はじめに
前回、「監査対応_減損会計編(1)」として、減損会計の総論的な解説をしてまいりました。
今回は、実務のポイントを解説していきます。
1.減損会計の重要なポイントとは?
早速、減損会計の重要なポイントについて確認していきます。前提として、前回の記事「3.減損損失計上の5ステップ」はすべて重要なのですが、その中でも特に重要なポイントや場面は以下になります。
一つひとつ、なぜ重要なのかも合わせ、ポイントを解説していきます。
・減損の兆候の判定
・減損損失の認識の判定
・減損損失の注記
2.減損の兆候の判定
減損の兆候の判定が重要な理由は、ずばり、減損の兆候に該当しなければ、次のステップ、さらに、最終的に減損損失を計上する必要がないからです。
会計監査の観点からは、4つの例示に沿って、減損の兆候の判定に誤りがないか、かなり精緻に確認します。
2期連続赤字の判定については、判定に使用している数値が恣意的な数値でないか、共通費の配賦が恣意的に行われていないかの観点から主に確認されます。前者については、各グループ単位の収益、費用を試算表と突合したり、経営会議の報告資料との整合を確かめたりするなどして、データの信頼性を担保します。後者については、会社が設定した方針に沿って実際に配賦されているか、再計算を行うことが一般的です。
使用範囲又は方法について回収可能価額を著しく低下させる変化、また、経営環境の著しい悪化については、会計監査の過程で得た情報との整合性や、また、取締役会議事録等に当該事業に該当がないかの観点から、会社の判定に誤りがないか確かめます。
市場価額の著しい下落については、一般的にグループ単位で主要な資産となる土地に主眼が当てられます。一般的には固定資産税評価額が用いられますが、重要性が高い土地であれば、不動産鑑定評価を監査証拠とする場合もありますので、該当がありそうであれば、早めに監査人に鑑定評価の必要性について確認を行います。
3.減損損失認識の判定
認識の判定が重要な理由は、以下の2点です。
・たとえ減損の兆候に該当しても、認識が不要であれば、減損損失を計上する必要がないため。
・判定の対象となる割引前将来キャッシュ・フローについては、経営者の主観によるため、数値を意図的に操作することで、認識の判定にて減損損失の計上を不要にできる余地があるため。
会計監査の観点からも重要なことは、ずばり「割引前将来キャッシュ・フロー」が意図的に帳簿価額を上回る金額で設定されていないかです。
当該金額については、定量的にも、定性的にも監査人に対し説明義務が生じます。前者の観点からは、当該数値が、会計監査の過程で得られた監査証拠等(例えば、5カ年計画等の事業計画)と不整合がないか、後者の観点からは、当該将来キャッシュ・フローの実現性が、客観的な事実に基づき説明されているか否かの観点から重要になります。
さらに、減損の兆候に該当しても、必ずしも減損損失を計上しなければならないわけではなく、将来キャッシュ・フローにて合理的な説明が付けば、減損損失の計上が不要となるため、認識の判定資料の管理作成が重要になります。
4.減損損失の注記
意外と見落としがちですが、減損会計については、計算書類上、以下の2つの開示が要求されます。計算書類及び財務諸表提出直前で慌てて対応することのないよう、文案から事前に相談しておくことが望ましいです。
・会計上の見積りに関する注記
・その他の注記として、「減損損失に関する注記」
前者の詳細については、会計上の見積りの開示に関する会計基準6項及び7項、後者の詳細については、固定資産の減損に係る会計基準の適用指針55項をご参照ください。
おわりに
いかがでしたでしょうか。次回は税効果会計について解説していきます。
(担当:森)