会計・税務の知識

2024年06月27日 発行(スタートアップ支援特集)監査対応_棚卸立会編

はじめに

 

 

前回、現金等実査について解説していきました。

今回は第二段として、監査人が実施する棚卸立会について、実地棚卸も含め、手続きの趣旨や対応方法を解説していきます。

 

 

1.監査人が行う棚卸立会とは?

 

 

日本公認会計士協会の会計・監査用語かんたん解説集によれば、棚卸立会とは、実地棚卸と合わせ、次の通り定義されています。

「棚卸資産を有する会社は、事業年度末に倉庫などに保管されている棚卸資産の数量を数え、帳簿の記録と一致しているかどうかを確認している。この作業を、実地棚卸と言い、会社が行う実地棚卸の現場に監査人が同席し、その実施状況を視察、あるいは一部について実際に監査人自身がカウントすることによって、在庫数量の妥当性を確かめることを、「立会」と言う。」

実地棚卸は監査対象会社によって行われ、棚卸立会は監査人によって行われます。

 

 

2.棚卸立会の実施趣旨

 

棚卸立会の趣旨は、大きく3つです。

 

一つ目は、監査対象会社によって作成された品目や金額、数量等が記載された棚卸資産の帳簿記録と監査人が実際にカウントした数量が一致しているか、確かめる目的です。

監査人の間では、(資産の実在性に対する)実証手続と呼んでいます。棚卸資産は通常、単価×数量で金額が確定するため、単価については、別の監査アプローチが採用されます。

なお、当該手続きは資産の実在性に対する監査証拠のみでなく、資産の状態に関連する監査証拠(資産の評価の妥当性)を入手することができます。

 

二つ目は、会社が整備した実地棚卸のルールにそって行われているか、確かめる目的で行われます。

監査人の間では、リスク評価目的といい、一つ目の実証手続と合わせて行われることがほとんどです。

一般的には、監査人側において、棚卸立会の前に実地棚卸のマニュアル等を入手し、実地棚卸がどのように行われているか確認の上、実地棚卸の作業自体に問題がないか、事前に確認を行います。

現金実査の時同様、期中に行われる月次、週次の実地棚卸や中間棚卸に立会い、テストカウントを行ったり、実地棚卸の様子を観察したりすることにより、監査上のリスク評価を行う実務もあります。

 

三つ目は、単純なけん制目的です。現金実査と同様の趣旨のため、詳細は割愛します。

 

 

.実地棚卸の時期について

 

実地棚卸は、期末時点の資産残高を確認する趣旨から、期末日に行われることが一般的です。

場合によっては、社内体制の問題、及び外部の棚卸業者にお願いする都合等で期末日前に実施の上、当該実施日から期末日までの数量を継続記録することによる実務も見られます。

また、循環棚卸として四半期や月次等の期間を設けた上で、すべての棚卸資産が一通りカウントされるようにスケジュールを組んで行っている実務や、さらに、資産の重要性によって期末棚卸と他の方法を併用している実務など、実施方法は様々です。

 

 

.実地棚卸の時期について

 

監査人による棚卸立会は、監査対象会社の実地棚卸の方法によって変わってきます。

まずは、自社の棚卸方法を説明の上、必要に応じてマニュアルを提供し、棚卸立会の時期や、拠点が複数ある場合は、実施する拠点を明確にするなど、対応範囲を明確にしましょう。

対応範囲が明確になったところで、当日の流れの確認と、棚卸立会に必要になる資料を準備します。

実地棚卸前の棚卸責任者へのヒアリングや、実地棚卸後の監査人の講評などが考えられますので、当日の流れは確実に押さえておきましょう。

資料は、一般的には、立会い拠点の図面、実地棚卸表などのコピーを依頼されますが、監査人により異なるため、事前に確認するようにします。

また、当日に棚卸立会の対応を行う従業員への事前共有も必ず行うようにします。

 

 

おわりに

 

いかがでしたでしょうか。少しでも皆様の監査対応の一助となる記事になったようでしたら、幸いです。次回は残高確認状編です。

 

出典・参考(2024年6月12日 閲覧)

・日本公認会計士協会ホームページ

https://jicpa.or.jp/cpainfo/introduction/keyword/post-27.html

(担当:森)

 

 

PAGETOP

お問い合わせ