会計・税務の知識

2024年12月19日 発行年収の壁・支援強化パッケージ

はじめに

 

年収の壁といえば、所得税が課税される最低収入額の103万円が広く知られています。

そして、その先に106万円、130万円……と続きます。

この106万円、130万円について、厚生労働省は、社会保険料にかかる「年収の壁」を意識せず働くことができる環境づくりを支援する施策に取り組んでいます。

本稿ではその施策である、年収の壁・支援強化パッケージの概要をご紹介します。

 

 

1.年収の壁とは

 

厚生年金保険及び健康保険においては、会社員の配偶者等で一定の収入がない方は、被扶養者(第3号被保険者)として、社会保険料の負担が発生しません。

こうした方の収入が増加して一定の収入を超えると、社会保険料の負担が発生し、その分手取り収入が減少するため、これを回避する目的で就業調整する方がいらっしゃいます。

その収入基準(年収換算で106万円や130万円)がいわゆる「年収の壁」と呼ばれています。

 

 

 

2.年収の壁・支援強化パッケージとは

 

パート・アルバイトで働く方が「年収の壁」を意識せずに働く環境づくりを後押しする施策です。

 

○年収106万円の壁:厚生年金・健康保険に加入するため、保険料負担を避け、就業調整をしてしまう。

→パート・アルバイトで働く方の、厚生年金や健康保険の加入に併せて、手取りや収入を減らさない取組(※)を実施する企業に対し、労働者1人あたり最大50万円の支援。

(※)社会保険適用促進手当を支給(社会保険料の算定対象外)、賃上げによる基本給の増額、所定労働時間の延長

 

<要件>

令和6年10月より従業員数が50人超であること(従業員数は企業の厚生年金保険適用対象者数(被保険者数)で判断されます)。

週20時間以上の勤務で、所定内賃金が8.8万円以上であること。

 

 

○年収130万円の壁:国民年金・国民健康保険に加入するため、保険料負担を避け、就業調整をしてしまう。

→パート・アルバイトで働く方が、繁忙期に労働時間を伸ばすなどにより収入が一時的に上がったとしても、事業主がその旨を証明することで、引き続き被扶養者認定が可能となる仕組み。

 

<要件>

一時的な変動であること。令和5年10月2日以降の扶養審査のうち2回まで申請可能。

ただし、恒常的に130万を超える場合は対象外。

また、時給の増加や賞与による一時的な収入変動の場合、一時的な変動と認められない点に注意する。

 

<必要書類>

事業主証明様式・雇用契約書・給与明細書(組合により変動あり)

 

 

 

3.注意点

 

本パッケージは社会保険の扶養控除に関する施策であり、所得税の扶養控除はされません。

そのため、扶養する方の所得税がその分増加することとなります。

また、一部パッケージ制度に対応していない保険組合もございます。

もし申請をする場合は、加入されている保険組合へお問い合わせをお願いいたします。

 

 

おわりに

 

昨今クローズアップされている103万円の壁は、学生のアルバイトをターゲットとして展開されていますが、本稿でご紹介している106万円と130万円の壁は、主婦層をメインターゲットにしています。

社会保険料の負担が少なくなることで、手取り収入が増えますので、この機に是非ご検討ください。

施策の詳細については厚生労働省のホームページで確認することができます。

(担当:中田)

 

 

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