨーロッパ観光が奨励されました。
資本主義と共産主義が対立した冷戦時代は、“観光は平和のパスポート”として平和を実現するための活動とされました。
20世紀後半に地球環境問題が深刻化すると、環境にやさしい観光形態が様々に提案されました(Ecotourism、Green tourism、Rural tourism、Sustainable tourism・・・・ )。
2.ポスト・コロナの観光に向けて
新型コロナウイルス感染前後の観光を比較すると、2019年に日本を訪れた外国人旅行者が3,188万人と過去最高を記録したのに対して、2020年のそれは411万人と87%減少しました。
世界の観光研究者によれば、2022年にインバウンドが復調し、2024年になればコロナ前に戻るという見通しが半数を占めます(ただ、オミクロンの影響は反映されていないと思います~筆者注)。
ポスト・コロナのキーワードは、
①自然や田園・田舎への観光と新たな適応を意味するSustainable and resilient、
②国内観光のDomestic、
③旅行者が安心・安全だと感じるSafe and secure、の3点です。