はじめに
従来、地積の大きな土地を評価する際には広大地の評価に基づき行っていましたが、平成29年9月の財産評価基本通達の一部改正により「地積規模の大きな宅地の評価」が新設されました。「地積規模の大きな宅地の評価」は課税時期が平成30年1月1日以降の評価から適用します。なお、この改正に伴い広大地の評価は廃止されています。
1.地積規模の大きな宅地とは
地積規模の大きな宅地とは、三大都市圏においては500㎡以上の地積の宅地、三大都市圏以外の地域においては1,000㎡以上の地積の宅地をいいます。
ここでいう三大都市圏とは首都圏・近畿圏・中部圏にある都府県を指し、具体的な区域は国税庁HPに記載があります。なお、以下①~④に該当する宅地は地積規模の大きな宅地からは除かれます。
①市街化調整区域に所在する宅地
②都市計画法の用途が工業専用区域に指定されている地域に所在する宅地
③指定容積率が400%(東京都の特別区においては300%)以上の地域に所在する宅地
④財産評価基本通達22-2に定める大規模工業用地
なお、「地積規模の大きな宅地の評価」の対象となる宅地は、路線価地域に所在する宅地の場合には普通商業・併用住宅地区及び普通住宅地区に所在するものです(倍率地域は制限なし)。
2. 評価方法
(1)路線価地域に所在する場合
路線価に、奥行価格補正率や不整形地補正率などの各種補正率に加え、規模格差補正率を乗じて計算した価額に地積を乗じて評価します。
(2)倍率地域に所在する場合
次の①又は②のいずれか低い価額により評価します。
①固定資産税評価額に倍率を乗じて計算した価額
②その宅地が標準的な間口距離及び奥行距離を有する宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額に、
奥行価格補正率や不整形地補正率などの各種補正率及び規模格差補正率を乗じて計算した価額に地積を乗じた価額
3.規模格差補正率
規模格差補正率は以下の算式により計算します(小数点2位未満切り捨て)。
規模格差補正率 | = | Ⓐ×Ⓑ+Ⓒ | ×0.8 | |
地積規模の大きな宅地の地積(Ⓐ) |
算式中のⒷ及びⒸは、三大都市圏に所在する場合は以下のように定められています。
地積 | 普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区 | |
Ⓑ | Ⓒ | |
500㎡以上 1,000㎡未満 |
0.95 | 25 |
1,000㎡以上 3,000㎡未満 |
0.90 | 75 |
3,000㎡以上 5,000㎡未満 |
0.85 | 225 |
5,000㎡以上 | 0.80 | 475 |
※三大都市圏以外の場合のⒷ及びⒸは別途定めがあります。
4.計算例
【前提条件】
所在:●●区(三大都市圏)、地目:宅地、
路線価:200,000円、地区区分:普通住宅地区、
奥行40m、地積:700㎡
【計算過程】
200,000円×0.92(奥行価格補正率)=184,000円
184,000円×0.78(規模格差補正率)※ =143,520円
143,520円×700㎡=100,464,000円(自用地評価額)
※規模格差補正率の計算
規模格差補正率 | = | 700㎡×0.95+25 | ×0.8=0.78 | |
700㎡ | ||||
(小数点2位未満切り捨て) |
おわりに
地積規模の大きな宅地の評価は従来の広大地の評価に比べ要件が明確になっています。
土地を評価する際には適用漏れがないことに留意するとともに、宅地が所在する区域が要件に該当するかどうかを
十分に確認する必要があります。(担当:長澤)