はじめに
中小法人が減価償却資産を購入した場合において、その取得価額が30万円未満のものについては、
通常の減価償却によらずに、取得・供用年度に一時の損金にする等の処理が認められます。
今回は、中小法人を前提とし、減価償却資産を取得した場合の処理方法と固定資産税の関わりについて解説します。
1. 少額の減価償却資産
法人が取得した減価償却資産のうち次のいずれかに該当するものについては、
少額の減価償却資産となり、事業供用事業年度において、
その取得価額を損金経理した場合には即時償却をすることができます。
(1) 使用可能期間が1年未満のもの
(2) 取得価額が10万円未満のもの
≪法人税法施行令133条≫
2. 一括償却資産
取得価額が20万円未満の減価償却資産については、事業年度毎にその全部または特定の一部の合計額を一括し、3年間で償却する一括償却資産の損金算入の規定を選択することができます。
≪法人税法施行令133条の2≫
3. 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
中小企業者等(※)が、取得価額が30万円未満である減価償却資産を取得などして事業の用に供した場合には、一定の要件のもとに、合計額300万円を限度として即時償却をすることができます。
※資本金の額または出資金の額が1億円以下の青色申告法人で、常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人をいいます。
≪租税特別措置法67条の5≫
4. 取得価額が30万円以上の場合
減価償却資産として計上し、通常の減価償却処理により耐用年数に応じた期間で損金算入します。
5. 固定資産税との関わり
土地、家屋のほか、その資産の減価償却費が法人税の所得の金額の計算上、
損金の額に算入される償却資産については、固定資産税が課されます。
固定資産税は、1月1日(賦課期日)現在の土地、
家屋及び償却資産(これらを「固定資産」といいます。)の所有者に対し
その固定資産の価格をもとに算定される税額を、その固定資産の所在する市町村が課税する税金で、償却資産の評価額に1.4%を掛けた額が課税される仕組みになっています(東京都23区では、特例で都が課税)。
ただし、この固定資産税は、耐用年数1年未満または取得価額10万円未満の償却資産で一時に損金算入したもの、取得価額20万円未満で3年間の一括償却をしたもの、実質的に所有権が移転するリース取引に係るリース資産で取得価額が20万円未満のものは、その対象から除かれています。
よって、前述の取得価額が少額の資産のうち、10万円未満の資産、または20万円未満の資産で一括償却資産としたものについては、課税対象資産からは除かれ、固定資産税の納税は不要です。
これに対し、取得価額が30万円未満の「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」を適用した資産については、固定資産税の課税対象となります。
なお、自動車税の課税対象資産、無形固定資産などは償却資産申告の対象外となります。また、各申告先の課税標準額が150万円未満の場合も固定資産税は課されません。
おわりに
取得価額別の法人税と固定資産税の取り扱いは下表のとおりです。
少額減価償却や一括償却資産であっても、減価償却資産として処理をする場合、
固定資産税の課税対象となります。(担当:新谷)
取得価額 | 少額減価 償却資産 |
一括 償却資産 |
少額減価償却資産 の損金算入の特例 |
固定資産税の課税対象 |
10万円未満 | ○ | ○ | ○ | × |
10~20万円未満 | × | ○ | ○ | × |
20~30万円未満 | × | × | ○ | ○ |
30万円以上 | × | × | × | ○ |