会計・税務の知識

2025年11月05日 発行法人企業統計調査とは

はじめに

 

日本経済の実態を把握するためには、企業活動の詳細なデータが不可欠です。企業の売上や利益、設備投資、人件費などの情報は、経済政策の立案や景気の分析において重要な役割を果たします。

こうした情報を体系的に収集・分析するために実施されているのが「法人企業統計調査」です。

 

 

 

1.法人企業統計調査の概要

 

法人企業統計調査は、財務省の財務総合政策研究所が実施する統計法に基づく「基幹統計調査」です。対象は日本国内に本店を有する営利法人であり、企業の財務諸表に基づいて、売上高、利益、資産、負債、人件費などのデータを収集します。

調査は以下の2種類に分かれています。

(1)年次別調査

すべての営利法人を対象に、確定決算に基づくデータを収集(毎年9月に結果公表)

(2)四半期別調査

資本金1,000万円以上の法人を対象に、仮決算ベースで四半期ごとのデータを収集(3月・6月・9月・12月に結果公表)

 

昭和23年に年次別調査が、昭和25年(1月~3月期)に四半期別調査が開始され、現在まで継続的に実施されています。

 

 

 

2.調査の方法と対象

 

調査は、郵送またはオンラインで企業に調査票を配布し、企業が自ら記入して提出する「自計記入方式」で行われます。調査対象の選定は、資本金規模や業種に応じて層化抽出され、以下のように分類されます。

 

調査対象法人の
選定方法

資本金5億円以上

資本金1億円以上
5億円未満

資本金1億円未満

金融業、保険業以外

全ての法人を対象

資本金階層ごとに、さらに業種別に
分類したうえで、それぞれの層から、
コンピュータによって無作為に選定
(A)

金融業、保険業

全ての法人を対象

(A)と同じ

 

 

 

3.調査項目と内容

 

法人企業統計調査では、以下のような多岐にわたる項目が調査されます。

(1)損益計算書項目

売上高、営業利益、経常利益、純利益など

(2)貸借対照表項目

資産、負債、純資産

(3)人件費関連

役員・従業員数、給与、福利厚生費

(4)設備投資

固定資産の増減、ソフトウェア投資など

 

これらのデータは、企業の経営実態を把握するだけでなく、産業別・規模別の比較分析にも活用されます。

 

 

 

4.調査結果の活用

 

法人企業統計調査の結果は、以下のように幅広く活用されています。

 

政府の経済政策

月例経済報告やGDP速報の基礎資料

国民経済計算(SNA)

企業部門の推計に利用

民間シンクタンクや研究機関

景気動向分析や産業研究

金融機関・投資家

企業の財務健全性や投資判断の材料

 

また、調査結果はe-Statや財務省のウェブサイトで公開されており誰でも閲覧・活用が可能です。

 

 

 

 

おわりに

 

法人企業統計調査は、日本経済の「健康診断」とも言える重要な統計であり、経済の実態を把握するうえで欠かせない存在です。

我が国の発展にとって重要なものであり、今後も活用が期待されます。

 

(担当:新谷)

出典:財務省 財務総合政策研究所ウェブサイト

https://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/index.htm

 

 

PAGETOP

お問い合わせ