はじめに
役員としての地位と使用人としての職制上の地位を併せ持つ者で、一定の要件に該当するものは「使用人兼務役員」といいます。
使用人兼務役員については、税務上一般の役員とは異なる取り扱いとなるため、今回は使用人兼務役員の給与についての取り扱いをご紹介いたします。
1.使用人兼務役員の定義
使用人兼務役員とは、役員のうち部長、課長、その他法人の使用人としての職制上の地位(※1)を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事する者をいいます。
(※1) 法第34条第6項《使用人兼務役員》に規定する「その他法人の使用人としての職制上の地位」とは、支店長、工場長、営業所長、支配人、主任等法人の機構上定められている使用人たる職務上の地位をいいます。
したがって、取締役等で総務担当、経理担当というように使用人としての職制上の地位でなく、法人の特定の部門の職務を統括しているものは、使用人兼務役員には該当しません。
2.使用人兼務役員になれない役員の範囲
しかし、以下のような役員は、使用人兼務役員となりません。
なお、同族会社の使用人のうち税務上みなし役員とされる者も使用人兼務役員となりません。
使用人兼務役員になれない役員の範囲としては以下となります。
①代表取締役、代表執行役、代表理事および清算人
②副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員(※2)
③合名会社、合資会社および合同会社の業務執行社員
④取締役(委員会設置会社の取締役に限ります。)、会計参与および監査役ならびに監事
⑤同族会社の特定役員
(※2)定款等の規定又は総会又は取締役会の決議等により、その職制上の地位が付与された役員をいいます。
その他、詳細は以下をご参考ください。
(国税庁:役員のうち使用人兼務役員になれない人 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5205.htm)
3.使用人兼務役員への給与についての取り扱い
使用人兼務役員の給与は「役員としての給与(役員報酬)」と「使用人としての給与」の2つに分けて考えなければいけません。
①役員に関する給与
法人税法における役員に対する給与で(退職給与は除く)、損金の額に算入されるのは「定期同額給与」、「事前確定届出給与」、「業績連動給与」になります。
役員賞与に関しては、企業が決算前に利益調整をすることができないようにするために、「事前確定届出給与に関する届出書」を提出していないと損金としては認められません。
②使用人に関する給与
一方、役員報酬の定期同額給与とは異なり、使用人に関しての給与は、残業代などで給与の支給額が毎月変動しても損金の額に算入されます。
さらに、使用人としての賞与に関しても、同様の扱いがされます。
(その支給額を、各人別に、かつ、同時期に支給を受けるすべての使用人に対して通知をしていることが必要となります。)
したがって、決算賞与等の臨時的な支給も損金の額に算入されます。
おわりに
他にも、原則として役員は雇用保険に加入できないが、使用人兼務役員では、雇用保険に加入できる等の取り扱いがあります。
ここでは使用人兼務役員としての簡単な概要をご紹介しました。
実際に適用される場合には、個々の状況に応じた判断が必要ですので、顧問税理士に相談する等、慎重にお取り扱いください。
(担当:広地)