はじめに
日本経済の実態を把握するためには、企業活動の詳細なデータが不可欠です。企業の売上や利益、設備投資、人件費などの情報は、経済政策の立案や景気の分析において重要な役割を果たします。
こうした情報を体系的に収集・分析するために実施されているのが「法人企業統計調査」です。
1.法人企業統計調査の概要
法人企業統計調査は、財務省の財務総合政策研究所が実施する統計法に基づく「基幹統計調査」です。対象は日本国内に本店を有する営利法人であり、企業の財務諸表に基づいて、売上高、利益、資産、負債、人件費などのデータを収集します。
調査は以下の2種類に分かれています。
(1)年次別調査
すべての営利法人を対象に、確定決算に基づくデータを収集(毎年9月に結果公表)
(2)四半期別調査
資本金1,000万円以上の法人を対象に、仮決算ベースで四半期ごとのデータを収集(3月・6月・9月・12月に結果公表)
昭和23年に年次別調査が、昭和25年(1月~3月期)に四半期別調査が開始され、現在まで継続的に実施されています。
2.調査の方法と対象
調査は、郵送またはオンラインで企業に調査票を配布し、企業が自ら記入して提出する「自計記入方式」で行われます。調査対象の選定は、資本金規模や業種に応じて層化抽出され、以下のように分類されます。
|
調査対象法人の |
資本金5億円以上 |
資本金1億円以上 |
資本金1億円未満 |
|
金融業、保険業以外 |
全ての法人を対象 |
資本金階層ごとに、さらに業種別に |
|
|
金融業、保険業 |
全ての法人を対象 |
(A)と同じ |
|
3.調査項目と内容
法人企業統計調査では、以下のような多岐にわたる項目が調査されます。
(1)損益計算書項目
売上高、営業利益、経常利益、純利益など
(2)貸借対照表項目
資産、負債、純資産
(3)人件費関連
役員・従業員数、給与、福利厚生費
(4)設備投資
固定資産の増減、ソフトウェア投資など
これらのデータは、企業の経営実態を把握するだけでなく、産業別・規模別の比較分析にも活用されます。
4.調査結果の活用
法人企業統計調査の結果は、以下のように幅広く活用されています。
|
政府の経済政策 |
月例経済報告やGDP速報の基礎資料 |
|
国民経済計算(SNA) |
企業部門の推計に利用 |
|
民間シンクタンクや研究機関 |
景気動向分析や産業研究 |
|
金融機関・投資家 |
企業の財務健全性や投資判断の材料 |
また、調査結果はe-Statや財務省のウェブサイトで公開されており誰でも閲覧・活用が可能です。
おわりに
法人企業統計調査は、日本経済の「健康診断」とも言える重要な統計であり、経済の実態を把握するうえで欠かせない存在です。
我が国の発展にとって重要なものであり、今後も活用が期待されます。
(担当:新谷)
出典:財務省 財務総合政策研究所ウェブサイト
https://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/index.htm