会計・税務の知識

2025年11月05日 発行口座管理法・口座登録法の概要

はじめに

 

2024年4月に施行された「口座管理法」と「口座登録法」は、マイナンバー制度と金融機関の預貯金口座を連携させることで、行政サービスの効率化と国民の利便性向上を図ることを目的とした新たな法制度です。これらの制度は、災害時や相続時における迅速な資産確認、公的給付の円滑な支給など、日常生活に密接に関わる場面での活用が見込まれます。

 

 

 

1.口座管理法とは

 

正式名称: 預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律  

 預貯金者の意思に基づいて、マイナンバーを用いて金融機関の預貯金口座を照会・把握することを可能にする制度です。金融機関は、口座開設や名義変更などの重要な取引の際に、預貯金者がマイナンバーとの紐づけを希望するかどうかについて、確認しなければなりません。

 

 

2.口座管理法の目的と活用例

 

 本制度は、相続や災害などの緊急時において、資産状況を迅速に確認できるようにすることを目的としています。

 たとえば、相続人が故人の口座情報を把握できない場合でも、マイナンバーを通じて金融機関に照会することで、該当する口座情報を取得することが可能です。これにより、相続手続の初期段階における情報収集が円滑に進み、遺産分割や税務申告など、後続の手続にも良い影響を及ぼすと考えられます。

 また、災害時には、避難先の金融機関において本人確認を行うことで、必要な資金を速やかに引き出すことが可能となります。通帳や印鑑を紛失していても、マイナンバーと本人確認書類により口座情報の照会と資金の引き出しが可能となるため、生活再建の支援が迅速に行えるようになります。

 このような仕組みにより、災害対応の現場における混乱の軽減が期待されるとともに、行政と金融機関の連携による支援体制の強化にもつながると見込まれます。

 

 

3.口座登録法とは

 

正式名称:公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律

 給付金などを受け取るための「公金受取口座」を国(デジタル庁)に登録し、マイナンバーと紐づける制度です。登録は、マイナポータル、確定申告時の申請、または金融機関の窓口等を通じて行うことができます。

 

 

 

4.口座登録法の目的と活用例

 

 本制度は、本人名義の口座情報とマイナンバーを事前に登録することで、給付金の申請時に口座情報の記載や通帳の写しの提出が不要となり、手続の簡素化を図ることを目的としています。

 特に、緊急時の給付金支給や定期的な支援金の受け取りにおいては、迅速かつ確実な支給が可能となります。

 たとえば、感染症拡大時の特別定額給付金や、物価高騰に伴う生活支援金など、国民全体に広く支給される給付金の場面では、事前に登録された情報に基づいて自動的に振込処理が行われるため、申請漏れや支給遅延のリスクが抑えられるとされています。このような仕組みにより、行政手続の効率化が進むとともに、給付金の受け取りがよりスムーズになることが期待されます。

 

 

 

5.両制度の比較

 

 

 

 

おわりに

 

 口座管理法・口座登録法は、災害時や給付金支給を迅速かつ確実に行うための制度です。今後は、高齢者やデジタルに不慣れな方への支援が進み、制度の違いをわかりやすく伝える工夫も求められます。金融機関や行政の対応強化により、制度の実効性が高まり、誰もが安心して利用できる環境が整っていくと考えられます。

 

(担当:吉原)

 

 

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