会計・税務の知識

2019年08月22日 発行税務署の情報収集力(新分野の経済活動への対応)

はじめに

これまで税務署の情報収集方法として、「法定調書」、「お尋ね」や

「税務当局による情報照会の仕組み」について紹介しました。

2019年6月12日に「シェアリングエコノミー等新分野の経済活動への的確な対応」が

国税庁から公表されました。本稿でその内容を概説します。

 

 

1.新分野の経済活動とは

近年、ICT化が発展を続けており、ビジネスの実態は大きく変化しています。

具体的には、デジタルコンテンツの配信・利用(動画配信)、

ネット通販・ネットオークション(フリマアプリ)、暗号通貨(仮想通貨)、

ネット広告(アフィリエイト)、シェアリングビジネス・サービス(民泊サービスなど)を言い、

個人等が保有する活用可能な資産等をインターネット上のプラットフォームを介して提供する

活動が増加しています。

 

 

2.法的な枠組みの積極的活用

2019年税制改正において、現行実務上行っている事業者等に対する任意の照会について、

税法上、国税当局が事業者等に対して協力を求めることができる旨が明確化されました。

これにより高額・悪質な無申告者等を特定するための情報について

国税当局が事業者等に報告を求める仕組みが整備されました。

(2020年1月1日以後に行う協力要請や報告の求めについて適用)

詳細は前稿を参照ください。(2019年3月7日発行分)

 

 

3.プロジェクトチームの設置等

これまで、全国税局・沖縄国税事務所(全国12か所)に設置している「電子商取引専門調査チーム」を

中心に電子商取引に関する情報収集・分析に取り組んできましたが、

新分野の経済活動にも的確に対応するため、2019年7月から、「電子商取引専門調査チーム」に加え、

関係部署の指名された職員で構成されるプロジェクトチームを全ての国税局・沖縄国税事務所に設置し、

関係部署間で緊密な連携・協調を図り、情報収集・分析等の取り組みを強化していくこととしています。

(全国で200人規模を予定)

 

 

4.ICTの積極活用

国税局においては、あらゆる機会を通じて課税上有効な情報の収集を行ってきましたが、

今後はインターネット上で公開されている情報を効率的に収集する技術など、

新たなICT活用を進めるとともに、デジタル・テクノロジーに精通した人材の育成・登用を進めるとしています。

2020年1月からマイナンバーや法人番号をキーとして資料情報の横断的な活用を目的としたシステムを開始します。

 

 

5.調査事例

本報告書において新分野の経済活動に関する調査事例を発表しています。

 

 

【調査事例①】動画配信に対する事例

調査対象者は、動画配信事業者を通じて動画配信を行っている。

動画配信者は視聴者からプレゼントされたポイントを動画配信事業者を通じて換金することができるところ、

調査対象者にプレゼントされたポイント総額が申告額を大幅に上回ることが想定されたため調査を実施。

 

調査の結果、視聴者からプレゼントされたポイントのうち、換金していないものについて申告していないことが判明した。

 

 

【調査事例②】仮想通貨取引に対する事例

調査対象者は、仮想通貨取引で多額の売買利益を得ていることが想定されるにもかかわらず無申告であったため調査を実施。

調査の結果、給与収入を原資として複数の交換業者を通じて仮想通貨取引を行っており、

仮想通貨取引で得た利益について申告をしていないことが判明した。

 

 

【調査事例③】アフィリエイターに対する事例

調査対象者は、多額のアフィリエイト報酬を得ていることが想定されたため調査を実施した。

調査の結果、アフィリエイトで稼いだ利益について申告をしていないことが判明した。

 

 

おわりに

個人で行う取引については、ついつい申告が漏れてしまうケースがあるかもしれません。インターネットを利用したサービスで稼ぐ際には十分注意しましょう。(担当:齋藤)

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