会計・税務の知識

2018年01月25日 発行小規模宅地等の特例の改正

はじめに

相続税における優遇措置の1つに小規模宅地等の特例があります。

本特例は節税効果が大きく、納税者の関心も高いと思われますが、

平成30年度税制改正で見直しが予定されています。今回はその改正内容についてご紹介します。

なお、改正案は平成30年4月1日以後に相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税について適用されます。

ただし、下記3.は同日前から貸付事業の用に供されている宅地等については適用されません。

 

 

1.小規模宅地等の特例の概要

小規模宅地等の特例とは、個人が相続又は遺贈により取得した一定の宅地等のうち、

本特例の適用を受けるものとして選択をしたもので限度面積までの部分(小規模宅地等)については、

相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、評価額を80%又は50%減額する制度です。

財産を取得した相続人の生活基盤を保護するための相続税上の優遇措置の1つですが、

上記のとおり最大で80%と減額の効果が大きいため、本特例が適用できるかどうかは非常に重要と考えられます。

 

 

2.「家なき子」特例の範囲の見直し

被相続人の居住の用に供されていた宅地等について、取得者が被相続人の配偶者や同居親族の場合だけでなく、

同居していない親族の場合でも、一定の要件を満たせば小規模宅地等の特例が適用されます

(いわゆる「家なき子」特例)。改正案では、本特例が適用される「家なき子」に該当するための主な要件が見直されています。

現行制度 改正案
①被相続人に配偶者・同居する相続人がいないこと

②相続開始前3年以内に自身又は自身の配偶者の所有する家屋に居住したことがないこと

①左記と同様

②相続開始前3年以内に以下が所有する家屋に居住したことはないこと

・自身又は自身の配偶者

・3親等以内の親族

・特別の関係のある法人

③相続開始時に居住していた家屋を過去に所有していないこと

 

いずれも形式的に「家なき子」に該当する状態を作り出すことで本特例の適用を受け、税負担を少なくすることを防止するための改正といえます。

 

 

②の見直しにより、例えば独居する相続人の持ち家の敷地を、相続開始前まで子の持ち家に住んでいる孫に遺贈するケースでは、現行制度上は本特例の対象になりますが、改正案では対象外になります。

 

 

また③の追加により、例えば相続開始前3年超以前に持ち家を売却し、

売却後ただちに売却先から賃借して相続開始まで住み続けることで

形式的に「家なき子」の状態を作り出せば現行制度上は本特例の対象になりますが、改正案では対象外になります。

 

 

3.貸付事業用宅地等の範囲の見直し

現行制度では、相続開始直前において被相続人等の貸付事業の用に供されていた宅地等が本特例の対象でした。

改正案では相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された宅地等

(相続開始前3年を超えて事業的規模で貸付事業を行っている場合は除く)が

本特例の対象から除外されています。

この改正により、例えば相続開始前に一時的に現金を不動産に換えることで本特例を適用し、

税負担を少なくするといった手法は採用できないことになります。

 

 

4.居住の用に供されていた宅地等の範囲の見直し

改正案では、介護医療院(平成30年4月から整備が始まる、

要介護者に対し長期療養のための医療と日常生活上の世話を一体的に提供する

新たな介護保険施設)に入所したことにより被相続人の居住の用に供されなくなった宅地等についても、

新たに本特例の対象となりました。

 

 

おわりに

小規模宅地等の特例は、節税効果が大きいだけに、

その適用可否については慎重に検討する必要があります。

今回は税制改正大綱に基づきご紹介しましたが、

今後の法令通達により変更の可能性があるためご留意ください。(担当:伊藤)

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