相続税の払いすぎに注意!よくある原因や還付請求の方法について解説

相続税の払いすぎに注意!よくある原因や還付請求の方法について解説

相続税は数十万、時には数百万と高額になることも珍しくありません。そんな相続税ですが、実は本来納付するべき金額よりも多く払っているケースが多くみられます。

過去に払いすぎた相続税は、還付請求を行えば返金を受けられます。還付請求を受けられる旨について税務署からの通知は来ないため、納税者本人による自主的な手続きが必要です。

今回は相続税を払いすぎた場合の手続きについて詳しく解説します。

前提|相続税を払いすぎた場合は還付請求が可能、税務署からの通知は来ない!

前提として相続税を払いすぎた場合、本来納付するべき税額と払いすぎた分の差額部分について還付請求が可能です。還付請求の内容が適切と認められれば、払いすぎた分が後日返金されます。

そして、税金の払いすぎがあっても税務署からの通知はありません。相続税のような申告納税制度を採用している税金は申告書が正確な内容という前提で処理され、税務署側ですべての申告書の内容の細かな精査は行われないためです。

過少申告の疑いがある場合は税務調査が行われる可能性が高いものの、過大申告については放置されます。払いすぎた相続税の還付は可能ですが、還付を受けるためには納税者本人が自主的な手続きを行う必要があります。

関連記事:相続税の税務調査の時期はいつ?調査期間・範囲や調査が来るのが多いタイミングを解説!

相続税を払いすぎてしまう原因3選

贈与税の無申告の場合の事項について

申告納税制度を採用している税金の中でも、相続税は特に払いすぎが発生しやすいです。以下では、相続税を払いすぎてしまうよくある原因を3つ紹介します。

[よくある原因1]特例に気付かなかった、特例の適用を忘れてしまった

払いすぎの原因として多くみられるのが特例の適用漏れです。

相続税には特例制度が多く設けられていますが「要件を満たせば自動で適用される」わけではありません。特例の適用を受けるには、相続税申告書にその旨を記載し、特例ごとに定められた書類を添付する必要があります。

要件を満たしている特例に気付かなかった・特例の適用を忘れてしまった等の理由で払いすぎになるケースが多いです。

関連記事:【税理士監修】相続税は節税できる?利用したい控除と効果的な対策方法/

[よくある原因2]土地評価額の計算方法を誤ってしまう

土地評価額の計算が原因で相続税の払いすぎになるケースも多くみられます。

土地の相続税評価額の計算方法はやや特殊です。土地の形状や利用方法などによって計算方法が変わります。同じ土地であっても、計算方法の違いによって評価額が数百万円〜数千万円変わるケースは珍しくありません。

土地の評価額を高く計算してしまい、結果として必要以上に高額の相続税を支払ってしまう事例は多く存在します。

関連記事:【税理士監修】相続税の土地評価額の計算方法とは?土地評価額を抑える方法も解説!

関連記事:【税理士監修】土地の評価額は複数存在する。評価額の調べ方や計算方法、注意点も解説

[よくある原因3]相続への専門性が低い税理士だった

「自分は税理士に依頼したから大丈夫」「税理士に依頼すれば相続税の払いすぎは起こらない」

このように考える人もいるでしょう。しかし、すべての税理士が相続税申告に詳しいわけではありません

令和5年度の相続税申告件数は約23万件、令和5年度の税理士登録者数は81,280人でした。税理士1人につき年間の申告件数は単純計算で3件弱です。納税者本人が申告するケースや、多くの相続税申告をこなす税理士も存在するため、実際の件数はもっと少ないと考えられます。

相続税はルールが複雑かつ特例が多いため、正確な相続税計算・申告のためには経験とノウハウが求められます。相続税申告の経験が少ない税理士に依頼すると、計算ミスや特例の適用漏れ等により、相続税の払いすぎが起こる可能性が高いです。

参考:令 和 5年 分 相 続 税 の申 告 事 績 の概 要税理士制度|国税庁

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相続税申告の経験豊富な税理士がお客様に寄り添って相続手続きのサポートを行います。

払いすぎた相続税の還付請求の流れ

相続税の申告書

前述の通り、払いすぎた相続税の返金を受けるには還付請求の手続きが必要です。そして、払いすぎた税金を取り戻すための手続きを「更正の請求」といいます。

相続税の更正の請求について流れに沿って詳しく解説します。

[手順その1]過去に提出した相続税申告書や書類を見直す

まずは過去に提出した相続税申告書や書類の見直しを行い、相続税の還付を受けられるか確認しましょう。

書類の確認に際して特に注意するべきポイントは以下の3点です。

  1. 特例を漏れなく適用しているか
  2. 不動産の相続税評価額の計算が正しいか
  3. 相続財産から債務等を漏れなく控除しているか

特に重要なのは2の相続税評価額の計算についてで、なかでも土地の相続税評価額は必ず見直すべきといえます。前述のように土地評価額の計算方法は特殊で、計算方法が少し異なるだけで評価額が大きく変わる可能性が高いです。相続財産に土地が含まれている場合は、相続税の払いすぎが起きていないかの確認が必須といえます。

