はじめに
今年、株価こそバブル後最高値を更新したものの、「失われた30年」という言葉があるように、バブル崩壊後の1990年代初頭から現在に至るまで、日本経済は長い停滞が続いていると言われています。
そんな中、経済成長のエンジンとして、また、少子高齢化や地球温暖化等の様々な社会課題を解決するための鍵として、政府が注力しているのが研究開発投資支援です。
今回は、研究開発投資に係る税制上の優遇措置である研究開発税制について解説していきます。
1.研究開発税制の概要
研究開発税制とは、企業が研究開発を行っている場合に、法人税の額から試験研究費の額に税額控除割合を乗じた金額を控除できる制度です。
研究開発税制には、研究開発投資の全体額に適用可能な一般型と2者以上が関わる共同研究等において適用可能なオープンイノベーション型があります。
なお、中小企業においては、一般型よりも高い控除率となる中小企業技術基盤強化税制が適用可能です。
上記各制度について、一般型と中小企業技術基盤強化税制の併用はできませんが、一般型又は中小企業技術基盤強化税制とオープンイノベーション型は併用が可能です。
2.各制度の控除率及び控除上限額
(1)一般型
一般型は、研究開発投資額の増減に応じて、控除率等が増減する制度です。
控除率は試験研究費の額の1~14%、控除上限額は法人税額の原則25%となっています。
また、控除上限額には一定の上乗せ要件があります。
(2)オープンイノベーション型
オープンイノベーション型は、大学やスタートアップ企業等との共同研究等の金額について、法人税額の一部を控除できる制度です。
控除率は共同・委託試験研究費等(特別試験研究費)の額の20~30%、控除上限額は法人税額の10%となっています。
(3)中小企業技術基盤強化税制
一般型よりも高い控除率とすることで、中小企業の研究開発投資を後押しする制度です。
控除率は試験研究費の額の12~17%、控除上限額は法人税額の原則25%となっています。
また、一般型と同様に控除上限額には一定の上乗せ要件があります。
おわりに
政府は、2021年から2025年の5年間で官民合わせて約120兆円の研究開発投資を行う方針であり(うち、民間企業の研究開発投資目標は90兆円)、研究開発税制は、国内経済の成長の呼び水として今後も一層の拡充が図られていくと考えられます。
研究開発税制は、幅広い業種の企業に適用余地があり、かつ、税額メリットも比較的大きいです。
弊所の関与先でも制度の案内をして試算したところ、数千万円の税額控除が可能だったケースがありました。ご興味のある方はお気軽にご相談ください。
(担当:中路)