はじめに
2019年10月1日から、消費税が8%から10%に変更となりました。
これに伴い、年金を受給していても所得が前年の老齢基礎年金額(令和元年度分では779,000円)に
達しない人を対象に、「年金受給者生活支援給付」が始まります。
これは消費増税を財源とした社会保障の一環で、低所得者の増税負荷を軽減することが目的とされています。
本稿では、年金受給者生活支援給付金について紹介していきます。
1.支給要件
①65歳以上の老齢基礎年金受給者
②前年の公的年金等※1収入金額と、その他の所得の後継額が老齢基礎年金満額※2相当以下であること
③同一世帯の全員が市町村民税非課税であること
※1:障害年金・遺族年金は含まない
※2:毎年度、老齢基礎年金額に勘案して改定
2.給付額と対象者
⑴保険料納付済機関に基づく額(月額)
=5,000円※3×保険料納付済期間(月数)/480月
⑵保険料免除期間に基づく額(月額)
=10,800円※4×保険料免除期間(月数)/480月
※3:毎年度、物価返送に応じて改定
※4:老齢基礎年金額満額の1/6を基準
上記計算⑴、⑵の合計額を恒久的に支給します。
この制度の私有対象者はおよそ610万人で、
国民のおよそ13人に1人が支援金を受給できることになります。
3.補足的老齢年金生活支援給付金
上記、老齢基礎年金生活支援給付金のうち、要件②に該当しない場合で、
前年の公的年金等の収入金額とその他の所得との合計額が指定の額※5までの
年金受給生活者については、老齢年金生活者支援給付金を受給する者と所得総額が
逆転しないようにするため、補足的に生活支援給付が支給されます。
支給対象者はおよそ160万人です。
※5:令和元年度は879,300円
4.障害者・遺族給付金
障害基礎年金または遺族基礎年金の受給者のうち、前年の所得※6が、
4,621,000円以下※7である場合、障害等級2級の者及び遺族である者については
月額5,000円※8、障害等級1級の者については月額6,250円※8が支給されます。
支給対象者はおよそ200万人です。
※6:障害年金・遺族年金は給付金の判定に用いる所得に含まれない
※7:20歳前障害基礎年金が支給停止となる所得基準額と同額を基準
※8:毎年度、物価返送に応じて改定
5.手続き
2019年4月1日時点で老齢・障害・遺族基礎年金を受給し、支給要件を満たしている場合、
日本年金機構から年金生活者支援給付金の認定請求という手続書類が送られてきます。
手続きに期限は設けられていませんが、9月中に申し込みが完了していれば、
年内から受給を開始することができます。
おわりに
はじめにも触れたとおり、今回紹介した生活支援給付は消費税の増税分を財源にして行われます。
厚生労働省が試算した今年(4ヵ月分)の予算額はおよそ1,859億円。
消費税増税による税収増加額がおよそ4,5兆円と考えればそれほど大きな額ではないように思われるかもしれません。
財務省では、消費増税分の使途明確化を掲げ、社会保障4経費として
年金・医療・介護・少子化対策を明言しており、政府も消費増税分の税収をすべて
社会保障に充てるとしています。
しかしながら、地方消費税の割り振られる地方自治体では、
「社会保障に充てる」と明言はしているものの具体的な使途について
明確でない自治体が多いのが実状のようです。
まだ増税直後ということもあり、その使途があまり伝わってはいないように見える消費税。
これからも注目していく必要がありそうです。(担当:岩崎)
<参考>厚生労働省HP[https://www.mhlw.go.jp/index.html]
財務省HP[https://www.mof.go.jp/]