はじめに
前回は「財務分析について(1)~財務三表とは~」にて、財務分析に用いる財務三表の概要について解説しました。
財務分析指標には、主に収益性分析、安全性分析、成長性分析、生産性分析があります。
今回は、収益性分析について解説します。
1.収益性分析とは
収益性分析は、企業が資本をどれだけ効率的に活用し、利益を獲得しているかを分析するものです。収益及び利益を得ることは企業にとって根幹となる課題であり、貸借対照表及び損益計算書のデータを使用して、「資本と収益」「売上と利益」の2つの視点から収益性を評価します。収益性分析には以下の指標があります。それぞれの指標のポイントを解説します。
・資本と利益…総資本当期純利益率(ROA)、自己資本当期純利益率(ROE)
・売上と利益…売上高当期純利益率
2.総資本当期純利益率
総資本当期純利益率(ROA: Return on Assets)は企業が保有するすべての資産を使ってどれだけ利益を上げているのかを示す指標です。
この指標の数値が高いほど、効率的に資産を運用していると評価されます。
業種によって標準値は異なり、例えば比較的資産が多い製造業では低めになりがちですが、資産を多く持たないITサービス業等は高めとなる傾向があります。
そのため、ROAを評価する際には同業他社と比較することが有用となります。
総資本当期純利益率を高めるためには、2つのアプローチが考えられます。
・総資産の縮小
・当期純利益の向上
総資産の縮小については、例えば不要な資産の処分などが考えられます。
なお、当期純利益の向上については、後述する3.売上高当期純利益率で解説します。
3.売上高当期純利益率
売上高当期純利益率は売上に対して当期純利益がどのくらいの割合を示すかを表す指標です。
売上高が大きくても、費用も多ければ利益は減少するため、この数値が高いほど効率的に売上を利益に結びつけられていると言えます。
売上高当期純利益率も業種によって異なるため同業他社と比較することが有用です。
例えば薄利多売となることが多い小売業では値が低くなる傾向がありますが、ITサービス業では比較的高い指標となる傾向があります。
売上高当期純利益率を向上させるには2つのアプローチが考えられます。
・売上の拡大
・費用の最適化
当期純利益には財務活動による費用も含まれます。
そのため、例えば製造費用等の営業費用の削減の他、借入金について低金利への借り換え等を行い、財務費用を削減することで当期純利益の向上を図ることも有用です。
4.自己資本当期純利益率
自己資本当期純利益率(ROE: Return on Equity)は株主が投資した資本に対して企業がどれだけの利益を生み出しているかを表す指標です。
計算式は以下のように展開されます。
この指標が高いほど企業は株主から投資された資本を効率的に活用して利益を上げていると評価されます。
そのため、投資家はROEが高い企業を好む傾向があります。また、借入を適度に活用することでROEを向上させることも可能です。(これを「財務レバレッジ」といいます)
しかし、過剰な借入は資金繰り悪化などのリスクを伴うため、ROEが高いことが必ずしも良いとも限りません。
借入比率など安全性についてもあわせて評価する必要があります。
おわりに
今回は収益性分析について解説しました。
次回は財務分析指標のうち安全性分析について紹介いたします。
(担当:鳥津)