はじめに
前回、監査対応として棚卸立会について解説していきました。
今回は第3段として、監査人が実施する確認手続きについて、趣旨や概要、また、被監査会社側の対応方法を解説していきます。
1.監査人が行う確認とは?
日本公認会計士協会の会計・監査用語かんたん解説集によれば、確認とは、「会社の取引先等の第三者に対し売掛金の残高等について、監査人が直接、文書で問い合わせを行い、その回答を入手して評価する手続」とされています。
「売掛金の残高等」と記載されていますが、確認の対象となる勘定科目、及び相手先は様々です。
監査上のリスク評価の過程で、必要と定めた勘定科目に対し直接行われる場合もあれば、勘定科目に特定せず、金融機関等の相手先に対して、預金や借入、担保の状況等を網羅的に確認する場合もあります。
2.確認の実施趣旨
確認の趣旨は、上記に記載の通り、監査人が直接、文書で問い合わせを行うので、外部による証拠であり、かつ書面による証拠であることから、監査証拠としての証明力が高く、重要性が高いです。
現金実査や棚卸立会との大きな違いは、確認は、一般的にリスク評価の過程で実施されることは想定されません。
また、実施時期において、基本的には期末日の監査対象試算表の残高に対して行われるのが一般的です。
ただし、リスク評価の過程でリスクが低いと判断され、3月を基準日とすべきところを2月を基準日にして残高確認を行い、ロールフォワード手続きを行う、という実務も見受けられます。
3.確認の対応方法(被監査会社側)
まずは、発送対象とスケジュールを明確にします。一般的に、監査人側でコントロールシート、と呼ばれる、発送対象や想定スケジュールが一覧化された資料がありますので、入手するようにします。その際、併せて発送対象の残高確認状のひな型を入手しておきます。
発送対象とスケジュールが決まり、ひな型を入手したら、残高確認状を作成します。
残高確認状は、住所、宛名、確認元、確認基準日、回答日他、様々な情報により構成されます。どの情報を誰が入力するのかも、事前に確認します。
確認状の作成が完了したら、その内容で問題ないか、監査人に確認してもらうようにします。
内容に不備があると、再度作成、発送が必要になったり、スケジュールが後ろ倒しになったりするため、当該確認は重要です。
当該確認が取れ次第、確認状に捺印を行い、確認状の原本を監査人に渡します。
当該原本は、監査人側で確認先へ発送、また、回収されます。
回収の際は、期限が超過しているものは早めに確認先に状況を確認し、監査意見日前に返送されないことが見込まれるようであれば、別の監査証拠の提出を検討します。
こちらは監査人の指示に従います。また、確認金額と確認先との回答額に差異があれば、差異の調整を行うようにします。
4.近年の確認状のトレンド(Balance Gateway)
数年前の残高確認状というと、被監査会社担当者と監査人とで、共同して紙面で残高確認状を作成し、郵便にて確認先へ送付し、その際返信用封筒を同封することにより、紙面で残高確認状を入手しする、伝統的な手法が用いられていました。
しかし、近年、会計監査確認センター(同)が、通称BIG4と呼ばれる大手会計事務所により共同で設立されました。
当該会社が提供する、Balance Gatewayという、システムを用いて、残高確認状の作成から発送、回収業務をタイムリーに対応いただけるのと同時に、メールアドレス等を使用した、電子的な方法による残高確認も進んでいます。
当該システムについては、使用しやすいように毎年アップデートされ、具体的な操作については、操作マニュアルが充実しているほか、会計事務所勤務の監査人であれば操作にも詳しいので、操作に迷うようであれば問い合わせください。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
少しでも皆様の監査対応の一助となる記事になったようでしたら、幸いです。次回は会計論点(減損損失)編です。
出典・参考(2024年7月23日 閲覧)
・日本公認会計士協会ホームページ https://jicpa.or.jp/cpainfo/introduction/keyword/post-79.html
(担当:森)