会計・税務の知識

2020年06月18日 発行年末調整手続きの電子化

はじめに

令和元年10月1日に国税庁より年末調整手続きの電子化に向けた取り組みについて発表されました。

令和2年10月以降、従業員が使用する「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア」が無償で提供される予定となっています。

 

1. 電子化による年末調整手続きの流れ

①従業員が保険会社等から控除証明書等を電子データで受領

②従業員が「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア」(「年調ソフト」)を国税庁ホームページ等からダウンロードし、
 受領した電子データをインポート(自動入力、控除額の自動計算)して年末調整申告書の電子データを作成

③従業員が、控除額が自動計算された年末調整申告書データ及び控除証明書等データを勤務先に提供

④勤務先が従業員から提供された電子データを給与システム等にインポートして年税額を計算

 

 

2.年末調整手続きの電子化によるメリット

<従業員側>

・控除証明書等がデータで取得できることから書面の保管が不要

・控除証明書等を紛失した場合の再発行手続きが不要

・控除対象保険料額等が自動転記されることから集計・記載(入力)が不要

<企業側>

・各種控除申告書の紙保存が不要

・各種控除申告書のチェック・入力事務が不要

・従業員への確認・訂正依頼が減少

・2年目以降、前年から変更のあった部分のみを修正することでより簡便に控除申告書を作成が可能

  従業員 企業
手続 年末調整申告書 控除額の計算 控除額の計算 給与システム等への取込
電子化前 手書き 手計算 手計算
(検算)
手入力
電子化後 自動入力 自動計算 自動計算
 (検算不要)
データを給与システム等にインポート

 

 

3.年末調整手続きにおいて電子データによる提供の対象となる書類

【年末調整申告書関係】

①扶養控除等申告書

②配偶者控除等申告書

③保険料控除申告書

④住宅ローン控除申告書

⑤基礎控除申告書(令和2年分から新設)

⑥所得金額調整控除申告書(令和2年分から新設)

【控除証明書等関係】

⑦保険料控除証明書

⑧住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除証明書

⑨年末残高等証明書

 

 

4.税務署への届け出

従業員から電子データを受領するにあたって事前に税務署へ「電磁的方法による提供の承認申請書」を提出し承認を受ける必要があります。
提出した月の翌月末日までに税務署長から承認通知又は承認しないことの通知がなければその申請書を提出した月の翌月末日に承認があったものとみなされます。
令和2年8月31日までに申請書を提出すれば9月30日までに承認されたこととなり10月1日から従業員からデータの提供を受けることができます。

 

 

5.従業員の準備

「年調ソフト」はスマートフォン版もあり、パソコンを持っていなくとも電子データを提供できます。

マイナポータル連携を利用する場合、複数の控除証明書等を一度の処理で取得することができるので、利便性がより高まりますが、マイナンバーカードの取得など、事前準備が必要になります。

 

 

おわりに

「年調ソフト」は住所・氏名・扶養親族等、翌年分に引き継ぎが可能です。また税制改正を受けて毎年改修されます。

年末調整手続きの電子化は従業員への周知・税務署への申請書の届け出・給与システムの改修などが必要になりますが、
一部分のみを電子化することも可能です。

(担当:吉原)

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