はじめに
国税庁は、令和元年7月1日に路線価を公表しました。
路線価は、相続税・贈与税等を計算する際に基準となるものです。
今回は、路線価と土地の評価額への影響について解説します。
1.路線価とは
相続税や贈与税において土地等の価額は、時価により評価することとされています。
しかし、相続税等の申告に当たり、納税者が土地等の時価を把握することは必ずしも容易ではありません。
そこで、相続税等の申告の便宜及び課税の公平を図る観点から、毎年、
国税局が土地等の評価額の基準となる路線価及び評価倍率を定めて公開しています。
2.路線価の調べ方
路線価は、国税庁のHP「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」において、
誰でも簡単に閲覧が可能です。
最新のものと合わせて過去7年分が開示されており、いつでも閲覧可能です。
お近くの税務署に設置してある端末で調査することも可能です。
ただし、路線価は全国の土地等すべてについているわけではありません。
あまり交通量や取引事例がないような地方においては、
そもそも路線価というものが設定されていないということがあります。
また、市街化調整区域内の山林や農地などにも一般的には路線価は付されていません。
路線価が定められていない地域の土地等は、固定資産税評価額の評価倍率が定められています。
3.最高路線価額
全国における最高路線価は、「東京都中央区銀座5丁目銀座中央通り(鳩居堂前等)」の4地点で、
1㎡当たり4,560万円と、前年4,432万円の最高路線価額を更新しました。
また、鳩居堂前は34年連続で全国最高地点となり、最高路線価上位5都市は
昨年と同順位となりました。
首都圏の上昇率は、東京で4.9%、千葉県で1.0%、神奈川で0.9%、
埼玉で1.0%のプラスとなっており、堅調な上昇を続けています。
2020年の東京五輪・パラリンピックに向けてのインフラ整備や再開発に加え、
働き方改革に対応したオフィス環境改善のための拡張・移転やベッドタウンとしての再開発による
相次ぐマンション建設等が背景にあると思われます。
■都道府県庁所在地都市の最高路線価の価額上位5都市
順位 | 都市名 | 最高路線価の所在地 | 最高路線価(1㎡当たり) | |
令和元年分 | 平成30年分 | |||
1 | 東京 | 中央区銀座5丁目 | 4,560 | 4,432 |
2 | 大阪 | 北区角田町 | 1,600 | 1,256 |
3 | 横浜 | 西区南幸1丁目 | 1,160 | 1,024 |
4 | 名古屋 | 中村区名駅1丁目 | 1,104 | 1,000 |
5 | 福岡 | 中央区天神2丁目 | 787 | 700 |
(出典:週刊税務通信 No3563)
4.全国的に最高路線価上昇率が拡大
住宅地は、住宅ローン減税や、贈与税非課税措置等の活用により需要が増え、
商業地は、訪日外国人旅行者数が10年前と比較すると約4倍も増加し、
店舗やホテル等の開発が進みました。これに伴い路線価についても上昇傾向にあります。
特に前年との変動率が高かったのは那覇市で、39.2%も上昇しました。
(令和元年:103万円、平成30年:74万円)
那覇市は、ホテル、店舗建設の増加や、供給される土地が少なく希少性が高いため
価格が上昇しています。
5.土地の相続評価額への影響
相続税・贈与税の宅地の評価額は、固定資産税評価額に評価倍率を乗じて算出する地域を除き、
基本的には路線価に地積を乗じて算出します。
つまり路線価の上昇がそのまま相続財産の総額、そして相続税の納税に影響してきます。
ここ数年は商業地だけでなく、立地の良い住宅地でも毎年数万円単位で路線価が上昇してきました。
現状の路線価ベースで相続税額を試算してみると、何年か前に試算した時より
納税額が驚くほど増えていたというケースがよくあります。
これまで手持ちの金融資産で何とか納税ができそうと考えていた方は、
今改めて現状把握をしていただきたいと思います。
おわりに
今回は、路線価について解説しました。相続税の納期限は相続開始から10か月しかありません。
相続発生後に、納税のために物件を売却しようとしても、換金に至るには余りに時間が短く、
何よりその時市場が動いていなければ売却の目途が立ちません。
そうならないためにも財産の価値を知る準備をしておきましょう。(担当:中村)