会計・税務の知識

2018年02月08日 発行個人所得課税の所得控除改正

はじめに

昨年末政府は平成30年度税制改正大綱を発表し、今月2日に関連法案を閣議決定し、国会に提出しました。今回は個人所得課税の所得控除改正案の内容について紹介します。

 

 

1.所得控除と税額計算

まずは今回の議題である所得控除と税額計算の関係を確認しましょう。所得税は簡単に説明すると下記の数式により計算されます。

① 収入-支出=所得

② ①-所得控除=課税される所得金額

③ ②×税率=税額

 

つまり所得控除とは所得から差し引かれる金額であると考えることができます。

 

 

2. 給与所得控除

給与所得控除は給与所得の計算上、給与収入から差し引かれる額として、

収入額に応じて規定されており、今回の改正では下記の改正が行われます。

① 一律10万円の控除額の引き下げ

② 控除上限額の対象となる収入額が1,000万円以上から850万円以上に引き下げられ、

更に控除上限額が①の10万円に15万円を加算した計25万円の引き下げ。

給与等の収入額※()内は改正前の額 改正前 改正案
162.5万円以下 65万円 55万円
162.5万円超180万円以下 収入金額×40% 収入金額×40%-10万円
180万円超360万円以下 収入金額×30%+18万円 入金額×30%+8万円
360万円超660万円以下 収入金額×20%+54万円 入金額×20%+44万円
660万円超850万円(1,000万円)以下  収入金額×10%+120万円 入金額×10%+110万円
850万円(1,000万円)超 220万円 195万円※

※子育てや介護世帯に対する配慮に対する規定あり(所得金額調整控除)

 

 

3.公的年金等控除

公的年金等控除については、給与所得控除と異なり控除上限額がなく、年金以外の所得がいくら高くても年金のみで暮らす人と同額の控除が受けられるなど、高所得の年金所得者にとって有利な体系となっていました。そこで今回の改正で下記の改正が行われます。

 

① 一律10万円の控除額の引き下げ

② 公的年金等の収入額が1,000万円を超える場合は控除額5万円を控除上限額とする

③ 公的年金等以外の所得の合計額が1,000万円を超える場合、次表の控除上限を設ける

 

公的年金等に係る雑所得以外の所得の合計 改正前 改正案
1,000万円超2,000万円以下 公的年金等の収入金額×5%

+155.5万円

185.5万円
2,000万円超 175.5万円

 

 

4.基礎控除

 給与所得控除及び公的年金等控除の減額に起因する増税負担に対して、負担の変動が急激なものにならないよう、一定の所得者に対しては、基礎控除額が給与所得控除及び公的年金等控除と同額の、一律10万円の引き上げとなります。

一方合計所得金額が2,400万円を超える所得者に対しては、控除額の減額及び撤廃が設けられます。

 

合計所得金額 改正前 改正案
2,400万円以下 38万円 48万円
2,400万円超2,450万円以下 32万円
2,450万円超2,500万円以下 16万円
2,500万円超 0

 

 

5.人的控除

上記の改正に伴い、配偶者控除等の所得金額要件が下記の金額に調整されます。

改正前 改正案
扶養控除の合計所得金額要件 38万円以下 48万円以下
配偶者特別控除の合計所得金額要件 38万円超123万円以下 48万円超133万円以下
源泉控除対象配偶者の合計所得金額要件 85万円以下 95万円以下
勤労学生の合計所得金額要件 65万円以下 75万円以下

 

 

6.青色申告特別控除

現行65万円に対して10万円の引き下げが行われます。

ただし、申告の電子化を推進する目的から、下記要件のいずれかを満たすことにより、

引き続き65万円の控除が受けられます。

 

引き続き65万円の控除を受けるための要件(いずれかを満たすこと)
①その年分の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳について、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に従い、電磁的記録の備付け及び保存を行っていること。

②その年分の所得税の確定申告、貸借対照表及び損益計算書の提出をその提出期限までにe-Taxを使用して行うこと。

 

おわりに

上記の改正は、平成32年分以後の所得税及び、平成33年度分以後の個人住民税について適用されます。

今回の改正により、最も増税の影響を受けそうなのは850万円を超える給与所得者ではないでしょうか?新たに850万の壁なんてものが誕生した瞬間かもしれませんね。(担当:菅原)

PAGETOP

お問い合わせ