はじめに
法人が役員に対して支給する給与の額が損金として認められるには、定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与のいずれかに該当する必要があります。今回は役員の賞与に該当する事前確定届出給与について説明します。
また、国税庁より公表されている新型コロナウイルス感染症関連の税務上の取り扱いに記載されている、役員報酬の事例を紹介します。
事前確定届出給与とは、その役員の職務につき所定の時期に、確定した額の金銭、確定した数の株式(出資を含みます。以下同じ。)若しくは新株予約権又は確定した額の金銭債権に係る特定譲渡制限付株式若しくは特定新株予約権を交付する旨の定めに基づいて支給される給与で、納税地の所轄税務署長にその内容に関する届出をしているものを言います。これは定期同額給与と業績連動給与のどちらにも該当しません。
ここまで厳しく制限している理由としては、損金として認めてしまうと、多くの経営者に利益操作されてしまう可能性があるため、原則は損金に算入することが認められていません。
①原則
既存法人の場合、株主総会決議日から1か月を経過する日又は、会計期間開始の日から4か月を経過する日のいずれか早い日が届出の期限となります。
なお、新設法人の場合は、設立後から2か月を経過する日が届出期限となります。
②臨時改定事由が生じたことにより事前確定届出給与に関する定めをした場合
上記の①原則の日と臨時改定事由が生じた日から1か月を経過する日のうちいずれか遅い日が届出期限となります。
届出に記載した金額と1円でも差額が生じてしまうと全額損金不算入となります。また、届出に記載した月に支給しない場合でも、全額損金不算入になってしまいます。さらに未払金で計上してしまった場合でも、全額損金不算入となります。実際の支給が必要なので、注意が必要です。
なお、届出の内容と異なる場合でも、賞与の支給日が事業年度をまたいでおり、届出書提出事業年度は届出書どおりに支給し、翌期支給額のみ届出額と異なる場合には、翌事業年度に支給した賞与についてのみが損金不算入となります。
①臨時改定事由
役員の職制上の地位の変更や職務内容の重大な変更等がある場合(臨時改定事由)、その臨時改定事由発生日から1か月以内が届出の期限となります。
②業績悪化改定事由
経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情がある場合(業績悪化改定事由)、その事由により、定めの内容変更を行う株主総会などの決議日から1か月以内が届出の期限となります。
国税庁が公表しているFAQの税務上の取扱いにおいて、業績悪化事由による役員給与の減額について記載があります。既に感染症の影響を受けている場合だけではなく、現状では数値的指標が著しく悪化していないとしても、感染症の影響により、客観的な状況から急激に財務状況・経営状況が悪化する可能性が高い場合には、業績悪化改訂事由に該当すると示されています。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kansensho/pdf/faq.pdf
おわりに
役員賞与は、多額になることがあるため、事前確定届出給与の活用如何で税額に影響がでます。この制度を利用する際は、届出書の期限や様式、実際の賞与支給時を入念に確認する必要があります。
(担当:落合)