はじめに
金融庁が5月中に発表した「高齢社会における資産形成・管理」報告書による発表を機に、
年金2,000万円問題が世間を騒がせたのは記憶に新しいところです。
「老後資産は自己責任で」というなんとも耳の痛い論調もあったりします。
今回は、年金の中でも混同しやすい確定拠出年金と確定給付年金の違いについて解説いたします。
1.確定給付年金と確定拠出年金の違い
確定給付年金と確定拠出型年金の違いについて、最も大きく異なる部分は
前者が年金給付額を定め、年金数理計算を用いて掛金を定めるのに対し、
後者は掛金を先に決定し、その運用実績により将来の給付額を確定させます。
確定給付年金 | 確定拠出年金 | |
年金給付額 | 定められている | 運用実績による |
運用責任者 | 企業が責任を負う。 運用が上手く行かない場合、企業が不足額を補填しなければならない。 |
加入者自身があらかじめ準備された金融資産を選択し運用する、運用の成否は自己責任。 |
年金資産の把握 | 個人別の残高は把握できない。 | 個人別に口座があるので、各自残高の把握が可能。 |
2.確定給付年金の規約型と基金型の違い
確定給付年金には、掛金を運用する機関の違いにより、
規約型と基金型の二つのタイプがあります。
規約型 | 企業が生命保険会社等と契約する。
企業が規約に基づいて定期的に掛金を拠出し、生命保険会社等が管理・運用し、年金給付を行う。 |
基金型 | 企業が自身で企業年金基金(法人格)を設立する。
企業は定期的に掛金を拠出し、同年金基金が管理・運用し、年金給付を行う。 |
3.確定拠出年金(企業型と個人型の違い)
確定拠出年金は企業型確定拠出年金(企業型DC)と個人型確定拠出年金(iDeCo)の2つがあります。
企業型と個人型の最も大きな違いとして、企業型が退職金制度の一環として導入されるのに対し、
個人型は自分の意思で加入する必要があることです。
企業型(企業型DC) | 個人型(iDeCo) | |
加入対象者 | 実施企業に勤務する従業員で60歳未満の人。 | 公的年金に加入している人で20歳以上60歳未満の人。 |
掛金について | 事業主が拠出する。
但し、一定の条件下で個人も上乗せ拠出が可能。 |
個人が拠出する。
拠出額の上限は個々の勤務形態等により異なる。 |
税への影響 | 拠出額は拠出限度額内で、全額経費計上する。
また、法人税法上は損金となる。 |
拠出額は所得税法上、小規模企業共済等掛金控除に該当し、拠出額の全額が控除対象となる。また運用益は非課税収益。 |
4.個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入資格と掛金上限額
加入資格 | 拠出限度額 | |
自営業 | 国民年金保険の納付者である人 | 年額81.6万円 |
会社員 | 企業型確定拠出年金のみ加入しており、勤め先がマッチング拠出を認めていない場合 | 年額24万円 |
確定給付企業年金のみ加入している場合 | 年額14.4万円 | |
確定拠出年金・確定給付年金いずれも加入している場合 | 年額14.4万円 | |
企業年金制度なし | 年額27.6万円 | |
公務員 | あり | 年額14.4万円 |
専業主婦 | 厚生年金の加入者である会社員・公務員に扶養されている人 | 年額27.6万円 |
5.おわりに
今まで、日本の年金構造は3階建てと言われてきましたが、iDeCoの普及により
4階建て時代に突入したと言っても過言ではないのかもしれませんね。(担当:菅原)