はじめに
春先になると、補助金や助成金の話題で世間を賑やかせます。
事業者の皆様にとって必要な補助金は是非とも獲得して今後の事業展開を有利に進める
足掛かりとしたいところです。
獲得した補助金は、基本的には益金に算入する事になり課税の対象になりますが、
補助なのに税金がかかるの?と疑問を持たれる方々もいらっしゃるのではないでしょうか。
補助金を獲得した場合を例にとって、どのように対応すべきかを考えてみました。
1.『補助金』とは
主に中小事業者が設備等や新サービスを展開しようとする際に、国や地方公共団体が
中小企業・小規模事業者の経営力向上を図ることを目的としてその事業費等の経費の一部を
補助する金銭的な給付です。
当事務所でも申請の支援等行っており、毎年補助金を獲得して事業展開を
有利に進めている方々がおられます。
経済産業省管轄のものづくり補助金や創業・第2創業補助金等が該当します。
2.補助金の対象設備を購入した時点の処理
対象となる設備やソフトウェアを購入した時点で、固定資産の取得が発生します。
700万円機械装置を購入したとします。これは減価償却によって、毎年費用化する事になります。
長期的に考えれば取得設備700万円の減価償却が発生し損金算入となります。
累計減価償却額: 700万円
税負担軽減額: 700万円×税率30%=210万円
よって、長期(取得した固定資産の耐用年数)に渡って税負担の軽減効果があります。
3. 補助金を獲得した時点の処理
固定資産購入資金の補助申請に合格して700万円の補助金を獲得したとします。
これは原則として課税対象になります。法人税等を30%として計算した場合は、
210万円(700万円×30%)を納付する事になります。
補助金受領年度の実質の補助額:
補助金700万円▲納税額210万円=490万円 |
黒字企業においては、実質補助額が490万円となるため、補助金を用いて取得しようとしていた資産の取得に十分に充当できず補助金の目的が成しえなくなります。
4.圧縮記帳の効果
そこで、固定資産の取得や改良に充てるための国庫補助金等に対する課税を繰り延べる
『圧縮記帳』が認められています。
国庫補助金等の圧縮記帳の経理方法としては次の3つの方法があります。
①圧縮損を損金に算入し帳簿価格を直接減額
②圧縮損を積立金として経理
③剰余金の処分により積立金として経理
いずれの方法も減価償却によらなくとも初年度に損金計上出来るため、
資金繰りにマイナスの影響を与える事を防ぎます。
また、国庫補助金等の圧縮記帳と特別償却や税額控除の特例税制との重複適用については
留意が必要です。例えば、国庫補助金等の圧縮記帳後の資産について、
中小企業等投資促進税制を重複適用することができますが、
他の租税特別措置法上の圧縮記帳制度である場合には、重複適用が制限されます。
制度の重複適用判定については複雑になるので顧問税理士の先生に確認される事をお勧めします。
おわりに
初年度の決算数値の状況や今後の事業計画の中で圧縮記帳を行うかどうかを
検討する必要がありますので、慎重に判断する必要があります。
今年もついに『ものづくり補助金』の募集が始まりました。
合否がある制度ですが、合格すれば十分に事業を有利に進められます。
別途、当事務所でも申請に関しての説明会を随時行いますので、
ご興味のある方は是非ともご参加ください。(担当:池田)