なお、過去の書類を見直す際は、3の「相続財産から債務等を漏れなく控除しているか」も確認しましょう。課税遺産総額を最小限に抑えるためには、相続財産から債務控除を漏れなく差し引く必要もあります。税額に与えるインパクトはあまり大きくないケースが多いとはいえ、税額が減る可能性がある以上は確認が必須です。

関連記事:相続税対策|相続財産から債務控除できるもの

[手順その2]更正の請求書を作成する

相続税を払いすぎている状態である旨を確認できたら、更正の請求書を作成しましょう。更正の請求書の様式は国税庁の公式サイトでダウンロード可能です。また、e-Taxを利用した電子申告による提出もできます。

更正の請求書とあわせて、過大申告の事実を証明する書類(相続税の再計算における根拠書類)の提出も必要です。

参考:B1-27 相続税及び贈与税の更正の請求手続|国税庁

[手順その3]請求が認められた後に還付が行われる

更正の請求手続きを行うと、税務署で内容の審査が行われます。審査により更正の請求が認められれば還付金が振り込まれます。

更正の請求書の提出から還付金振込までの大まかな流れは以下の通りです。

  1. 税務署で更正の請求の審査が行われる
  2. 書類到着から約3ヵ月後に、審査結果が記載された通知書が届く
    更正の請求が認められた場合は「相続税の更正通知書」が、認められなかった場合は「更正すべき理由がない旨の通知書」が届きます
  3. 2の約1ヵ月後に、還付金の額が記載された「国税還付金振込通知書」が届く
  4. 3の約2週間後に還付金が振り込まれる

更正の請求書の提出から還付金の振込まで4〜5ヵ月程度、場合によってはより長い時間を要します。また、振込が実行された後は、振込額と3で届いた国税還付金振込通知書の内容に相違がないか必ず確認しましょう。

相続税の払いすぎに関する注意点3つ

最後に、相続税の払いすぎに関する注意点を3つ紹介します。

[注意点その1]更正の請求の期限は申告期限から5年以内

払いすぎた相続税は更正の請求によって還付を受けられると紹介しました。

そして、更正の請求は申告期限から5年以内に行う必要があります。相続税の申告期限は相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内です。すなわち相続税の更正の請求は、相続開始を知った日の翌日から5年10ヵ月以内が期限となります。

関連記事:【税理士監修】遺産相続に期限はあるの?期限切れのリスクと手続きのポイントを解説

[注意点その2]更正の請求が受理されるとは限らない

更正の請求の手続き後、請求が認められた場合は「相続税の更正通知書」が届くと紹介しました。認められた場合と表現している通り、更正の請求が受理されるとは限りません。審査の結果によっては、更正の請求が認められないこともあります。

なお税務署長による処分に不満がある場合は、処分の取消しや変更を求める不服申立ての手続きが可能です。

参考:税務署長の処分に不服があるとき|国税庁

[注意点その3]相続税の更正の請求には専門知識が必要

相続税の更正の請求では以下のような作業が必要です。

  • 要件を満たしているのに適用漏れとなっている特例の有無の確認
  • 土地や建物などの相続税評価額の再計算
  • 更正の請求に必要な各種書類の手配

いずれの作業も相続税に関する高度な専門知識が求められます。

そもそも相続税を払いすぎてしまう原因は、相続税に対する理解が浅い状態で申告を行うことといえるでしょう。相続税の専門知識がないままに進めてしまえば、更正の請求も誤った内容になる恐れがあります。

払いすぎた相続税は還付を受けられる!更正の請求は専門家に相談するのが安心

特例の適用漏れや土地評価額の計算ミス等により、相続税を払いすぎてしまうケースは多くみられます。相続税を払いすぎてしまった場合、更正の請求手続きによって還付を受けられる可能性が高いです。

相続税の更正の請求の期限は、相続開始を知った日の翌日から5年10ヵ月以内です。更正の請求の手続き完了から還付金の振込まで数ヵ月かかるため、早めに手続きをしましょう。

なお、相続税の更正の請求には、相続税に関する高度な専門知識が必要です。払いすぎた相続税の還付を受けられる可能性を上げるため、相続税に詳しい専門家への相談をおすすめします。

相続税申告は『やさしい相続相談センター』にご相談ください。

相続税の申告手続きは初めての経験で不慣れなことも多くあると思います。
しかし適正な申告ができなければ、後日税務署の税務調査を受け、思いがけず資産を失うこともある大切な手続きです。

やさしい相続相談センターでは、お客様の資産をお守りする適切な申告をサポートさせていただきます。
初回相談は無料です。ぜひご相談ください。

また、金融機関不動産関係者葬儀関連企業税理士・会計士の方からのご相談やサポートも行っております。
小谷野税理士法人の相続専門スタッフがお客様へのサービス向上のお手伝いをさせていただきます。

監修者

山口 美幸

山口 美幸 小谷野税理士法人 パートナー税理士・センター長

96年大手監査法人入社、98年小谷野公認会計士事務所(小谷野税理士法人)入所。

【執筆実績】
「いまさら人に聞けない『事業承継対策』の実務」(共著、セルバ出版)他

【メッセージ】
亡くなった方の思い、ご家族の思いに寄り添って相続の手続きを進めていきます。税務申告以外の各種相続手続きも、ワンストップで終了するように優しく対応します。