はじめに
賞与(ボーナス)には、給与と同じように社会保険料や源泉所得税が徴収されます。
計算方法については給与とは異なる特有のルールがあります。
1.社会保険料の算出
(1)標準賞与額の算出
賞与の総支給額から1,000円未満を切り捨てて標準賞与額を算出します。
(2)各社会保険料の計算
〈健康保険料〉標準賞与額に対して、健康保険料率(協会けんぽ・健康保険組合によって料率が異なります)を適用し、その1/2が従業員の負担となります。
〈介護保険料〉40歳以上65歳未満の従業員は、標準賞与額に介護保険料率を適用し、その1/2が従業員の負担となります。
〈厚生年金保険料〉標準賞与額に厚生年金保険料率を適用し、その1/2が従業員の負担となります。
〈雇用保険料〉賞与の総支給額に雇用保険料率を適用し、その全額が従業員の負担となります。
2.賞与の社会保険料について
賞与の社会保険料には上限が設定されており、健康保険料・介護保険料と厚生年金保険料で上限額が異なります。
〈健康保険料・介護保険料の上限〉
毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間で標準賞与額の累計額が573万円です。この上限に達した場合、それ以上の賞与額に対しては健康保険料・介護保険料の徴収は不要になります。
〈厚生年金保険料の上限〉
1ヶ月あたり150万円です。この額を超える賞与には、厚生年金保険料の徴収は不要になります。
※正確な計算を行うためにはこれらの上限額を把握しておく必要があります。
3.源泉所得税の算出
(1)前月に受け取った給与から社会保険料等を差し引いた金額を計算します。(前月の社会保険料等控除後の給与等の金額)
(2)「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使用して、上記①の金額に応じた税率を求めます。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/zeigakuhyo2022/data/15-16.pdf
扶養控除等申告書を提出している場合は「甲欄」、提出していない場合は「乙欄」を使用します。
(3)賞与から前月の社会保険料等を控除した金額に、上記(2)で求めた税率を乗じて、源泉徴収する税額を算出します。
4.前月に給与の支払がない場合の源泉所得税の算出方法
(1)(前月の社会保険料等控除後の給与等の金額)÷6(または「12」)(注)
(2)上記(1)の金額を「月額表」(給与所得の源泉徴収税額表月額表)に当てはめて源泉所得税額を求めます。
(3)上記(2)の源泉所得税額×6(または「12」)(注)
5.前月の給与の金額(前月の社会保険料等控除後の給与等の金額)の10倍を超える賞与を支払う場合の源泉所得税の算出方法
(1)(賞与から社会保険料等を差し引いた金額)÷6(または「12」)(注)
(2)上記(1) +(前月の給与から社会保険料等を差し引いた金額)
(3)上記(2)の金額を「月額表」に当てはめて源泉所得税額を求めます。
(4)上記(3)の源泉所得税額 -(前月の給与に対する源泉徴収税額)
(5)上記(4)の源泉所得税額 ×6(または「12」)(注)
おわりに
賞与の計算は社会保険料の算出方法、源泉所得税の税率など通常の給料計算と大きく異なります。
また、賞与支払届の提出、毎年のように変わる社会保険料率や雇用保険料料率をチェックすることも求められます。
加えて令和6年は定額減税も実施されることから、より慎重に計算することが求められます。
(注)賞与の計算期間が6ヶ月以内の場合は、賞与額を6で割り、6ヶ月を超える場合は、賞与額を12で割ります。
(担当:吉原)